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高齢者が箸を使いにくいときは?持ちやすい箸や食事の工夫

暮らしの工夫
※イメージとして作成した画像です

高齢者が食事中に箸を使いにくそうにしていると、「握力が落ちたのだろうか」「普通の箸を介護用の箸へ替えたほうがよいのか」と家族も気になるものです。以前は問題なく箸を使えていた人でも、指先の細かな動きが難しくなったり、関節に痛みが出たり、箸を握る力を保ちにくくなったりすると、食べ物をつまむ動作が負担になることがあります。

箸は単に握れば使える道具ではありません。親指、人差し指、中指などをそれぞれ動かしながら、二本の箸を適切な位置に保ち、食べ物に合わせて力を調節する必要があります。そのため、手指の筋力や細かな動作の能力が低下すると、「箸を落とす」「食べ物をつまめない」「口へ運ぶ途中で落とす」といった困りごとが現れやすくなります。

厚生労働省の生活行為向上支援に関する資料でも、手の力が弱い高齢者などが生活行為を行いやすくするためには、生活用具の選定や自助具の活用が重要とされています。普通の箸を無理に使い続けることだけが選択肢ではなく、自助箸、箸ホルダー、スプーン、フォーク、太い柄の食具など、本人の状態に合う道具へ替えることで自分で食べ続けやすくなる場合があります。

一方で、急に箸を使えなくなった場合や、片手だけ力が入りにくい、しびれる、手が動かしにくいといった変化が現れた場合には、「高齢だから仕方がない」と判断しないことも大切です。箸の問題だけではなく身体の状態に変化が生じている可能性があるため、症状に応じて医療機関へ相談する必要があります。

ここでは、高齢者が箸を使いにくいときに試したい具体的な対策をはじめ、自助箸や箸ホルダーの特徴、スプーンやフォークへの変更、食器や姿勢の工夫、本人に合う食具の選び方、専門家へ相談したいケースまで詳しく整理します。

高齢者が箸を使いにくいときの対策

高齢者が箸を使いにくくなった場合、最初に「正しい箸の持ち方を練習させよう」と考える必要はありません。重要なのは、どの動作が難しくなっているのかを確認し、現在の身体状態で無理なく食事できる方法を見つけることです。

箸そのものを握れない人もいれば、握れるものの先端を開閉できない人、豆や麺など特定の食べ物だけつまめない人もいます。また、手指には問題がなくても、肩や肘を動かしにくいため口まで運ぶ動作が難しくなっている場合があります。

本人が困っている動作を確認したうえで、普通の箸、自助箸、箸ホルダー、スプーン、フォークなどを使い分けましょう。

滑りにくい箸へ替える

普通の箸を握ることはできるものの、食べ物が箸先から滑って落ちることが増えた人では、まず箸先が滑りにくいタイプを試す方法があります。箸そのものを大きく変更しないため、長年使ってきた箸の操作方法をできるだけ維持したい人にも取り入れやすい対策です。

特に麺類、豆、こんにゃくなどは箸先で適切な力を加え続ける必要があり、指先の力を細かく調整しにくくなると落としやすくなります。箸先に凹凸があるものや滑りにくさを考えた製品なら、食べ物を保持するために必要な力を減らせる場合があります。

  • 箸先に凹凸がある
  • 食べ物を保持しやすい
  • 手になじむ太さ
  • 重すぎない
  • 長すぎない
  • 洗いやすい

ただし、滑り止めがあれば手指の動かしにくさそのものを補えるわけではありません。二本の箸を別々に動かすことが難しい人では、滑りにくい箸へ変更しても使いにくさが残る可能性があります。

「食べ物だけが滑るのか」「箸そのものを落としてしまうのか」を観察し、後者であれば自助箸など別の方法を検討しましょう。

自助箸を試してみる

普通の箸を二本別々に動かすことが難しくなった高齢者では、自助箸が選択肢になります。厚生労働省の福祉用具に関する資料でも、食事に使用する代表的な自助具として自助箸が紹介されています。自助具とは、日常生活で難しくなった動作を行いやすくするために工夫された道具です。

自助箸には二本の箸が上部でつながっているものや、軽い力で開閉できるものなどがあります。公益財団法人テクノエイド協会の自助具データベースにも、通常の箸の持ち方が難しい人を想定したクリップタイプやピンセットタイプなどの箸が掲載されています。

