高齢者が靴を履くときに、「玄関で深くかがむのがつらい」「短い靴べらでは手がかかとまで届かない」「片足立ちになるとふらつく」といった困りごとがある場合は、長い靴べらへ替えるだけで動作が楽になることがあります。
一般的な短い靴べらは持ち運びには便利ですが、使うためには腰や背中を大きく曲げたり、座った状態で足元まで手を伸ばしたりする必要があります。腰や膝が動かしにくい高齢者にとって、この前かがみの姿勢そのものが負担になることがあります。
公益財団法人テクノエイド協会でも、靴べらは膝や腰に障害のある人が靴の着脱をするときに利用する用具として紹介されています。また、靴べらを選ぶ際には、現在の身体機能を把握するとともに、操作する手指や肩などの筋力や関節可動域も考慮する必要があるとされています。
そのため、高齢者向けに長い靴べらを選ぶときは、「長ければ長いほどよい」と考えるのではなく、立って使うのか椅子に座って使うのか、どの程度まで手を下げられるのか、靴べらを握って操作できるのかを確認することが大切です。
ここでは、高齢者が使いやすい長い靴べらの特徴をはじめ、長さや持ち手、素材の選び方、玄関で安全に使う方法、靴べらを使っても靴を履きにくい場合に見直したいポイントまで詳しく整理します。
高齢者には長い靴べらが使いやすい
高齢者が靴を履くときに腰や膝を曲げるのがつらい場合には、短い携帯用ではなくロングタイプの靴べらが便利です。
長い靴べらなら、立った姿勢や玄関の椅子へ座った姿勢からでも靴のかかとへ届きやすく、上半身を足元まで大きく倒す動作を減らせます。
ただし、身体の状態によって使いやすい長さや形は異なるため、本人の姿勢と手の動く範囲に合わせて選ぶことが重要です。
かがむ動作を減らせる
高齢者に長い靴べらが向いている大きな理由は、靴を履くために上半身を深く前へ倒す動作を減らせることです。短い靴べらでは靴のかかとまで手を下げる必要があるため、腰や股関節、膝などが動かしにくい人には負担になる場合があります。
特に玄関で立ったまま靴を履こうとしている人では、前かがみになることで身体の重心が前方へ移動し、姿勢が不安定になることがあります。長い靴べらを使えば上半身を大きく倒さなくてもかかとへ先端を差し込みやすくなります。
- 腰を深く曲げにくい
- 膝を曲げると痛い
- 足元へ手が届きにくい
- 前かがみがつらい
- 靴を履く動作に時間がかかる
- 短い靴べらを使いにくい
ただし、長い靴べらを使えば立ったまま安全に靴を履けるとは限りません。バランスが不安定な高齢者は、玄関に安定した椅子を用意して座った状態で使用したほうが安心です。
「立ったまま履くための道具」と決めつけず、本人が最も安定する姿勢で靴を履き、その姿勢からかかとへ届く長さを選びましょう。
腰が曲げにくい人でも使いやすい
腰に痛みがある人や腰を深く曲げることが難しい人では、足元まで手を伸ばして靴のかかとを引っ張る動作が負担になります。テクノエイド協会でも、靴べらは膝や腰に障害がある人が靴を履いたり脱いだりするときに使用する用具として整理されています。
長い靴べらを使えば、腰を大きく曲げずに先端を靴のかかとへ入れられるため、手を足元まで直接伸ばす必要を減らせます。特に靴のかかと部分を毎回指で引っ張っている人には試す価値があります。
| 困りごと | 短い靴べら | 長い靴べら |
|---|---|---|
| 腰を曲げにくい | 届きにくい | 届きやすい |
| 足元へ手が届かない | 使いにくい | 操作しやすい |
| 立って使いたい | 深くかがむ | 姿勢を保ちやすい |
| 携帯したい | 持ち運びやすい | 持ち運びにくい |
| 玄関で使う | 収納しやすい | 定位置を作ると便利 |
ただし、腰に強い痛みがある場合は、靴べらで無理に動作を続けるのではなく、座って靴を履く方法へ変更することも必要です。長い靴べらは身体の動きを補助する道具であり、痛みを我慢して立位を続けるための道具ではありません。
腰を曲げられる範囲を確認し、ほとんど前屈せず使いたいなら十分な長さのあるタイプを、椅子へ座って多少手を下げられるなら取り回しやすい長さを選びましょう。
膝を深く曲げなくても使える
