高齢者と一緒に暮らしていると、「最近テレビの音が大きくなった」「別の部屋までテレビの音が響いてくる」「家族にはうるさいのに本人はちょうどよいと言う」と感じることがあります。
テレビの音量が以前より大きくなった場合、単なる好みや習慣ではなく、加齢に伴う聞こえの変化が関係している可能性があります。
加齢性難聴は一般にゆっくり進むため本人が変化を自覚しにくく、家族からテレビの音量や聞き返しを指摘されたことが、聞こえの低下に気づくきっかけになる場合があります。
一方で、テレビの音が大きいという一つの出来事だけから難聴だと決めつけることもできず、番組の音声、部屋の環境、テレビとの距離、耳垢などさまざまな要因を確認する必要があります。
ここでは、高齢者のテレビの音が大きくなる主な理由、加齢性難聴で起こりやすい聞こえ方の変化、家庭で試せるテレビの音量対策、補聴器や手元スピーカーを考える際のポイント、耳鼻咽喉科へ相談したいケースまで詳しく紹介します。
高齢者のテレビの音が大きいのはなぜ?
高齢者のテレビの音が以前より大きくなったとき、まず考えたいのが加齢に伴う聴力の変化で、厚生労働省も「家族からテレビの音が大きいと指摘される」ことを聞こえにくさへ気づくポイントとして紹介しています。
ただし、聞こえにくさは単純にすべての音が小さく感じられるだけではなく、特定の音域や言葉を聞き分けにくくなることもあるため、テレビの音量を上げても「音は聞こえるのに何を言っているのかわからない」という状態になる場合があります。
本人と家族で適切だと感じる音量が大きく違うようになったら、音量の数字だけで争うのではなく、どのような場面で聞き取りにくいのかを確認することが重要です。
加齢による聴力低下が考えられる
年齢を重ねると聴覚に関係する器官などが変化し、徐々に聞こえにくくなることがあり、こうした加齢に伴う難聴は加齢性難聴や老人性難聴と呼ばれます。
厚生労働省の2024年の広報では、加齢性難聴は緩やかに進行するため初期には本人が気づかないことが多く、テレビの音量が以前より大きくなることが日常生活で気づくポイントの一つとして挙げられています。
毎日テレビを見ている本人は少しずつ音量を上げているため変化を感じにくい一方、久しぶりに訪れた家族が「こんなに大きな音で見ていたかな」と気づくケースも考えられます。
テレビだけでなく普段の会話で聞き返すことが増えた、インターホンなどの電子音に気づきにくくなった、大勢での会話を聞き取りにくそうにしているといった変化が重なっていないかも確認しましょう。
テレビの大音量を単なる高齢者の癖として片付けず、以前との変化が明らかな場合には聞こえを確認するきっかけとして考えることが大切です。
本人が気づいていないことがある
加齢による聞こえの低下は急に起こるとは限らず、長い時間をかけて少しずつ進むことがあるため、本人に「耳が遠くなった」という自覚がない場合があります。
厚生労働省の2024年の広報でも、本人には難聴の自覚が少ないものの、家族からテレビの音が大きいと指摘されたことをきっかけに耳鼻咽喉科を受診し、検査で難聴が確認されるケースが紹介されています。
- テレビの音量が上がった
- 聞き返しが増えた
- 話しかけても反応しないことがある
- 電子音に気づきにくい
- 大勢での会話が苦手になった
そのため家族から「耳が遠くなった」と突然決めつけられると、本人としては納得できず、テレビの音量をめぐって口論になることもあります。
本人の感覚を否定するより、「前よりテレビの数字が上がっているみたいだから、一度聞こえを確認してみよう」というように、具体的な変化を共有するほうが受診や対策の話を進めやすくなります。
高い音を聞き取りにくくなる
加齢性難聴では一般に高い周波数の音から聞こえにくくなる傾向があり、すべての音が同じように小さく感じられるわけではありません。
そのためテレビの低い音や大きな効果音は聞こえているのに、会話に含まれる一部の音を区別しにくくなり、「テレビそのものは聞こえるがセリフがわからない」という状態になることがあります。
| 本人の訴え | 考えられる状態 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 声が小さい | 聴力低下の可能性 | 会話も聞きにくいか |
| 何を言ったかわからない | 言葉の識別が難しい可能性 | 音量を上げても改善するか |
| 電子音に気づかない | 高い音が聞きにくい可能性 | チャイムなども確認 |
| 雑音があると聞こえない | 音の聞き分けが難しい可能性 | 静かな場所との違い |
