高齢者がお風呂で滑るようになると、「滑り止めマットを敷けば大丈夫なのか」「手すりも必要なのか」「浴槽の中まで対策したほうがよいのか」と迷うことがあります。
浴室はもともと水で床が濡れやすいうえ、石けんやシャンプーの成分が残ることでさらに滑りやすくなり、裸足で歩く、立ったまま身体を洗う、浴槽をまたぐといった不安定な動作も多いため、高齢者の転倒対策を重点的に考えたい場所です。
消費者庁も高齢者の家庭内転倒への対策として、浴室や脱衣所への手すりや滑り止めマットの設置を挙げており、濡れた床やせっけんの泡、浴槽への出入りなどによって浴室が滑りやすい環境になることへ注意を促しています。
ただし、お風呂の滑り対策は床へマットを一枚敷けば終わりではなく、洗い場で身体を洗う場所、シャワーチェアから立つ場所、浴槽をまたぐ場所、浴槽内で立ち上がる場所、脱衣所へ出る場所というように動作を分け、それぞれで何につかまり、どこへ足を置くのか確認することが大切です。
ここでは、高齢者がお風呂で滑るときに優先したい対策をはじめ、滑り止めマットの選び方、浴室用手すりやシャワーチェアの活用、浴槽内の滑り対策、掃除のポイント、介護保険を利用できる可能性まで詳しく紹介します。
高齢者のお風呂で滑るときの対策
高齢者がお風呂で滑る場合は、本人へ「ゆっくり歩いて」と注意するだけではなく、滑りやすい場所そのものを減らし、立ち座りや浴槽への出入りで安全につかまれる環境を作ることが基本です。
消費者庁では、高齢者の転倒予防として浴室や脱衣所への滑り止めマットの設置を挙げるとともに、手すりの活用や濡れた床への注意も呼びかけています。
まず本人の入浴動作を確認し、洗い場、シャワーチェア周辺、浴槽の出入口、浴槽内、脱衣所のどこで足が滑っているのかを特定してから必要な対策を組み合わせましょう。
滑り止めマットを設置する
浴室の床で足が滑る場合に取り入れやすい対策の一つが浴室用の滑り止めマットで、洗い場や浴槽内など製品が想定している場所へ正しく設置することで足元の安定を補助できます。
特にシャワーチェアから立ち上がる場所や浴槽をまたぐ際に足を置く場所など、本人が体重をかける位置が滑りやすい場合には、その場所を重点的に確認することが重要です。
- 浴室用として設計されている
- 床面に安定して設置できる
- 端がめくれにくい
- 排水を妨げにくい
- 洗いやすく乾かしやすい
- 使用場所に適合している
ただし、マットそのものがずれたり端が浮いたりすると、滑り対策のために置いた物が新たなつまずきの原因になる可能性があるため、設置後に足で踏んだときの安定性を確認しましょう。
浴槽内で使用する製品と洗い場で使用する製品では想定されている使い方が異なる場合があるため、購入時には取扱説明書やメーカーが指定する使用場所を確認することも大切です。
浴室用手すりを設置する
床の滑りを減らしても、立ち上がりや浴槽をまたぐときには身体のバランスが崩れることがあるため、必要な位置へ浴室用手すりを設けることも重要な転倒対策になります。
厚生労働省では介護保険の住宅改修として浴室などへの手すりの取り付けを対象としており、転倒予防や移動、移乗動作に役立つ位置へ適切な形状の手すりを設置する考え方が示されています。
| 場所 | 主な動作 | 確認すること |
|---|---|---|
| 洗い場 | 立ち座り | 自然に手が届くか |
| 浴槽の横 | またぎ動作 | 身体を支えられるか |
| 浴槽内 | 立ち上がり | 姿勢に合う位置か |
| 浴室入口 | 出入り | 段差を越えやすいか |
水栓、タオル掛け、シャワーのスライドバーなどは身体を支えるための手すりとして設計されていない場合があるため、高齢者が強くつかまっているなら専用の手すりを検討する必要があります。
手すりは付ければよいのではなく、本人が右手と左手のどちらを使いやすいか、どの方向へ身体を動かすのかまで確認し、必要に応じて理学療法士や作業療法士、福祉用具の専門職などへ相談しましょう。
シャワーチェアを使う