靴を履く際には、腰だけでなく膝を曲げる動作も必要になることがあります。玄関の段差へ腰掛けて足元まで手を伸ばしたり、しゃがんで靴のかかとを直したりしている高齢者では、膝への負担が大きくなる場合があります。
長い靴べらなら、低い位置まで身体を下げずに靴のかかとへ届きやすくなります。膝の曲げ伸ばしがつらい人にとっては、靴を履くたびに深くしゃがむ必要がなくなることがメリットです。
- しゃがむのが難しい
- 膝を深く曲げられない
- 低い玄関框へ座りにくい
- 床から立ち上がりにくい
- 靴のかかとへ手が届かない
- 靴を履くと膝が痛む
一方、膝に問題がある人でも、片足を浮かせながら立って靴を履こうとすると別の負担が生じます。靴べらの長さだけでなく、両足を床へ安定させやすい玄関椅子なども合わせて検討しましょう。
長い靴べらによって「しゃがむ必要を減らす」ことと、「安定した姿勢で履く」ことを組み合わせるのがポイントです。
立った姿勢からかかとへ届きやすい
玄関で立ったまま靴を履く習慣があり、立位そのものは安定している高齢者なら、十分な長さがある靴べらを使うことで身体を深くかがめずに履ける場合があります。
この場合に重要なのは、靴べらを持った手を自然に下ろした位置から、靴のかかとまで先端が届くことです。短すぎると結局身体を前へ倒すことになり、長すぎると先端の位置を細かく調整しにくくなることがあります。
| 使用姿勢 | 選び方 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 立って使用 | 長め | かがまず届くか |
| 椅子で使用 | 中程度から長め | 先端を操作できるか |
| 玄関框で使用 | 姿勢に合わせる | 手を下げすぎないか |
| 持ち運び | 短め・伸縮式等 | 携帯性を確認 |
立位で使う場合には、靴を履くために片足を大きく持ち上げたり、壁へ寄りかかったりしていないかも確認してください。長い靴べらを使っていても、身体が大きく揺れているなら立位での着脱方法自体を見直す必要があります。
玄関に十分なスペースがあるなら、安定した椅子を置いて座って履く方法も試し、本人がより楽で安定するほうを選びましょう。
座った状態でも便利に使える
長い靴べらというと立って使うイメージがありますが、高齢者の場合は椅子へ座って使う方法にも大きなメリットがあります。座った姿勢でも腰を足元まで深く曲げる必要がなく、かかとへ靴べらを差し込みやすくなるからです。
特に歩行時に杖や歩行器を使用している人、立った状態で方向転換するとふらつく人、片足立ちが難しい人などは、立位で靴を履くことにこだわらないほうがよいでしょう。
- 玄関椅子へ座る
- 両足を安定させる
- 靴の履き口を十分に開く
- 靴べらをかかとへ入れる
- 足をゆっくり滑り込ませる
- 履いた後にかかとを確認する
椅子へ座って使う場合は、立位用として非常に長い靴べらより、本人が先端の位置を把握しやすい長さのほうが操作しやすい場合があります。
本人が座った姿勢からどこまで手を下げられるのかを確認し、前かがみになりすぎず、かつ靴のかかとへ正確に差し込める長さを選ぶことが大切です。
靴のかかとをつぶしにくくなる
靴を履きにくい高齢者の中には、足を無理に押し込むことで靴のかかと部分を踏みつぶしてしまう人がいます。かかとを踏んだ状態で歩くと靴が足へ適切に固定されにくくなり、歩きにくさにつながる可能性があります。
長い靴べらをかかと部分へ差し込んでから足を入れれば、指でかかとを引っ張らなくても履きやすくなり、靴の形を保ちやすくなります。
| 履き方 | 起こりやすいこと | 工夫 |
|---|---|---|
| 無理に押し込む | かかとがつぶれる | 靴べらを使う |
| 履き口が狭い | 足が入りにくい | 十分に開く |
| ひもを締めたまま | 足が入らない | 先に緩める |
| 靴べらが短い | 手が届かない | 長いタイプを試す |
| 靴が小さい | 圧迫される | サイズを確認 |
ただし、靴べらを使っても毎回強い力で足を押し込まなければ履けない場合は、靴のサイズや履き口の形が本人に合っていない可能性があります。
高齢者向けの靴には、着脱しやすいよう足入れ部分が広く開くものや、甲を面ファスナーで閉じるタイプなどもあるため、靴そのものを見直すことも考えましょう。