この状態ではテレビのボリュームを上げると効果音や音楽まで大きくなり、家族には非常にうるさいのに本人はまだセリフを聞き取りにくいという状況が生まれることがあります。
単に音量を上げ続けるのではなく、テレビの音声設定や字幕なども活用し、それでも日常会話まで聞き取りにくい場合には聴力検査を検討しましょう。
言葉を聞き分けにくい場合がある
高齢者の聞こえについて考えるときには、「音が聞こえるか」と「言葉の内容を正確に聞き取れるか」を分けて考えることが重要です。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、感音性難聴では小さな音が聞こえにくいだけでなく、十分大きな音でも語音を聞き誤ることがあると説明しています。
そのため本人がテレビの音量を上げている理由は、単純に音そのものを大きくしたいのではなく、ドラマやニュースで「何と言っているのか」を理解するためという場合があります。
ところが音量だけを大幅に上げても言葉の聞き取りが十分に改善しない場合があり、さらにボリュームを上げるという悪循環になりやすくなります。
「こんなに大きいのになぜ聞こえないの」と考えるのではなく、聞こえる音の大きさと会話の聞き取りやすさは必ずしも同じではないことを理解して対応しましょう。
周囲の雑音が影響する
テレビを見る部屋で換気扇、エアコン、掃除機などの音が同時に発生していると、テレビの音声が周囲の音へ紛れ、聞き取りにくくなる場合があります。
特に複数の人が同時に話している環境では、聞きたい声だけを選んで聞くことが難しくなり、テレビの音量を上げなければ内容がわからないと感じることがあります。
- 換気扇の音
- エアコンの運転音
- 家族同士の会話
- キッチンの作業音
- 屋外から入る騒音
いつもテレビが大音量なのではなく、家族が集まる夕食時だけ音量が上がるのであれば、本人の聴力だけではなく周囲の雑音が関係している可能性もあります。
まず静かな環境と普段の環境で必要な音量に差があるかを確認すると、部屋の環境を整えることで改善できる部分があるか判断しやすくなります。
テレビとの距離が影響する
同じ音量設定でも、テレビから離れた場所で見るほど本人の位置に届く音の状態は変わるため、座る場所とテレビの距離も確認したいポイントです。
広いリビングでテレビから遠く離れたソファに座っている場合、本人が聞き取りやすくしようとしてテレビ本体の音量を上げると、テレビの近くにいる家族には大きすぎる音になります。
家具の配置を大幅に変更する必要はありませんが、本人がいつも座る位置とテレビのスピーカーの向きを確認し、音声が届きにくい配置になっていないかを見ることは有効です。
テレビの近くへ移動すると明らかに聞き取りやすくなるのであれば、後述する手元スピーカーなど、本人の近くから音声を届ける機器が役立つ場合があります。
ただしテレビへ極端に近づかなければ聞こえない場合や、近づいても会話を聞き取りにくい場合には、配置の問題だけでなく聴力そのものを確認しましょう。
耳垢など別の原因も考えられる
高齢者の聞こえにくさをすべて加齢性難聴と考えるのは適切ではなく、耳垢が詰まっているなど別の原因によって聞こえが悪くなっている場合もあります。
厚生労働省の高齢者ケアに関する資料でも、聴力を観察する視点の一つとして耳垢がたまっていないかを確認することが挙げられています。
| 変化 | 確認したいこと | 対応 |
|---|---|---|
| 徐々に聞こえにくい | 加齢性難聴など | 耳鼻咽喉科で検査 |
| 耳が詰まった感じ | 耳垢など | 耳鼻咽喉科へ相談 |
| 片耳だけ聞こえにくい | 左右差の原因 | 自己判断せず受診 |
| 急に聞こえにくい | 急性の病気 | 早めに受診 |
耳垢が原因と思っても、綿棒などを耳の奥まで入れて無理に取り除こうとすると耳を傷つけたり、耳垢をさらに奥へ押し込んだりする可能性があります。
聞こえの変化が気になる場合には自宅で原因を決めつけず、耳鼻咽喉科で耳の状態と聴力を確認してもらうことが大切です。
番組によって聞き取りやすさが違う
テレビの音量が大きいといっても、すべての番組で同じ音量にしているとは限らず、ニュースは聞こえるのにドラマでは音量を上げるといった違いが見られることがあります。
番組によって出演者の話し方、背景音楽、効果音、複数人の会話など音声の構成が異なるため、本人にとって言葉を聞き取りやすい番組と聞き取りにくい番組が生じる可能性があります。
- ニュースは聞き取れるか
- ドラマで音量が上がるか
- 音楽番組はどうか
- 字幕があると理解しやすいか
- 静かな場面なら聞こえるか
