高齢者がコップを持てない、持ち上げても手から落としてしまう、飲み物を口元まで運ぶ途中でこぼしてしまうといった様子が見られると、家族は毎回コップを持って飲ませたほうがよいのか迷うことがあります。
しかし、コップを持てない原因は単純な握力低下だけではなく、指が曲がりにくい、関節に痛みがある、片手に麻痺がある、手が震える、腕を持ち上げにくい、コップそのものが重すぎるなどさまざまです。
公益財団法人テクノエイド協会では、飲み物用具について、片手で安定して持ち上げたり運んだりできない場合には両取っ手付きカップを選ぶ方法を紹介しており、自助具のデータベースにも握る力がない人などを想定したホルダー付きコップスタンドや、手が震える人向けのストローホルダーなどが掲載されています。
そのため、普通の湯飲みやガラスコップを何とか握ってもらうことだけを考えず、軽いカップ、太く握りやすい持ち手、両手で支えられるカップ、ストロー、コップを持ち上げなくても飲めるスタンドなどを利用すると、自分で飲める可能性を残せます。
一方、以前は問題なくコップを持てていた高齢者が急に持てなくなった場合や、手足の動かしにくさなどほかの変化も急に現れた場合には、食器だけの問題として考えないことも重要です。ここでは、高齢者がコップを持てないときに試したい対策から、原因の見分け方、飲みやすいコップの選び方、水分補給を続けやすくする工夫まで詳しく整理します。
高齢者がコップを持てないときの対策
高齢者がコップを持てないときは、最初から家族がすべて介助するのではなく、「握る」「持ち上げる」「口まで運ぶ」「傾ける」という一連の動作のどこで難しくなっているのかを確認しましょう。
持ち手を変えるだけで飲める人もいれば、コップを持ち上げること自体が難しく、テーブルへ置いたままストローを使ったほうが飲みやすい人もいます。
本人の身体状態に合った方法を選べば、飲み物をこぼす回数を減らしながら、自分でできる動作を残しやすくなります。
軽いコップへ替える
コップを握ることはできるものの、飲み物を入れると持ち上げられない高齢者には、まず容器そのものを軽くする方法があります。厚手の陶器製マグカップやガラスコップは、空の状態では持てても飲み物を入れると重くなり、手首や腕への負担が大きくなることがあります。
例えば300ミリリットルの飲み物だけでも約300グラムあるため、そこへ容器自体の重さが加わります。握力だけでなく腕や肩の筋力が低下している人にとっては、毎回その重量をテーブルから口元まで持ち上げることが大きな負担になる場合があります。
- 軽量な樹脂製
- 小さめの容量
- 持ち手付き
- 滑りにくい表面
- 割れにくい素材
- 洗いやすい形状
一度にたくさん入れようとせず、少量ずつ入れてコップ全体を軽くする方法もあります。例えば大きなマグカップへ満杯にするのではなく、小さめのカップへ必要量だけ入れ、家族がこまめに補充する方法です。
ただし、小さくすれば必ず使いやすくなるわけではありません。容器が細すぎると指を大きく曲げて握る必要があるため、本人がどの程度の太さなら安定して保持できるかも合わせて確認しましょう。
大きな持ち手のカップを使う
高齢者がコップ本体を直接つかみにくい場合には、指を通せる大きな持ち手が付いたカップへ替えると扱いやすくなることがあります。特に指先で強く握る力が弱くなっている人では、細い取っ手より手全体を使える形状のほうが安定しやすい場合があります。
一般的なマグカップでも持ち手はありますが、穴が小さい製品では指が入りにくく、関節が曲がりにくい人にはかえって使いにくいことがあります。指を何本入れられるか、持ち上げたときに手首へ無理な角度がかからないかを確認しましょう。
| 困りごと | 選びたい特徴 | 確認点 |
|---|---|---|
| 握力が弱い | 大きな持ち手 | 手全体で支えられるか |
| 指が曲がりにくい | 広い持ち手 | 指を通しやすいか |
| 手首が痛い | 軽いカップ | 傾けやすいか |
| 滑りやすい | 滑りにくい素材 | 濡れても扱いやすいか |
| 落としやすい | 割れにくい素材 | 重量も確認 |