立ったまま身体や髪を洗っている高齢者が滑る場合には、洗身中に無理に立ち続けなくても済むよう、安定したシャワーチェアを使用する方法があります。
座って身体を洗えるようになると立位で身体の向きを変えたり片足を持ち上げたりする動作を減らせるため、本人の身体状態によっては入浴時の負担を軽減できます。
- 高さを調節できる
- 脚部が安定している
- 滑りにくい脚ゴムがある
- 必要なら背もたれがある
- 必要なら肘掛けがある
- 浴室内に無理なく置ける
一般的な低い風呂椅子では膝や股関節を深く曲げる必要があり、立ち上がるときに大きな力が必要になる場合があるため、立ち座りが難しくなっている人では高さ調節式の入浴用いすが候補になります。
ただしシャワーチェアを置いたことで洗い場が狭くなり、浴槽までの移動経路を妨げることもあるため、製品の大きさと浴室の広さを確認してから選びましょう。
浴槽内にも滑り対策をする
洗い場だけでなく浴槽内で足が滑る高齢者もいるため、湯船から立ち上がるときや浴槽をまたいで足を着くときの状態も確認する必要があります。
浴槽内では浮力によって身体の感覚が普段と異なるうえ、底面が滑りやすければ立ち上がる際に足を踏ん張れず、浴槽の縁へ強くつかまることがあります。
| 困りごと | 対策の候補 | 確認点 |
|---|---|---|
| 浴槽底で滑る | 浴槽用滑り止め | 浴槽への適合 |
| 立ち上がれない | 浴槽内いす | 座面高さ |
| またぎが不安 | 浴槽用手すり | 固定状態 |
| 出入りが難しい | 入浴台 | 移乗方法 |
厚生労働省では介護保険の特定福祉用具として浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴槽内すのこなどを入浴補助用具に位置づけています。
浴槽内で何度も滑っている場合には滑り止めだけに頼らず、浴槽への入り方や出方そのものを見直し、必要な福祉用具を専門職と検討することが大切です。
床の石けんや泡を流す
浴室の床材そのものに滑りにくい工夫があっても、石けん、ボディソープ、シャンプーなどが床へ残ることで足元が滑りやすくなる場合があります。
本人が身体を洗った直後に立ち上がる場合には、足元へ泡が残った状態で体重をかけることになるため、立つ前に床面をシャワーで十分に流す習慣を作るとよいでしょう。
- 立つ前に泡を流す
- 床のぬめりを残さない
- 排水口を定期的に掃除する
- 水がたまる場所を確認する
- マットも定期的に洗う
家族が入浴介助を行う場合も、身体を洗うことだけに集中せず、本人が次に足を置く場所へ泡や洗浄剤が残っていないか確認することが重要です。
滑り止め用品を追加しても床のぬめりを放置していれば十分な対策にならないため、設備と日常的な清掃を組み合わせて考えましょう。
浴槽から急に立ち上がらない
高齢者の入浴では足元の滑りだけでなく、浴槽から立ち上がったときのふらつきにも注意する必要があり、消費者庁は高齢者の入浴事故対策として浴槽から急に立ち上がらないよう呼びかけています。
湯船から勢いよく立ち上がって身体がふらついたとき、床や浴槽底が滑りやすければ姿勢を立て直せず転倒につながる可能性があります。
- 急に立ち上がらない
- 安定した場所につかまる
- 足の位置を確認する
- 身体の状態を確認して動く
- ふらついたら無理に移動しない
また、消費者庁では高齢者の入浴について湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安とすることなども案内しており、転倒だけでなく入浴中の事故全体を意識することが重要です。
床を滑りにくくすることと、急な動作を避けて安全につかまれる場所を作ることを組み合わせ、浴槽から洗い場へ移る一連の動作を見直しましょう。
脱衣所まで対策する
浴室内の滑り止め対策を行っても、濡れた足のまま脱衣所へ出た瞬間に滑ってしまうことがあるため、浴室のドアから着替える場所までを一続きの動線として確認することが大切です。
消費者庁も高齢者の転倒予防として浴室や脱衣所への滑り止めマットを挙げており、浴室だけでなく周辺環境も含めて対策する必要があります。