タイプ特徴向いている状態
連結タイプ二本が離れにくい箸をそろえにくい
ピンセット型握る動作で操作細かな操作が難しい
クリップ型箸の動きを補助通常の持ち方が難しい
軽量タイプ持つ負担を軽減手指の力が弱い

自助箸はすべて同じ仕組みではないため、「介護用ならどれでもよい」と考えず、本人がどの動作を苦手としているかに合わせて選ぶことが重要です。右手用と左手用が分かれている製品もあれば、左右どちらでも使用できる製品もあります。

可能であれば購入前に本人が実際に持ち、開閉する力、重さ、長さ、手への当たり方を確認しましょう。

箸ホルダーを利用する

普通の箸に近い感覚を残したい人では、二本の箸を一定の位置に保つ箸ホルダーを利用する方法もあります。テクノエイド協会の自助具データベースには、脳梗塞や手のけがなどで利き手が不自由になった人などを想定した箸ホルダーも掲載されています。

二本の箸がばらばらになりにくいため、箸をそろえることに使っていた力や集中を減らし、食べ物をつまむ動作へ集中しやすくなる場合があります。製品によっては普段使っている箸へ取り付けられるタイプもあります。

  • 二本の箸をそろえやすい
  • 箸が交差しにくい
  • 持つ位置を保ちやすい
  • 普段の箸を使える製品もある
  • 比較的簡単に試せる
  • 左右対応を確認する

ただし、箸ホルダーは手指の力を完全に補うものではありません。指で箸を開閉する動作そのものが難しい場合には、自助箸やスプーンなどのほうが使いやすいことがあります。

本人が「箸で食べたい」という希望を持っている場合は、その希望を尊重しながら複数の道具を試し、最も負担の少ない方法を探しましょう。

スプーンへ替える

箸を使うこと自体が大きな負担になっているなら、スプーンへ変更することも立派な対策です。食事のたびに食べ物を落とし、何度もつまみ直す状態では、食事時間が長くなったり、本人が疲れて途中で食べることをやめたりする可能性があります。

テクノエイド協会では、食具の選び方について、握る力が弱い場合には太い柄を選ぶ、手首の動きが悪い場合には先端部の角度を調整できるものを選ぶなど、身体状態に合わせた選択方法を紹介しています。

困りごと食具の工夫
握る力が弱い太い柄
手首を動かしにくい角度付き
握れない保持具を併用
口へ運びにくい長さや角度を調整
こぼしやすい形状を見直す

普通の細いスプーンが持ちにくい場合もあるため、「箸が難しいから家にあるスプーンを使えばよい」とは限りません。本人の握力や手指の動きに合わせた太さや重さを確認しましょう。

箸を使える料理では箸を使い、難しい料理だけスプーンへ替えるという使い分けでも構いません。食事を最後まで自分で続けやすいことを優先しましょう。

フォークも料理に合わせて使う

麺類や肉、果物などでは、箸よりフォークのほうが扱いやすい場合があります。特に「箸で挟み続ける力は弱くなったが、食具を握って口へ運ぶことはできる」という人では、フォークへ替えるだけで食事の負担を減らせることがあります。

一方で、フォークにも柄の太さや長さ、先端の形状などさまざまな違いがあります。テクノエイド協会では、箸が使えない場合に麺類へフォークを利用する方法についても案内しており、食べ物に合った先端形状を選ぶ考え方を示しています。

  • 麺類
  • 一口大の肉
  • カットした果物
  • 温野菜
  • やわらかいおかず
  • 刺して運べる料理

箸からフォークへ変更することを本人が嫌がる場合には、すべての料理で変更する必要はありません。食べにくい料理だけフォークを添え、本人が自分で選べるようにする方法もあります。

「高齢者だからこの食具」と一律に決めず、その日の料理や体調によって選択できる環境を作ると食事の自立を保ちやすくなります。

太い柄の食具を試す

スプーンやフォークを使っても柄が細すぎると、握力が弱くなった高齢者には持ちにくいことがあります。細い柄を保持するには指をしっかり曲げる必要があるため、手指に痛みや変形がある人では負担になる場合があります。

テクノエイド協会も、摂食用具について把持力が弱い場合には太い柄を選ぶことを紹介しています。柄が太くなることで、強く握り込まなくても手の中に保持しやすくなる場合があります。