テクノエイド協会では、握る力が弱い人向けの食事用具について、持つ部分を太くすることで握りやすくする工夫も紹介しています。コップでも同様に、細い部分を指先だけで強く握らせるより、本人が少ない力で保持できる形状を探すことがポイントです。
購入する場合は「介護用」という表示だけで判断せず、本人に実際に持ってもらえるなら、空の状態と飲み物を入れた状態の両方で試しましょう。
両取っ手付きカップを試す
片手だけではコップが傾いたり、持ち上げたときに手首が安定しなかったりする人には、左右に持ち手がある両取っ手付きカップが適することがあります。
テクノエイド協会の飲み物用具の選び方でも、片手では安定して持ち上げられない、運べない場合には両取っ手付きカップを選択する方法が示されています。両手へ重さを分散できるため、片手だけで支えるより安定しやすいことが利点です。
- 左右から支えられる
- 片手への負担を減らせる
- 傾きを調整しやすい
- 大きな持ち手を選べる
- 軽量タイプもある
- ふた付き製品も選べる
ただし、片麻痺などで片方の手をほとんど使用できない人には、両取っ手があってもメリットを得にくい場合があります。また、両手を使える人でも肩を前へ出す動作が難しいと、カップを口元まで運べないことがあります。
「両手なら持てるか」を実際に確認し、テーブルから持ち上げるところだけでなく、口元まで運び、適切に傾け、再びテーブルへ戻せるところまで試しましょう。
ふた付きカップでこぼれにくくする
コップを持ち上げることはできても、口元へ運ぶ途中で手が震えたり、傾ける角度を調整しにくかったりして飲み物をこぼす人には、ふた付きのカップが役立つ場合があります。
テクノエイド協会では、臥床中など口へコップを持っていく際にこぼれてしまう場合の飲み物用具として、密閉バルブ付きカップを選択肢として紹介しています。ふたがあれば多少傾いても一度に大量の飲み物が出にくい製品があります。
| 状態 | 考えたい用具 | 目的 |
|---|---|---|
| 運ぶ途中でこぼす | ふた付き | こぼれを抑える |
| 手が震える | 飲み口付き | 量を調整しやすくする |
| 寝た姿勢で使う | 専用飲水用具 | 姿勢に対応する |
| 持ち上げにくい | ストロー併用 | 持ち上げ動作を減らす |
ただし、ふた付きだから安全に飲めるとは限りません。製品によって飲み物が出る量や吸うために必要な力が異なり、本人の飲み込みの状態によっては適さない場合があります。
むせが多い人や飲み込みについて指示を受けている人は、自己判断で飲み口やストローへ変更せず、医師、言語聴覚士などの専門職へ相談して本人に適した飲み方を確認しましょう。
ストローで持ち上げる動作を減らす
コップを握る力は弱くても、ストローから飲み物を吸うことができる人であれば、カップをテーブルへ置いたままストローを使用する方法があります。腕を口元まで持ち上げる動作が不要になるため、上肢の筋力が低下している人にも役立つ場合があります。
ただし、手の震えがある人ではストロー自体が動いてしまい、口でうまく捉えられないことがあります。テクノエイド協会の自助具データベースには、手が震えてコップを持てない人などを想定したストローホルダーの製作事例も掲載されています。
- コップを持ち上げなくてよい
- 腕への負担を減らせる
- ストローを固定できる用品もある
- テーブル上で飲みやすい
- 本人の吸う力を確認する
- 飲み込みの状態に注意する
ストローを使う場合は、コップが軽すぎてストローを動かした際に倒れないか、本人が口を近づけたときに無理な前かがみ姿勢にならないかも確認しましょう。
また、ストローは誰にでも適した方法ではありません。嚥下機能に問題がある人では飲み方や一口量への配慮が必要になるため、頻繁にむせる場合は専門職へ相談することが大切です。
コップスタンドを利用する
指を曲げてコップを握ること自体が難しい人や、握っても保持できない人では、コップを持つことにこだわらず、スタンドへ固定した状態で飲む方法もあります。
テクノエイド協会の自助具データベースには、握る力がない場合や指が曲がらないためにコップを握れない人を対象としたホルダー付きコップスタンドが紹介されています。スタンドにホルダーを設けることで、コップそのものを握らずに使用できるよう工夫されています。