| 場所 | 確認すること | 対策 |
|---|---|---|
| 浴室出口 | 段差 | 足元と手すりを確認 |
| 脱衣所 | 濡れた床 | 水分を残さない |
| バスマット | ずれ・めくれ | 安定性を確認 |
| 着替える場所 | 立位の安定 | 椅子を検討 |
吸水性のあるマットでも、マット自体が床の上を滑る状態では転倒の原因になるため、表面だけでなく裏面の安定性も確認しましょう。
立ったままズボンや下着を着脱すると片足立ちに近い姿勢になることがあるため、ふらつきがある人では脱衣所に安定した椅子を置いて座って着替える方法も検討できます。
転倒が増えたら身体状態も確認する
浴室の床が以前と変わっていないのに最近になって急に滑る、ふらつく、何かにつかまることが増えたという場合には、浴室環境だけでなく本人の身体状態の変化も確認する必要があります。
高齢者の転倒には加齢に伴う筋力などの身体機能の変化だけでなく、病気や薬などさまざまな要因が関係する場合があり、滑り止めマットだけですべてを解決できるとは限りません。
- 浴室以外でもふらつく
- 最近転倒が増えた
- 立ち上がりに時間がかかる
- 片側へ身体が傾く
- 急に歩き方が変わった
- 薬が変更された
特に急に立てなくなった、意識がおかしい、片側の手足に力が入らないなど普段と大きく異なる状態がある場合には、浴室設備の問題として様子を見続けず適切な医療につなげることが重要です。
徐々に入浴動作が難しくなっている場合にも、医師や理学療法士、作業療法士、ケアマネジャーなどへ具体的にどの動作で困っているかを伝えると対策を検討しやすくなります。
滑り止めマットは使用場所に合わせて選ぶ
高齢者のお風呂へ滑り止めマットを取り入れる場合は、「滑り止め」と表示されていることだけで決めず、洗い場で使うのか、浴槽内で使うのか、脱衣所で使うのかを明確にすることが重要です。
浴室の床材や浴槽の形状によっては製品が安定しにくい場合もあり、吸盤などで固定するタイプでは設置面との相性を確認する必要があります。
滑りにくさに加えて、ずれにくさ、端のめくれ、排水性、掃除のしやすさまで確認し、毎日安全に管理できる製品を選びましょう。
使用できる場所を確認する
滑り止めマットには浴槽内を想定したもの、洗い場へ敷くもの、脱衣所で使用するものなどがあるため、購入前に製品の用途を確認することが基本です。
浴槽用の製品を別の場所へ使用したり、家庭用のマットを自己流で浴槽内へ沈めたりすると、本来想定されている滑り止め性能や固定方法を利用できない場合があります。
- 浴槽内用
- 洗い場用
- 脱衣所用
- 対応する床材
- 対応する浴槽材質
- 設置方法
吸盤式の場合は浴槽表面の凹凸などによって吸着しにくいことも考えられるため、製品の注意事項を確認して使用する必要があります。
高齢者が立つ位置へ確実に設置できることを優先し、単にサイズが大きいものを選ぶのではなく、使用環境との適合を確認しましょう。
ずれにくさを確認する
滑り止めマットで特に重要なのは、足を載せたときにマットそのものが大きく動かないことで、表面だけ滑りにくくても床との間でずれれば安定した足場にはなりません。
設置した後は家族が手で触るだけで判断せず、製品の使用方法に従った状態で固定されているかを毎回確認する習慣を作ると安心です。
| 確認項目 | 避けたい状態 | 対応 |
|---|---|---|
| 固定 | 簡単に横へ動く | 設置方法を確認 |
| 端 | 大きく浮いている | 状態を見直す |
| 表面 | ぬめりがある | 洗浄する |
| 裏面 | 汚れが付着 | 定期的に清掃 |
| 劣化 | 破損・硬化がある | 交換を検討 |
高齢者が足を引きずるように歩く場合には、わずかな段差やマットの端でも足を引っ掛ける可能性があるため、滑りだけでなくつまずきにも注意が必要です。
設置したことで以前より歩きにくくなっていないか本人にも確認し、必要であれば別のタイプや床そのものの改修を検討しましょう。
掃除しやすいものを選ぶ