食具確認する点
太柄スプーン軽く握れるか
太柄フォーク料理を扱えるか
曲がる食具手首の動きを補えるか
軽量食具腕が疲れないか
保持具付き手から落ちないか

ただし、太ければ太いほど使いやすいわけではありません。手が小さい人や指を大きく開けない人では、太すぎる柄がかえって握りにくくなる可能性があります。

本人の手の大きさや指の動きを確認し、自然に保持できる太さを選びましょう。

万能カフなどの保持具を使う

スプーンやフォークを握り続けること自体が難しい人では、食具を手へ保持するための万能カフなどが役立つ場合があります。厚生労働省の資料でも、食事に関する自助具の例として万能カフが紹介されています。

万能カフは手に装着し、食具の柄などを差し込んで保持するための用具です。自分の指だけで食具を強く握り続けなくてもよくなるため、握力低下や麻痺などがある人の食事を補助できる場合があります。

  • 食具を握り続けられない
  • 手指の筋力が弱い
  • 麻痺がある
  • 食具を落としやすい
  • 指を曲げにくい
  • 自分で食べ続けたい

万能カフにも形状や素材などの違いがあり、手の状態によって装着しやすさが変わります。また、食具を保持できても肩や肘を動かして口まで運べなければ十分に活用できません。

麻痺や拘縮などがある場合には、作業療法士などへ相談し、本人の手の状態や食事動作に適した自助具を選ぶとよいでしょう。

食器も一緒に見直す

箸だけを変更しても、皿の上で食べ物が逃げてしまうと高齢者は食べにくさを感じます。特に片手で食事をしている人や細かな箸操作が難しい人では、食器を固定したり、縁を利用して食べ物を集めたりできる工夫が役立つ場合があります。

テクノエイド協会の自助具データベースには、普通の器では持ちにくい人向けの食器、片手が不自由な人向けの皿ガード、茶わんを支えるホルダーなど、さまざまな食事用自助具が掲載されています。

困りごと工夫
皿が動く滑り止めを利用
食べ物が逃げる縁のある食器
茶わんを持てないホルダーを利用
片手で食べる食器を固定
すくいにくい形状を見直す

例えばスプーンを使える人でも、平らな皿では食べ物を最後まですくいにくいことがあります。深さや縁の形を変えることで、自分で食べられる範囲が広がる場合があります。

「箸が使えない」という問題だけを見るのではなく、食具、食器、テーブル、椅子を含めた食事環境全体を確認しましょう。

高齢者が箸を使いにくくなる理由を確認しよう

高齢者が箸を使いにくくなる背景には、単純な握力低下だけでなく、指先の細かな動作、関節の痛み、手首や腕の動きなど複数の要因が関係することがあります。箸は二本の棒を別々に操作する必要があるため、日常生活で使う道具の中でも比較的複雑な手指動作が求められます。

厚生労働省の身体障害認定基準でも、手指の機能を考える際には、つまむ、握るなどの機能が重要とされています。箸を扱うには、単に物を握るだけではなく、食べ物に応じて細かな力加減を続ける必要があります。

原因を考えるときは、「年齢だから」と一括りにせず、いつから、どの手で、どのような動作が難しくなったのかを確認しましょう。

手指の力が弱くなっている

箸を使うためには、二本の箸を手の中に保持しながら先端を動かす必要があります。手指の筋力が低下すると、食事の途中で箸を落としたり、食べ物を挟んでも保持できなかったりすることがあります。

厚生労働省の生活行為向上支援に関する資料でも、握力など身体機能の低下に対する支援とともに、使いやすい生活用具や自助具を活用する重要性が示されています。

  • 箸を落とす
  • 食べ物を保持できない
  • 食事途中で手が疲れる
  • ペットボトルも開けにくい
  • コップも持ちにくい
  • 細い物を握りにくい

箸だけでなく、歯ブラシやペンなど細い物も持ちにくくなっている場合には、食事以外の日常生活でも手指の負担が増えている可能性があります。

力の低下が進んでいる場合は、無理に細い箸を使わせず、太い柄の食具や自助具を利用することも検討しましょう。

細かな指の動きが難しくなっている

箸では、一本をある程度固定しながら、もう一本を親指、人差し指、中指などで細かく操作します。そのため、指を一本ずつ動かしたり、動かす範囲を調節したりする能力が必要です。