靴を履く介助を減らせる場合がある
高齢者が自分で靴を履けず、外出するたびに家族がしゃがんでかかとを直している場合には、長い靴べらによって本人が自分でできる動作を増やせる可能性があります。
テクノエイド協会では、靴べらなどを下肢や手指の機能を補う用具として扱っており、選択時には現在の身体機能を把握することが重要としています。単に家族が履かせるのではなく、用具を使えば本人がどこまでできるかを見ることも大切です。
- 履き口は自分で開ける
- 靴べらは自分で持つ
- 足を靴へ入れる
- 面ファスナーを閉じる
- 最後だけ家族が確認する
- できる部分を残す
例えば、靴ひもを結ぶことは難しくても、面ファスナー式の靴と長い靴べらを組み合わせれば、本人だけで着脱できる場合があります。
すべてを一人で行うことを目標にする必要はありませんが、本人が無理なくできる動作を残すという視点で靴べらと靴を選ぶと、毎日の外出準備を続けやすくなります。
玄関に置いておけばすぐ使える
長い靴べらは携帯には向かない反面、自宅の玄関へ常設する用途では使いやすい道具です。柄が長いため、フックへ掛けたり専用スタンドへ立てたりすれば、腰を曲げずに取れる位置へ置くことができます。
高齢者向けでは、靴べらそのものの使いやすさだけでなく、「どこに置いてあるか」「取るためにかがまなくてよいか」も重要です。床へ寝かせて置くと拾うために前屈が必要になり、通路へ出ていればつまずく原因にもなります。
| 置き場所 | 使いやすさ | 注意点 |
|---|---|---|
| 壁のフック | 取りやすい | 手の届く高さにする |
| 専用スタンド | 戻しやすい | 通路を塞がない |
| 玄関収納 | 見た目が整う | 扉の操作が必要 |
| 床置き | 手軽 | つまずきやすい |
毎回同じ場所へ戻すようにすると、高齢者本人も探す必要がなくなります。靴を履く椅子の横など、座った状態から手を伸ばせる場所へ設置する方法も便利です。
本人が長い靴べらを杖のように握って体重をかけないよう、用途についても確認しておきましょう。一般的な靴べらは身体を支える手すりや杖ではないため、立ち上がりの支えとして使用するのは避ける必要があります。
高齢者向けの長い靴べらは長さと持ちやすさで選ぼう
ロングタイプの靴べらにはさまざまな長さや素材があり、高齢者用として一律に適した製品が決まっているわけではありません。
立って使う人には十分な長さが必要ですが、椅子へ座って使う人では長すぎると先端を靴へ合わせにくくなる場合があります。また、手指の力が弱ければ持ち手の太さや滑りにくさも重要です。
本人が普段どの姿勢で靴を履いているのかを確認し、身体を大きくかがめず自然に操作できるものを選びましょう。
使用姿勢に合う長さを選ぶ
靴べらの長さを決めるときは、身長だけで選ばず、実際に使用する姿勢を基準にすることが重要です。立って使う人と玄関椅子へ座って使う人では、手から靴のかかとまでの距離が異なります。
理想は、普段の姿勢で持ち手を握ったときに、腰や背中を大きく丸めなくても先端がかかとへ届く長さです。
- 立位なら長めを検討
- 座位なら操作性も重視
- 身長だけで決めない
- 前かがみの程度を見る
- 先端が見えるか確認する
- 実際の靴で試す
非常に長い製品を選べば必ず楽になるわけではなく、長すぎると狭い玄関で取り回しにくく、靴のかかとへ先端を入れる細かな操作が難しくなることがあります。
可能であれば本人が実際に使用し、靴べらを取るところから靴を履いて元へ戻すところまで一連の動作を確認して選びましょう。
持ち手の握りやすさを確認する
高齢者が長い靴べらを使う場合、先端部分だけでなく持ち手の形状も重要です。テクノエイド協会でも、靴べらを操作するには手指や肩などに筋力や関節可動域が必要としています。
細く滑りやすい柄では握り続けることが難しい人もいるため、手の大きさや握力に合う形状を確認しましょう。
| 確認点 | 選び方 | 理由 |
|---|---|---|
| 太さ | 握りやすい | 保持しやすくする |
| 表面 | 滑りにくい | 手から落ちにくい |
| 形状 | 手に合う | 方向を調整しやすい |
| 重量 | 重すぎない | 腕の負担を減らす |