浴室用の滑り止めマットは水分にさらされるため、使用後の洗浄や乾燥を行いやすいことも選ぶ際の重要なポイントです。
マットの裏側や吸盤部分へ汚れがたまるとぬめりが発生することがあり、滑りを防ぐための用品を不衛生な状態で使い続けないよう管理する必要があります。
- 水で流しやすい
- 裏面まで洗いやすい
- 乾燥させやすい
- 汚れを確認しやすい
- 定期的に取り外せる
使用後に毎回持ち上げることが本人や家族にとって大きな負担になる製品では管理が続かない可能性もあるため、日常的な手入れまで含めて選びましょう。
マットを敷きっぱなしにせず、製品の取扱説明書に従って清掃や乾燥を行い、変形や破損が見られたら交換時期を確認することが大切です。
浴槽への出入りで滑る場合は動作を見直す
浴室で特に注意したいのが浴槽への出入りで、片足を上げて浴槽の縁をまたぐ瞬間には身体を支える面積が小さくなり、床が滑ると姿勢を崩しやすくなります。
また、浴槽内から立ち上がるときには低い位置から身体を持ち上げる力が必要になり、脚力が低下している人では浴槽の縁を強く引っ張るなど不安定な動作が増えることがあります。
床だけに滑り止めを追加するのではなく、手すり、浴槽内いす、入浴台などを利用して本人が無理にまたいだり立ち上がったりしなくて済む方法を検討しましょう。
浴槽用手すりを検討する
浴槽をまたぐ際につかまる場所がない場合には、浴槽の縁などへ取り付けて使用する浴槽用手すりが候補になることがあります。
介護保険の特定福祉用具にも浴槽用手すりが含まれており、浴槽への出入りを補助する目的で身体状態に合わせて利用できます。
- 浴槽へ確実に固定できるか
- 自然な位置で握れるか
- またぎ動作を妨げないか
- 浴槽の形状に対応するか
- 定期的に固定状態を確認できるか
市販されている製品でもすべての浴槽へ取り付けられるわけではなく、浴槽縁の幅や形状、材質などによって対応できない場合があります。
身体を預ける器具だからこそ自己流で無理に固定せず、福祉用具専門相談員などに浴槽との適合と本人の動作を確認してもらうと安心です。
浴槽内いすを検討する
浴槽の底から立ち上がることが難しい人では、浴槽内へ入浴用のいすを設置して座る位置を高くし、立ち上がる距離を小さくする方法があります。
浴槽内いすは厚生労働省が示す特定福祉用具の入浴補助用具に含まれており、身体状態に応じて浴槽内での座位や立ち上がりを補助するために利用されます。
| 確認項目 | 目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| 座面高 | 立ち上がりを補助 | 高すぎないか |
| 脚部 | 安定して設置 | 浴槽底との適合 |
| 座面 | 姿勢を保つ | 滑りを確認 |
| 浴槽深さ | 入浴姿勢を確認 | 湯につかる範囲 |
座面を高くすると立ちやすくなる一方、身体がお湯につかる範囲が変わるため、本人がどのような目的で入浴するのかも考える必要があります。
浴槽内で足が滑ることに加えて立ち上がりも難しい場合には、滑り止めと浴槽内いす、手すりなどを組み合わせて検討しましょう。
入浴台を検討する
浴槽の縁をまたぐために片足立ちになることが難しい人では、浴槽の縁へ設置する入浴台などを利用し、いったん座ってから脚を浴槽側へ移す方法が適する場合があります。
厚生労働省では、浴槽の縁にかけて利用し浴槽への出入りを目的とする入浴台を特定福祉用具の入浴補助用具として位置づけています。
- 浴槽をまたぐのが怖い
- 片足立ちが不安定
- 手すりだけでは移れない
- 介助を受けて入浴している
- 浴槽縁が高く感じる
入浴台を利用する場合には、座る位置や脚を動かす方向、浴槽内での移動まで一連の動作として確認することが重要です。
本人の身体機能によって適切な方法が異なるため、すでに浴槽をまたぐことが難しくなっている場合は自己流で器具を追加するより専門職へ相談しましょう。
浴室全体を見直すと転倒対策につながる
高齢者のお風呂で滑る問題は、床材だけが原因とは限らず、低い椅子から立つ、遠くのシャワーへ手を伸ばす、浴槽を無理にまたぐなど複数の動作が重なって起こることがあります。