高齢や病気などによってこのような細かな動作が難しくなると、握力がある人でも箸先を思った位置へ動かせない場合があります。

状態食事中の様子
箸先が合わない食べ物を挟めない
箸が交差する力を伝えにくい
開きにくい大きな物をつまめない
閉じにくい保持できない
力加減が難しい食べ物を落とす

このような場合は、滑り止め付きの普通の箸だけでは十分に補えないことがあります。二本の箸を連結した自助箸など、操作する自由度を少なくした道具が使いやすい可能性があります。

本人がどこで失敗しているのかを観察し、その動作を補ってくれる食具を選ぶことが重要です。

関節の痛みや動かしにくさがある

指や手首の関節に痛みがあると、箸を使うための細かな動作を続けることが負担になります。本人が「箸は使える」と話していても、食事後に手が痛む、途中から持ち方が崩れるという場合には無理をしている可能性があります。

痛みがある状態で繰り返し強く握るより、少ない力で操作できる食具へ変更することを考えましょう。

  • 指を曲げると痛い
  • 箸を握ると痛い
  • 手首を動かしにくい
  • 指が変形している
  • 食事後に手が疲れる
  • 朝に指を動かしにくい

関節の痛みや腫れ、変形などが続いている場合には、道具の変更だけで済ませず医療機関へ相談することも重要です。

本人が痛みを我慢して食事していないか確認し、「普通の箸を使うこと」より食事を楽に続けられることを優先しましょう。

高齢者向けの食具は困っている動作から選ぼう

高齢者向けの食具には、自助箸、太柄スプーン、角度付きスプーン、万能カフなどさまざまな種類があります。しかし、「高齢者用」「介護用」という表示だけで選んでも、本人の困りごとと合っていなければ使われなくなる可能性があります。

例えば握力が弱い人と、手首を曲げにくい人では適した食具が異なります。また、右手が使いにくい人が左手へ変更する場合には、左右どちらでも扱える製品かどうかも重要になります。

食具の形ではなく、本人が食事中にどの動作で困っているかを出発点にして選びましょう。

握る力から選ぶ

箸やスプーンを選ぶときは、本人がどの程度の力で食具を保持できるか確認します。細い柄を握り続けることが難しい人では、太い柄や手へ固定できる保持具などが候補になります。

テクノエイド協会でも、把持力が弱い場合には太柄の食具を選ぶことを案内しています。

  • 食具を落とさないか
  • 途中で握り直さないか
  • 強く握り込んでいないか
  • 食後に疲れていないか
  • 痛みが出ないか
  • 最後まで保持できるか

握力が弱いからといって、単純に重い食具を避けるだけでは十分ではありません。柄の太さや形、表面の滑りにくさによっても保持しやすさは変わります。

本人が一食を通して使えることを基準にし、数秒持てるだけで判断しないようにしましょう。

手首や腕の動きから選ぶ

箸を持てても口まで運べない場合には、問題が指先ではなく手首、肘、肩などにある可能性があります。この場合、箸だけを変更しても食事動作は楽にならないことがあります。

テクノエイド協会では、手首の動きが悪く食具を口へ運びにくい場合には、先端部を曲げられる食具を選んで調整する方法を紹介しています。

動き確認する工夫
手首を返せない角度付き食具
肘を上げにくい食器位置を調整
肩が疲れる軽量食具
口まで届きにくい長さを検討
握り続けられない保持具を検討

長い食具は口まで届きやすくなる場合がありますが、長すぎると先端をコントロールしにくくなるため注意が必要です。

本人が普段座っている位置で実際に食具を口まで運び、肩や肘に無理がないか確認しましょう。

洗いやすさも確認する

自助箸や介護用食具を毎日使用するなら、食べやすさだけでなく洗浄や管理のしやすさも重要です。複雑な部品が多い製品では、食べ物が細部へ入り込んだり、分解と組み立てが負担になったりする場合があります。

テクノエイド協会も、摂食用具を選ぶ際には洗浄に耐えられる素材であることを確認するよう案内しています。

  • 簡単に洗える
  • 分解方法が分かりやすい
  • 乾燥させやすい
  • 部品をなくしにくい
  • 食洗機対応を確認する
  • 取扱説明書を確認する

本人が一人暮らしの場合には、自分で洗えるかどうかも選択基準になります。使いやすくても毎回家族の洗浄が必要な食具では、日常的に使用しにくいことがあります。

本人の食事動作だけでなく、食後の片付けまで含めて無理なく使える製品を選びましょう。

箸だけでなく食事環境を整えよう

高齢者が箸を使いにくそうにしていると、家族の関心は箸だけに集中しがちです。しかし、椅子が低い、テーブルが高い、食器が遠い、皿が滑るといった環境の問題が加わることで、食事動作がさらに難しくなっている場合があります。