| 方法 | 握る力 | 向いている状態 |
|---|---|---|
| 普通のコップ | 必要 | 安定して握れる |
| 取っ手付き | 比較的少ない | 指を通せる |
| 両取っ手付き | 分散できる | 両手を使える |
| ストロー | ほぼ不要 | 吸って飲める |
| コップスタンド | 不要な場合あり | 保持が難しい |
本人が「自分で飲みたい」と思っていても、コップを握れないため毎回家族を呼んでいる場合には、このような自助具によって介助量を減らせる可能性があります。
市販品だけでなく身体状態に合わせた自助具の製作事例もあるため、一般的なカップで対応できない場合は作業療法士などへ相談してみるとよいでしょう。
飲み物の量を少なくする
同じコップでも、満杯に入っている状態と三分の一程度しか入っていない状態では、持ち上げるときの重さが大きく異なります。容器を買い替える前に、一度に入れる量を減らすだけで自分で持てるようになる人もいます。
また、満杯のコップは重いだけでなく、少し傾いただけで飲み物がこぼれやすいため、手が震える人や手首の角度を調整しにくい人には扱いにくくなります。
- 満杯にしない
- 少量ずつ補充する
- 軽い容器を組み合わせる
- 本人が持てる重さを確認する
- 水分量は別に管理する
- 手の届く場所へ置く
ただし、一回量を減らすことで一日の水分摂取量まで減ってしまわないよう注意が必要です。本人がどの程度飲んだかを家族や介護者が把握する必要がある場合には、補充した回数なども目安にしましょう。
本人が少量なら自分で持てる場合には、できる動作を残しつつ必要な水分量を確保できる方法を考えることが大切です。
テーブルの高さや姿勢を整える
コップそのものに問題がなくても、テーブルが高すぎたり身体が椅子の中で後ろへ倒れていたりすると、腕を前へ伸ばしてコップを取る動作が難しくなります。
高齢者が飲み物を取るたびに身体を大きく前へ倒している場合には、コップを本人の近くへ置くだけで動作が楽になることがあります。
| 確認点 | 困る状態 | 工夫 |
|---|---|---|
| コップの距離 | 遠すぎる | 手元へ置く |
| テーブル | 高すぎる | 高さを見直す |
| 椅子 | 身体が沈む | 座位を整える |
| 足元 | 足が浮く | 安定させる |
| 腕 | 支えがない | テーブルを活用 |
肘や前腕をテーブルへ置いた状態からコップを口へ運べれば、腕全体を空中で支え続ける必要がなくなり、筋力が弱い人でも動かしやすくなる場合があります。
飲み物用具だけを変更してもうまくいかない場合には、本人が普段どのような姿勢で飲んでいるのかも確認しましょう。
コップを持てない原因を確認しよう
高齢者がコップを持てない場合、適した対策を選ぶには「持てない」という言葉をもう少し細かく分けて考える必要があります。
握れないのか、握れるけれど重くて持ち上げられないのか、口まで運ぶ途中で震えるのか、手首を傾けられないのかによって選ぶ用具は異なります。
本人に何度も「しっかり持って」と伝える前に、どの動作で困っているのかを観察しましょう。
握力が弱くなっている
加齢や身体状態の変化などによって握る力が弱くなると、表面が滑らかなコップを指だけで保持することが難しくなる場合があります。
特にコップ本体を握り込むタイプでは、ある程度の握力を維持したまま口元まで運ぶ必要があり、途中で力が抜けると落としてしまう可能性があります。
- 途中で手から落ちる
- 両手なら持てる
- 軽い物なら持てる
- 太い物のほうが握りやすい
- ペットボトルも持ちにくい
- 食器を落とすことが増えた
握力が弱い場合には、軽いカップ、大きな持ち手、両取っ手付きカップなど、強く握り続けなくても保持できる用具を試してみましょう。
コップだけでなく箸やスプーン、歯ブラシなども握りにくくなっている場合には、食事や整容全体で使いやすい自助具を検討する方法があります。
指や手首に痛みがある
握る力そのものは残っていても、指の関節や手首に痛みがあるためコップを持てない場合があります。この場合、握力を鍛えようと無理に握らせると負担になる可能性があります。
指を深く曲げると痛い人なら、指を通すだけで支えやすい大きな持ち手や、両手で重量を分散できるカップなどを検討します。