そのため滑り止め用品を購入する前に、本人が浴室へ入り、身体を洗い、浴槽へ入り、再び洗い場へ出て脱衣所へ移動するまでの流れを確認することが重要です。
本人が無意識につかまっている場所やふらつく場面を見つけ、設備の配置と身体の動きを一緒に見直すことで必要な対策がわかりやすくなります。
危険なつかまり方をなくす
高齢者がお風呂で滑りそうになったとき、とっさにタオル掛け、水栓、シャワー器具などへつかまっている場合がありますが、これらは身体を支える用途を想定していないことがあります。
本人が毎回同じ場所へつかまっているなら、単にその行動をやめさせるのではなく、なぜそこに支えが必要なのかを確認することが重要です。
- 水栓につかまっている
- タオル掛けを引っ張る
- シャワー器具につかまる
- 家族の腕を強く引く
- 浴槽縁へ無理に手を伸ばす
立ち上がるための支えが必要なら肘掛け付きシャワーチェアや手すり、浴槽への出入りなら浴槽用手すりなど、動作に合った設備へ置き換えることを検討しましょう。
本人の手が自然に届く場所へ安全な支えを用意すれば、滑ったときだけ慌てて何かにつかまるのではなく、最初から安定した動作を行いやすくなります。
床材そのものを見直す
滑り止めマットを置いても浴室全体が滑りやすく、マットを敷いていない場所で何度も足を取られる場合には、床材そのものの見直しが選択肢になることがあります。
厚生労働省では介護保険の住宅改修として、滑りの防止や移動の円滑化などを目的とする床または通路面の材料の変更を給付対象となる住宅改修の種類として示しています。
| 対策 | 特徴 | 検討場面 |
|---|---|---|
| 滑り止めマット | 取り入れやすい | 部分的な対策 |
| 手すり | 身体を支える | 立ち座り・移動 |
| 床材変更 | 床全体を見直す | 広範囲が滑る場合 |
| 段差解消 | つまずきを減らす | 出入口など |
住宅改修を行う場合には、滑りにくさだけでなく水はけ、掃除のしやすさ、浴室全体の段差なども含めて検討する必要があります。
介護保険を利用する場合は工事を始める前に必要な手続きがあるため、先にケアマネジャーや自治体、施工事業者などへ確認しましょう。
入浴方法そのものを変える
浴室設備を整えても毎回大きくふらつく場合には、以前と同じ入浴方法を続けることにこだわらず、本人の現在の身体状態に合わせて方法を変更することも重要です。
例えば立ったまま身体を洗っていた人がシャワーチェアへ座る、浴槽を立ったまままたいでいた人が入浴台を利用するなど、危険な動作そのものを減らす方法があります。
- 座って身体を洗う
- 急に立ち上がらない
- 手すりを使って移動する
- 必要なら入浴介助を受ける
- 浴槽への入り方を見直す
本人が「今まで一人で入れていたから」と福祉用具を嫌がる場合でも、転倒するまで待つのではなく、できる動作を残しながら安全性を高めるための道具として説明すると受け入れやすいことがあります。
家族だけでは適切な方法を判断しにくい場合には、実際の浴室環境を専門職に確認してもらい、本人の能力を生かせる入浴方法を検討しましょう。
介護保険を利用できる対策も確認する
高齢者のお風呂の滑り対策では、市販の滑り止め用品だけでなく、介護保険による福祉用具購入や住宅改修を利用できる場合があります。
厚生労働省では入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルトなどを特定福祉用具の入浴補助用具として示しています。
また、住宅改修では手すりの取り付け、段差の解消、滑りの防止や移動を円滑にするための床材変更などが対象となるため、本人の状態によっては複数の方法を検討できます。
入浴補助用具を相談する
要支援・要介護認定を受けている人では、一定の条件のもとで入浴補助用具の購入について介護保険を利用できる可能性があります。
入浴補助用具には複数の種類があるため、「滑るから何か欲しい」と考えるだけではなく、どの動作を補助する必要があるのかを整理することが重要です。