食事では、食具を持つ、料理へ手を伸ばす、食べ物をつまむ、口へ運ぶという複数の動作を繰り返します。身体を安定させられない姿勢では、手指を細かく動かすことにも影響する可能性があります。

自助箸へ替えるだけで終わらせず、座る姿勢や食器の位置なども一緒に確認しましょう。

椅子とテーブルの高さを確認する

食事中に身体が不安定だと、手先の細かな動作へ集中しにくくなります。椅子へ深く座った状態で足が床につき、食卓へ無理なく手を伸ばせる姿勢になっているか確認しましょう。

椅子やテーブルの高さが本人に合わないと、肩を上げ続けたり身体を前へ大きく倒したりしながら食べることになります。

  • 足が床につく
  • 身体が傾かない
  • 肩が上がらない
  • 食器へ手が届く
  • 椅子がぐらつかない
  • 楽に座り続けられる

車いすで食事をする場合にも、テーブルとの距離や高さを確認してください。遠すぎる位置から腕を伸ばすと、食具の操作が難しくなることがあります。

本人がいつも食べている場所で一食分の動作を観察すると、食具以外の負担にも気づきやすくなります。

食器を動きにくくする

片手で食事をする人や、食べ物を強く押さえながらすくう人では、食器そのものがテーブル上を動いてしまうことがあります。皿をもう一方の手で押さえられない場合には、滑り止めなどで食器を安定させる方法があります。

テクノエイド協会の自助具データベースにも、食器の固定や片手での食事を補うための用具が掲載されています。

困りごと環境の工夫
皿が動く滑り止めを使用
片手しか使えない食器を固定
すくいにくい縁のある食器
茶わんを持てないホルダーを検討
手が届かない配置を近づける

家庭にある滑り止め用品を使用する場合も、衛生面や耐熱性などを確認し、食事用途に適したものを選びましょう。

食器が安定するだけでも、箸やスプーンへ必要以上の力を入れずに済む場合があります。

料理を食べやすい大きさにする

箸を使いにくい高齢者では、料理の大きさや形を少し変えるだけで食べやすくなることがあります。大きな肉や長い麺などを箸で持ち上げることが難しい場合には、調理や盛り付けの段階で一口で扱いやすい大きさにしておく方法があります。

ただし、単純にすべてを細かく刻めばよいわけではありません。細かすぎる料理は箸ではかえってつまみにくくなる場合があります。

  • 一口で扱える大きさ
  • 箸でつまみやすい形
  • 必要ならスプーンを添える
  • 麺を長すぎない状態にする
  • 皿へ盛りすぎない
  • 本人の好みを尊重する

噛むことや飲み込むことにも問題がある場合には、食具の使いやすさだけで食事形態を決めず、医療・介護の専門職へ相談することが重要です。

箸で扱いやすい料理とスプーンで食べやすい料理を組み合わせ、本人が無理なく食事を続けられるよう工夫しましょう。

急に箸が使えなくなった場合は身体の変化にも注意しよう

以前から少しずつ箸を使いにくくなっている場合と、昨日まで普通に使えていた箸が突然使えなくなった場合では、考え方が異なります。急な変化があるときは、単に加齢によって握力が落ちたと自己判断しないことが重要です。

また、箸だけでなくボタンを留められない、字を書きにくい、コップを落とすなど、ほかの手指動作にも変化がないか確認しましょう。特に片側の手足に突然力が入らないなどの症状がある場合は注意が必要です。

道具を変更することで食事を続けやすくすることと、身体状態の変化を確認することは分けて考えましょう。

片手だけ急に使いにくい場合は注意する

高齢者が突然「右手で箸を持てなくなった」などと訴えた場合は、自助箸を購入して様子を見るだけで済ませないことが重要です。突然片側の手や腕に力が入らない、しびれるなどの症状は、緊急性のある病気でみられることがあります。