| 状態 | 困りやすい動作 | 工夫 |
|---|---|---|
| 指が痛い | 握り込む | 大きな持ち手 |
| 手首が痛い | コップを傾ける | 軽量化 |
| 指が曲がらない | 細い取っ手を持つ | 広い持ち手 |
| 両手なら使える | 片手保持 | 両取っ手付き |
痛みが続いている場合には、食器を工夫するだけでなく医療機関で原因を確認することも重要です。
本人が痛みを我慢して使っていないか、コップを持つ瞬間に顔をしかめたり反対の手で手首を支えたりしていないかも確認しましょう。
手の震えで安定しない
コップを握れるのに飲み物を頻繁にこぼす場合には、持ち上げたときの手の震えが影響していることがあります。
震えがある状態で満杯のコップを口元まで運ぶと、飲み物が揺れてこぼれやすくなるため、量を少なくする、ふたを使う、ストローを固定するといった工夫が候補になります。
- 少量だけ入れる
- 軽いカップを使う
- 両手で支える
- 肘をテーブルへ置く
- ふたを利用する
- ストローを固定する
テクノエイド協会の自助具データベースにも、手が震えてコップを持てない人やストローが揺れて口へ運びにくい人を想定した用具が紹介されています。
震えが急に現れた場合や強くなっている場合には、単に介護用品で補うだけでなく医療機関への相談も検討しましょう。
飲みやすいコップは本人の動作に合わせて選ぼう
高齢者向けのコップを選ぶ際には、「介護用」と書かれていることより、本人がどの程度手を使えるかを基準にすることが重要です。
握力が弱い人と腕を上げられない人では必要な工夫が異なり、同じ製品がすべての高齢者に使いやすいわけではありません。
できれば実際に水などを入れ、取る、持ち上げる、飲む、戻すという一連の動作を確認して選びましょう。
重さを最初に確認する
コップを選ぶときは容量やデザインだけでなく、空の状態でどの程度の重量があるかを確認しましょう。厚い陶器やガラスのカップは安定感がある反面、筋力が低下している人には重く感じられる場合があります。
さらに実際には飲み物の重量が加わるため、空のカップだけを店頭で持って「軽い」と判断しないことがポイントです。
- 空の重量
- 飲み物を入れた重量
- 容量
- 持ち手の重量バランス
- 本人が持てる時間
- テーブルへ戻しやすいか
大容量のカップは何度も注ぐ必要がない一方、満杯にすると重くなるため、本人が自分で飲むことを優先するなら小容量のほうが適する場合があります。
本人が持てる重さを基準にし、必要な水分量については補充回数を増やすことで対応するとよいでしょう。
持ち手の大きさを確認する
持ち手付きカップを選ぶ場合には、持ち手が付いているかどうかだけでなく、本人の指が無理なく入る大きさかを確認します。
指の関節が動かしにくい人にとって、小さな丸い持ち手へ数本の指を入れる動作は意外に難しいことがあります。
| 持ち手 | 特徴 | 確認点 |
|---|---|---|
| 小さい | 一般的なマグ | 指が入るか |
| 大きい | 手を通しやすい | 安定して支えられるか |
| 両側 | 両手で支えられる | 両手を使えるか |
| 太い | 力を分散しやすい | 手の大きさに合うか |
本人が指先だけで持つのか、手のひらまで使って支えるのかによっても適した形状は変わります。
家族が持ちやすいと感じる形ではなく、実際に使用する本人の手の状態に合わせて選びましょう。
洗いやすさと安全性も確認する
毎日使うコップは本人の使いやすさだけでなく、洗いやすさや衛生管理のしやすさも重要です。
複雑なふたやバルブ、ストローなどが付いている製品は便利な一方、部品を分解して洗浄する必要がある場合があります。
- 分解できるか
- 内部まで洗えるか
- 乾燥させやすいか
- 交換部品があるか
- 割れにくいか
- 耐熱温度を確認する
熱い飲み物を入れる場合には、容器の表面が熱くなりすぎないか、本人が温度を確認できるかにも注意が必要です。
便利な機能が多い製品より、本人と介助者の双方が毎日無理なく扱えるものを選ぶことが長く使うためのポイントです。
水分補給を続けやすい環境も整えよう