| 穴やひも | 収納しやすい | 定位置へ戻しやすい |
指の関節に痛みがある場合には、細い柄を強く握らなければ操作できない製品は使いにくい可能性があります。
家族が握りやすいかどうかではなく、実際に使用する本人が軽い力で保持でき、先端の向きを変えられるかを確認することが大切です。
軽さと丈夫さのバランスを見る
長い靴べらは短いものより全体が大きくなるため、素材によっては重量も増えます。腕や肩の筋力が低下している高齢者では、重い靴べらを毎回持ち上げて操作することが負担になる場合があります。
一方で、軽さだけを優先して柔らかすぎるものを選ぶと、靴へ足を入れるときに先端が大きく曲がり、かえって操作しにくい場合があります。
- 片手で持てる重量
- 先端が曲がりすぎない
- 柄がしなりすぎない
- 手から滑りにくい
- 靴へ差し込みやすい
- 毎日扱える重さ
木製、金属製、樹脂製など素材によって重さや手触りは異なりますが、素材名だけで良し悪しを判断する必要はありません。
高齢者本人が片手で持った状態を保てるか、靴のかかとへ差し込むときに余計な力が必要ないかを優先して選びましょう。
長い靴べらを安全に使うには玄関の環境も重要
高齢者が長い靴べらを使う場合、道具だけを用意すれば十分とは限りません。靴を履くときの姿勢が不安定であれば、前かがみや片足立ちによって転倒する可能性があります。
特に玄関には上がり框や靴、傘などがあり、足元が狭くなりやすいため、本人が安全に靴を着脱できるスペースを確保することが大切です。
長い靴べら、安定した椅子、必要に応じた手すりなどを組み合わせ、靴を履く一連の動作を無理なく行える環境を作りましょう。
安定した椅子を用意する
立ったまま靴を履くとふらつく高齢者には、長い靴べらと一緒に玄関用の椅子を用意すると安全性を高めやすくなります。座位なら両足を床へ近づけた状態で靴を操作でき、片足立ちになる時間を減らせます。
椅子は何でもよいわけではなく、本人が立ち座りしやすく、座ったときにぐらつかないことが重要です。
- ぐらつかない
- 座面が低すぎない
- 立ち上がりやすい
- 必要なら肘掛けがある
- 玄関の通路を塞がない
- 足元を十分に確保する
低すぎる椅子では座った後に立ち上がれなくなる場合があり、軽すぎる椅子では腰掛けた際に動く可能性があります。
本人が普段履く靴と長い靴べらを使い、座る、靴を履く、立ち上がるという一連の動作が無理なくできるか確認しましょう。
靴べらを手すり代わりにしない
長い靴べらは杖のような形に見えることがありますが、一般的な靴べらは体重を支える目的で作られたものではありません。立った状態で靴べらへ強く体重をかける使い方は避けましょう。
靴を履くときに支えが必要な人には、靴べらとは別に固定された手すりや安定した椅子などを検討する必要があります。
| 道具 | 主な役割 | 注意点 |
|---|---|---|
| 長い靴べら | 靴の着脱補助 | 体重をかけない |
| 玄関椅子 | 座位を確保 | 安定性を確認 |
| 手すり | 身体を支える | 適切に設置する |
| 杖 | 歩行を補助 | 用途に沿って使う |
高齢者が靴べらを床へ突いて身体を支えているなら、「長い靴べらが便利」というだけでなく、靴を履く姿勢そのものが不安定になっている可能性があります。
家族が実際の動作を確認し、必要なら理学療法士や作業療法士などへ玄関での靴の着脱方法を相談しましょう。
置き場所を決めておく
長い靴べらはサイズが大きいため、玄関の床へ置きっぱなしにすると邪魔になることがあります。特にすり足で歩く高齢者では、小さな物や段差でも足を引っ掛ける可能性があるため、通路へ物を置かないことが大切です。
靴べらは壁のフックや専用スタンドなどを利用し、本人が立った姿勢または椅子へ座った姿勢から簡単に取れる場所へ収納しましょう。
- 床へ寝かせない
- 毎回同じ場所へ戻す
- 手の届く高さへ置く
- 玄関動線を塞がない
- 杖と混同しない場所にする
- 暗い場所を避ける
高い位置へ掛けると取るために腕を大きく上げる必要があり、低すぎると腰を曲げなければなりません。本人が自然に手を伸ばせる高さを確認してください。
靴を履く椅子の横へ靴べら用のフックを設けるなど、使う場所と収納場所を近づけると、出かけるたびに探す必要もなくなります。