特に顔の片側が動かしにくい、言葉が出にくい、ろれつが回らない、片側の手足に力が入らないといった変化を伴う場合には、速やかな医療対応が必要です。

  • 片手に急に力が入らない
  • 突然しびれた
  • 顔の片側に変化がある
  • ろれつが回らない
  • 言葉が出にくい
  • 歩き方も急に変わった

症状が突然現れ、脳卒中などが疑われる場合には救急要請を含め速やかに対応してください。本人が「少し休めば治る」と言っても、自己判断で長時間様子を見ることは避けます。

「箸が使えない」という変化を単独で見るのではなく、身体のほかの部分にも同時に変化がないか確認することが大切です。

痛みやしびれが続くなら相談する

急激な変化ではなくても、手指の痛みやしびれによって箸を使いにくくなっている場合には医療機関へ相談することを検討しましょう。道具を変更すると日常生活の負担を減らせますが、痛みやしびれの原因そのものが解決するわけではありません。

いつ頃から症状が始まったか、左右どちらか、食事以外ではどのような動作が難しいかを整理しておくと相談しやすくなります。

確認項目伝える内容
時期いつからか
左右どちらの手か
痛みどこが痛むか
しびれどの指にあるか
食事何が難しいか
他の動作文字や着替えなど

例えば「箸だけ使いにくい」と思っていても、確認するとボタンを留める、爪切りを使う、ペットボトルのふたを開けるなど複数の動作が難しくなっている場合があります。

家族が気づいた変化も記録し、必要に応じて本人と一緒に医療機関へ相談しましょう。

作業療法士などへの相談も検討する

病気やけがの後遺症などによって箸を使いにくくなった場合には、作業療法士などへ相談できることがあります。作業療法では、食事や着替えなど日常生活に必要な動作を確認し、身体状態に合わせた方法や道具を検討します。

厚生労働省の生活行為向上支援に関する資料でも、身体機能への働きかけだけでなく、生活用具や自助具を活用して生活行為を行いやすくする視点が示されています。

  • 箸の操作を確認する
  • 手指の動きを確認する
  • 姿勢を確認する
  • 食具を選ぶ
  • 自助具を試す
  • 生活全体を確認する

本人に合う食具は、病名だけで一律に決まるものではありません。同じように握力が弱い人でも、指の動きや手首、肩の状態によって適した道具は変わります。

複数の自助具を購入しても使われない状態を避けるためにも、身体機能の低下が大きい場合は専門職へ相談しながら選ぶことを検討しましょう。

無理に普通の箸へこだわらず食べやすさを優先しよう

高齢者が箸を使いにくくなったときは、まず「箸を持てない」「箸先を動かせない」「食べ物を保持できない」「口まで運びにくい」のどこで困っているのかを確認しましょう。食べ物が滑るだけなら滑りにくい箸が役立つ場合がありますが、二本の箸を別々に操作することが難しい人では、自助箸や箸ホルダーなど別の仕組みを利用したほうが食べやすくなる可能性があります。

普通の箸を使うことが難しくなっても、スプーンやフォークへ変更することをためらう必要はありません。握る力が弱い人には太い柄、手首を動かしにくい人には角度を調整できる食具、握り続けることが難しい人には万能カフなど、身体状態に合わせたさまざまな自助具があります。本人が最後まで自分で食事できることを優先し、料理によって食具を使い分ける方法も取り入れましょう。

また、箸だけでなく食器や食事姿勢も重要です。皿が動いてしまう人には滑り止めや固定しやすい食器、片手で食事する人には縁を利用してすくいやすい食器などが役立つ場合があります。椅子やテーブルの高さ、食器までの距離も確認し、本人が安定した姿勢で食事できる環境を整えることが大切です。

以前から徐々に使いにくくなったのではなく、突然片手で箸を持てなくなった場合には注意してください。片側の手足へ急に力が入らない、しびれる、顔の片側が動かしにくい、ろれつが回らないなどの変化を伴う場合には、道具で様子を見るのではなく速やかな医療対応が必要です。痛みやしびれが続いている場合についても、原因を確認するため医療機関へ相談しましょう。

長年箸を使ってきた高齢者にとって、箸で食事をすることには慣れや好みがあり、本人ができるだけ使い続けたいと考えることもあります。その希望を否定する必要はありません。普通の箸、自助箸、箸ホルダー、スプーン、フォークなどから本人が使いやすい方法を選び、必要であれば作業療法士などの専門職にも相談しながら、自分で食べる楽しみを保てる環境を整えていきましょう。

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