コップを持てなくなると、高齢者本人が「こぼすから飲まない」「家族を呼ぶのが申し訳ない」と考え、飲む回数そのものが減る可能性があります。
厚生労働省の障害程度区分に関する資料でも、飲水について、コップなどを手の届く範囲へ置けば自分で飲める状態や、手渡しや口元まで運ぶ介助が必要な状態などを分けて扱っています。
つまり、水分補給では飲めるかどうかだけでなく、飲み物を本人が扱える位置や状態で準備することも重要です。
手の届く位置へ飲み物を置く
本人に合ったコップを用意しても、テーブルの奥やベッドから離れた場所へ置いてしまえば自分では飲めません。
座った状態から腕を大きく伸ばさなくても取れる位置へ置き、手前へ引き寄せる際に倒れないことも確認しましょう。
- 利き手側へ置く
- 麻痺がある場合は位置を調整する
- 腕を伸ばしすぎない
- テーブルの端へ置きすぎない
- 見つけやすい場所にする
- 毎回同じ位置へ置く
認知機能や視力に変化がある高齢者では、透明な水を透明なコップへ入れると存在に気づきにくい場合もあるため、本人が認識しやすい容器や置き場所を検討します。
家族が「ここに置いたから飲んで」と伝えるだけでなく、本人が実際に自分で手を伸ばして取れるか確認しましょう。
飲んだ量を確認できるようにする
小さなコップへ変更したり一回量を減らしたりすると、自分では飲みやすくなる反面、家族が一日の摂取量を把握しにくくなる場合があります。
本人に水分量の指示がある場合などは医療職の指示を優先しながら、必要に応じて補充回数や飲み残しを確認しましょう。
| 方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 小さいカップ | 軽くできる | 補充回数が増える |
| ボトルから補充 | 量を把握しやすい | 本人が注げるか確認 |
| 時間を決める | 忘れにくい | 本人の生活に合わせる |
| 家族が声かけ | 飲む機会を作れる | 無理強いしない |
本人が自分で飲める環境を整えることと、必要な量を摂取できているかを確認することは分けて考える必要があります。
心臓や腎臓などの病気によって水分摂取量について医師から指示を受けている場合には、一般的な目安ではなくその指示に従いましょう。
家族が全部持つ前にできる動作を確認する
コップを一度落とした経験があると、家族は心配になって毎回口元まで運びたくなりますが、本人が一部の動作を自分でできる場合には、その能力を生かせる方法を探すことも大切です。
例えばコップを持ち上げられなくても、テーブルへ固定したストローからなら自分で飲める場合があります。
- コップへ手を伸ばせる
- 取っ手なら握れる
- 両手なら持てる
- 少量なら持ち上げられる
- ストローなら飲める
- 飲んだ後に戻せる
厚生労働省の資料でも、飲み物を手の届く範囲へ置けば自分で飲める場合と、コップを手渡したり口元へ運んだりする介助が必要な場合は区別されています。
「普通のコップを一人で使えるか」だけで判断せず、環境や用具を変えればどこまで本人自身で行えるかという視点で考えましょう。
急にコップを持てなくなった場合は身体の変化にも注意しよう
何年も少しずつ握力が低下してコップを持ちにくくなっている場合と、昨日まで問題なく使えていたのに突然持てなくなった場合では、考え方が異なります。
特に片方の手だけが突然使いにくくなったなど急な変化がある場合には、介護用コップを探すことだけで済ませず、身体状態を確認することが重要です。
また、飲み物を口へ運べても頻繁にむせる場合には、「コップを持つ」という上肢の問題とは別に、飲み込みについて確認が必要になることがあります。
片手だけ急に使いにくい場合は注意する
高齢者が突然コップを落とすようになり、特に片側の手や腕へ力が入りにくい場合には注意が必要です。
コップだけではなく箸を落とす、片腕を上げにくい、歩き方がおかしいなど、ほかの急な変化がないか確認しましょう。
- 片腕に力が入らない
- 顔の片側に変化がある
- 言葉が出にくい
- ろれつが回りにくい
- 突然歩きにくくなった
- 急な強い症状がある
こうした症状が突然現れた場合には脳卒中など緊急性のある病気の可能性もあるため、様子を見ながら介護用品を選ぶのではなく、速やかに救急要請を含めた医療対応を検討する必要があります。