靴べらを使っても履きにくいなら靴そのものを見直そう
長い靴べらを使っても足が靴へ入らない場合には、靴べらの問題ではなく、靴の形やサイズが現在の足に合っていない可能性があります。
高齢になると足の状態や歩き方が変化することがあり、以前から履いている靴が現在も使いやすいとは限りません。足がむくむ人では、時間帯によって履きにくさが変わることもあります。
靴べらで強く押し込むことを繰り返すのではなく、履き口の広さや留め具、重量、足への圧迫なども確認しましょう。
履き口が大きく開く靴を選ぶ
高齢者が靴を履きにくい場合には、足を入れる開口部が十分に広がる靴を選ぶと着脱しやすくなります。テクノエイド協会でも、高齢者や障害者向けの靴について、着脱しやすいよう足入れ部分が広く開くデザインや、甲を面ファスナーで閉じるタイプなどを紹介しています。
長い靴べらを使っても、履き口が狭い靴へ足を押し込む必要があれば、結局大きな力が必要になります。
- 履き口が大きく開く
- 甲を調整できる
- 面ファスナーを使える
- 足先を圧迫しにくい
- かかとが安定する
- 本人が着脱しやすい
着脱のしやすさだけを優先して大きすぎる靴を選ぶと、歩行時に足が靴の中で動いてしまうことがあります。
靴べらで履きやすいことに加え、履いた後に足が適切に固定され、歩きやすいことまで確認しましょう。
靴ひもが負担なら留め方を変える
長い靴べらで足を入れることはできても、最後に靴ひもを結べない高齢者もいます。指先の細かな操作が難しくなっている場合には、靴べらだけでは着脱の問題をすべて解決できません。
その場合には、面ファスナーやゴムなどを利用して着脱しやすくした靴を検討する方法があります。
| 留め方 | 特徴 | 確認点 |
|---|---|---|
| 靴ひも | 細かく調整できる | 結べるか |
| 面ファスナー | 開閉しやすい | 手で操作できるか |
| ゴム式 | 着脱しやすい | 足を固定できるか |
| ファスナー | 大きく開けやすい | つまみを扱えるか |
本人が靴ひもを結べないからといって、常に緩めた状態で履くことは避けたほうがよいでしょう。歩行中に足が靴の中で安定しない可能性があるためです。
「自分で履けること」と「履いた状態で歩きやすいこと」の両方を満たせる靴を探しましょう。
むくみや足の痛みも確認する
以前は長い靴べらを使えば履けていたのに、最近は足がなかなか入らない場合には、足のむくみや痛みなど身体側の変化も確認しましょう。
テクノエイド協会では、循環障害などで足がむくんだり、けがなどで腫れたりした場合に、一般的な靴を履くことが難しくなることがあるとして、前方が大きく開くタイプなどを紹介しています。
- 足がむくんでいる
- 左右で大きさが違う
- 赤くなっている
- 靴ずれがある
- 指が圧迫されている
- 履くと痛みがある
足が入らないからと靴べらを強く押し込み続けると、皮膚へ負担をかけたり靴の中で足を圧迫したりする可能性があります。
急な腫れや強い痛み、傷などがある場合には靴の買い替えだけで済ませず、必要に応じて医療機関へ相談しましょう。
長い靴べらは本人ができる動作を残すためにも役立つ
高齢者が靴を履きにくくなると、家族が毎回靴を履かせる方法を選びがちですが、道具や環境を変えることで本人自身ができる場合があります。
長い靴べらは比較的単純な道具ですが、腰を曲げる範囲や手を伸ばす距離を減らせるため、身体機能に合えば日常生活の小さな負担を減らすことにつながります。
一方、靴べらを操作するための手指や肩の動きも必要なので、本人の状態によっては別の自助具や介助方法を検討する必要があります。
本人がどこまでできるか確認する
靴を履けないと感じたときは、一連の動作を細かく分けて、どの部分が難しいのか確認しましょう。靴のところまで歩ける、椅子へ座れる、足を靴へ入れられるものの、かかとだけ直せないのであれば、長い靴べらが有効な可能性があります。
反対に、靴の履き口を開けられない、足を持ち上げられない、靴べらを握れない場合には、長さを変えるだけでは解決しません。
- 椅子へ座れるか
- 靴を手元へ動かせるか
- 履き口を開けられるか
- 足を靴へ入れられるか
- 靴べらを操作できるか