- 入浴用いす
- 浴槽用手すり
- 浴槽内いす
- 入浴台
- 浴室内すのこ
- 浴槽内すのこ
- 入浴用介助ベルト
一般的な家庭用品を購入すれば自動的に介護保険の対象になるわけではなく、対象となる福祉用具や販売事業者などの条件を確認する必要があります。
介護保険を利用したい場合には自己判断で先に購入せず、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員などへ相談してから手続きを確認しましょう。
住宅改修を検討する
浴室の床全体が滑りやすい、出入口の段差が大きい、身体を支える場所がないといった場合には、福祉用具だけではなく住宅改修を検討する方法があります。
介護保険の住宅改修では、手すりの取り付け、段差の解消、滑り防止などを目的とした床材の変更などが対象となるため、浴室環境によって活用できる可能性があります。
| 困りごと | 改修の候補 | 確認点 |
|---|---|---|
| つかまる場所がない | 手すり設置 | 位置・形状 |
| 床が滑りやすい | 床材変更 | 滑りにくさ |
| 入口に段差がある | 段差解消 | 移動方法 |
| 浴室内で移動しにくい | 複数対策を検討 | 動線全体 |
特に手すりは取り付ける高さや向きによって使いやすさが変わるため、工事のしやすい位置だけを優先して決めないことが大切です。
介護保険による住宅改修には事前の申請などが必要になるため、制度を利用する場合は工事を契約したり開始したりする前に自治体やケアマネジャーへ確認しましょう。
専門職に入浴動作を見てもらう
滑り止めマット、シャワーチェア、手すりなど選択肢が多くて判断できない場合には、本人の入浴動作と浴室環境を専門職に確認してもらう方法があります。
「浴室で滑る」という同じ悩みでも、立ち上がる瞬間に滑る人、浴槽をまたぐときにふらつく人、歩行中に滑る人では必要な対策が異なります。
- ケアマネジャー
- 福祉用具専門相談員
- 理学療法士
- 作業療法士
- 地域包括支援センター
相談するときには、どこで滑ったのか、何につかまっていたのか、転倒したことがあるか、一人で入浴しているかなどを具体的に伝えると状況を共有しやすくなります。
転倒が起きてから大きな設備変更をするのではなく、「最近浴槽から出るときに危ない」「椅子から立つときに滑る」と感じた段階で対策を始めることが大切です。
滑る場所と入浴動作を確認して安全なお風呂にしよう
高齢者がお風呂で滑る場合には、滑り止めマットを敷くだけで終わらせず、洗い場、シャワーチェア周辺、浴槽への出入口、浴槽内、脱衣所という順番で、本人がどこで足を滑らせているのかを確認することが重要です。
洗い場では床の石けんやシャンプーを十分に流し、使用場所に適した滑り止めマットを正しく設置するとともに、立ったまま身体を洗うことが不安定になっている人には高さの合ったシャワーチェアも検討しましょう。
浴槽をまたぐときや浴槽内から立ち上がるときに滑る場合には、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台などが役立つことがあり、介護保険の特定福祉用具として利用できる場合もあります。
また、浴室への手すりの取り付けや滑り防止を目的とする床材の変更などは介護保険の住宅改修の対象となる可能性があるため、要支援・要介護認定を受けている人は購入や工事をする前にケアマネジャーなどへ相談するとよいでしょう。
以前は問題なく入浴できていた高齢者が最近急に滑るようになった場合や、浴室以外でも転倒やふらつきが増えている場合には、床だけを原因と決めつけず身体状態の変化にも目を向ける必要があります。
本人の注意力だけに頼るのではなく、滑りにくい足元、安全につかまれる手すり、立ち座りしやすい椅子、無理なく浴槽へ出入りできる方法を組み合わせ、現在の身体状態に合った入浴環境を整えていきましょう。


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