「高齢だから力が弱くなった」と決めつけず、いつから変化したのか、左右差があるのかを確認することが大切です。
むせが増えた場合は飲み方を自己判断で変えない
高齢者がコップを使いにくくなるとストローや吸い飲みへ変更したくなりますが、飲み込みの状態によって適した方法は異なります。
水やお茶で頻繁にむせる、飲んだ後に声が変わる、口の中に飲み物が残るといった様子がある場合には、単にこぼれない容器を選ぶだけでは十分ではありません。
| 様子 | 確認したいこと | 対応 |
|---|---|---|
| 頻繁にむせる | 飲み込み | 専門職へ相談 |
| 口からこぼれる | 口唇や姿勢 | 飲み方を確認 |
| 飲み込みに時間 | 嚥下状態 | 評価を検討 |
| 声が変わる | 飲水後の状態 | 医療職へ伝える |
飲み物の粘度を変更する場合も、本人に適した状態を専門職から指示されている場合にはその内容に従いましょう。
「ストローなら楽そう」「とろみを付ければ安全そう」と家族だけで決めず、むせが続く場合はかかりつけ医や言語聴覚士などへ相談することが大切です。
作業療法士などへ相談する
市販の介護用カップをいくつか試してもうまく飲めない場合には、本人の手や腕の動きを専門職へ確認してもらう方法があります。
作業療法士は、食事を含む日常生活動作について、身体機能だけでなく道具や環境の工夫も含めて支援する専門職です。
- 握り方を確認する
- 腕の動きを確認する
- 座る姿勢を見る
- 適した自助具を検討する
- テーブル環境を調整する
- 残っている能力を生かす
テクノエイド協会の自助具データベースには、握れない人向けのコップスタンドをはじめ、一般的な食器では対応しにくい身体状態に合わせたさまざまな製作事例があります。
介護サービスやリハビリテーションを利用している場合には、ケアマネジャー、作業療法士、理学療法士などへ「コップを持てなくなった」と具体的に伝えて相談するとよいでしょう。
持てない原因に合わせて自分で飲める方法を探そう
高齢者がコップを持てないときには、単に「握力がなくなった」と考えるのではなく、コップを握れないのか、持ち上げられないのか、口元まで運べないのか、傾けられないのか、手が震えてこぼしてしまうのかを確認することが大切です。それぞれの動作によって必要な対策は異なります。
普通のコップが重い場合には軽量なカップへ替え、一回に入れる飲み物を少なくするだけでも負担を減らせます。指先で握ることが難しい人なら大きな持ち手、片手では安定しない人なら両取っ手付きカップ、持ち上げること自体が難しい人ならストローやコップスタンドなど、本人ができる動作に合わせて用具を選びましょう。
また、本人に合ったカップを用意しても、手の届かない場所へ置いていては自分で水分補給できません。普段座っている椅子やベッドから無理なく手が届く位置へ置き、腕を伸ばしすぎたり身体を大きく前へ倒したりせずに使えることを確認してください。一回量を減らす場合には、一日の水分摂取量が意図せず減らないよう補充方法も考える必要があります。
ふた付きカップやストローは便利ですが、飲み込みに問題がある高齢者へ自己判断で使用方法を変更することには注意が必要です。水やお茶を飲むと頻繁にむせる、飲んだ後に声が変わるなど気になる様子がある場合には、かかりつけ医や言語聴覚士などへ相談し、本人に適した飲み方を確認しましょう。
さらに、昨日まで普通にコップを使えていた人が突然片手で持てなくなった場合など、急激な変化があるときには介護用品だけで対応しようとしないことが重要です。片腕の力が急に入らない、顔や言葉、歩行などにも急な変化がある場合には、脳卒中など緊急性のある状態も考えられるため速やかな医療対応が必要です。
家族が毎回コップを口元まで運ぶ方法だけでなく、少量なら自分で持てる、両手なら支えられる、ストローなら飲める、固定されたコップなら自分で飲めるといった本人に残っている動作を探してみましょう。必要に応じて作業療法士などへ相談し、身体状態に合ったコップや自助具、姿勢、置き場所を組み合わせることで、高齢者本人ができるだけ自分で水分補給を続けられる環境を整えることが大切です。


コメント