- 履いた後に立てるか
できない部分だけを家族や道具で補うことで、本人が行える動作まで介助してしまうことを避けられます。
外出のたびに介助が必要になっている場合は、長い靴べら、玄関椅子、着脱しやすい靴を組み合わせて試してみましょう。
手や肩が動かしにくい場合は別の方法も考える
テクノエイド協会では、靴べらの使用には操作する手指や肩などの筋力や関節可動域が必要だとしています。そのため、柄を長くしただけで全員が使いやすくなるわけではありません。
肩を動かしにくい人では、長い柄の先端を靴のかかとへ正確に合わせることが難しい場合があります。
| 困りごと | 確認する点 | 考え方 |
|---|---|---|
| 握れない | 持ち手 | 握りやすい形を検討 |
| 肩が動かない | 操作範囲 | 姿勢を変更 |
| 先端を合わせにくい | 長さ | 長すぎないか確認 |
| 片手が使いにくい | 靴の留め具 | 簡単な靴を検討 |
| 動作全体が難しい | 身体機能 | 専門職へ相談 |
本人が何度試しても操作できない場合には、長い靴べらを無理に使わせるのではなく、別の自助具や靴の変更を検討しましょう。
リハビリテーションを利用している場合には、作業療法士などへ普段の靴と玄関での着脱方法を見てもらうと、本人に合う方法を探しやすくなります。
急に靴を履けなくなった場合は変化を確認する
以前は問題なく靴を履けていた高齢者が、急に足を靴へ入れられなくなった場合には、単に長い靴べらを購入するだけで済ませず、身体状態に変化がないか確認しましょう。
腰や膝の痛み、足の腫れ、筋力やバランスの変化などによって、靴を履く動作が難しくなっている可能性があります。
- 急に前かがみになれない
- 片足だけ動かしにくい
- 足が腫れている
- 強い痛みがある
- 歩き方も変わった
- 転倒後から履きにくい
特に突然片側の手足が動かしにくくなった、言葉が出にくい、顔の左右に違いがあるなど急な症状を伴う場合には、靴の着脱だけの問題と考えず速やかな医療対応を検討する必要があります。
徐々に動作が難しくなっている場合でも、靴べらで補える範囲なのか、靴や玄関環境まで変更したほうがよいのかを家族や専門職と確認するとよいでしょう。
長い靴べらでかがむ負担を減らして安全に靴を履こう
高齢者が短い靴べらを使いにくい場合には、ロングタイプへ変更することで、腰や膝を深く曲げずに靴を履きやすくなることがあります。特に足元まで手が届きにくい人、前かがみになるとつらい人、靴のかかとを毎回指で引っ張っている人には試しやすい自助具です。
ただし、高齢者向けの長い靴べらは、単純に最も長い製品を選べばよいわけではありません。立って使うのか玄関椅子へ座って使うのかを決め、普段の姿勢から大きくかがまずかかとへ届き、本人が先端を無理なく操作できる長さを選びましょう。持ち手の握りやすさ、重量、滑りにくさなども確認が必要です。
立ったまま靴を履くと身体がふらつく高齢者では、長い靴べらだけで解決しようとせず、安定した玄関椅子を用意して座って履く方法も検討してください。長い靴べらを杖や手すりの代わりにして体重をかけるのは避け、身体を支える必要がある場合には別途適切な手すりなどを考えることが大切です。
また、長い靴べらを使っても足を強く押し込まなければ履けない場合は、靴そのものが現在の足に合っていない可能性があります。履き口が大きく開く靴や面ファスナー式など着脱しやすい靴も候補にし、履いた後に足が適切に固定されて歩きやすいことまで確認しましょう。
靴べらは玄関の床へ置きっぱなしにせず、本人が自然に手を伸ばせる位置へ掛けたりスタンドへ収納したりすると使いやすくなります。毎回同じ位置へ置けば探す負担も減り、通路へ落ちた靴べらにつまずく危険も避けやすくなります。
高齢者が自分で靴を履けなくなったからとすぐにすべてを介助するのではなく、「かかとへ手が届かないだけなのか」「靴が開かないのか」「足を動かしにくいのか」を確認してみましょう。長い靴べらや着脱しやすい靴、玄関椅子などを本人の状態に合わせて組み合わせることで、自分でできる動作を残しながら外出準備の負担を減らせます。


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