音量の数字だけを見るより、「ニュースのアナウンサーはわかるけれどドラマの会話がわからない」など具体的な状況を把握すると、聞こえの困りごとを医師などへ説明しやすくなります。
テレビ以外の日常会話や電話、インターホンなどでも同様の聞き取りにくさがあるなら、番組だけの問題とは考えず聴力の確認につなげましょう。
テレビの音が大きいとき家庭でできる対策
テレビの音量が家族には大きすぎる場合、本人に一方的に音量を下げてもらうだけでは、本人が番組を楽しめなくなってしまいます。
重要なのは本人に我慢してもらうことではなく、テレビの音声を本人が聞き取りやすい環境に変えながら、家族にとって必要以上の大音量にならない方法を探すことです。
字幕、音声設定、座る位置、手元スピーカーなど、比較的取り入れやすい方法から試してみましょう。
字幕を活用する
テレビのセリフを聞き取りにくい場合には、対応している番組で字幕を表示すると、聞き取れなかった言葉を文字情報で補えるため内容を理解しやすくなります。
特にニュースの固有名詞、ドラマの小さな声、早口の会話など、音だけでは聞き取りにくい場面を文字で確認できることは大きなメリットです。
- 音量を上げすぎずに済む
- 固有名詞を確認しやすい
- 聞き逃した言葉を補える
- 家族と同じ音量で見やすい
- 音と文字を同時に確認できる
ただし視力が低下している人では字幕が小さく感じられる場合があり、老眼鏡などを使ってもテレビまでの距離では見えにくいこともあります。
字幕だけですべてを解決しようとせず、本人の視力や座る位置も確認しながら、音声を聞きやすくする対策と組み合わせましょう。
テレビの音声設定を見直す
最近のテレビには音声モードや会話を聞き取りやすくする機能が搭載されている機種があり、設定を変更するだけでセリフが聞き取りやすくなる場合があります。
名称はメーカーや機種によって異なりますが、声を強調する設定やニュース・会話向けのモードなどが用意されていないか取扱説明書を確認してみましょう。
| 確認項目 | 目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| 音声モード | 会話を聞きやすくする | 機種で名称が異なる |
| 声の強調 | セリフを目立たせる | 好みに合わせて調整 |
| 字幕 | 文字で内容を補う | 対応番組を確認 |
| スピーカー設定 | 音の届き方を整える | 設置環境も確認 |
高音を単純に強くすれば高齢者全員が聞きやすくなるとは限らず、聞こえ方には個人差があるため、本人が実際に番組を見ながら調整することが大切です。
設定を変更してもテレビ以外の会話を頻繁に聞き返している場合には、テレビ側の調整だけで終わらせず耳鼻咽喉科で聞こえを確認しましょう。
手元スピーカーを検討する
テレビ本体から離れた位置に座っていることが大音量につながっている場合には、本人の近くへ置ける手元スピーカーを利用すると聞き取りやすくなる場合があります。
テレビ本体の音を部屋全体へ大きく響かせるのではなく、本人に近い場所から音声を届けられるため、家族との音量差に困っている家庭では選択肢の一つになります。
- テレビから離れて座っている
- 家族との音量差が大きい
- 字幕だけでは不十分
- 操作が簡単な機器を使いたい
- 本人の近くへ音を届けたい
購入する場合には、接続方法、充電の必要性、操作ボタンの大きさ、本人が自分で音量調整できるかなどを確認すると日常的に使いやすくなります。
手元スピーカーは聞こえを補助する便利な機器ですが、難聴の原因を診断するものではないため、日常会話にも支障がある場合には医療機関への相談も必要です。
テレビ以外の聞こえも確認する
テレビの音量が上がったときに重要なのは、テレビだけが聞き取りにくいのか、それとも日常生活全体で聞こえにくさが生じているのかを確認することです。
厚生労働省は聞こえにくさのサインとして、テレビの音量だけでなく、普段の生活で聞き取れなかったと感じることなどにも注意を促しています。
複数の場面で変化が見られるなら、本人に自覚がなくても一度聴力検査を受けることを検討しましょう。
会話で聞き返しが増えていないか
テレビの音量と一緒に確認したいのが家族との会話で、「えっ」「何?」と聞き返す回数が以前より増えていないかを振り返ってみましょう。
聞き取りにくさがある人は、内容がわからなくても周囲の状況から推測して返事をすることがあるため、本人が会話できているように見えても一部を聞き逃している可能性があります。
- 聞き返す回数が増えた
- 話がかみ合わないことがある
- 後ろから呼んでも反応しない
- 複数人の会話を避ける
- 聞き間違いが増えた
家族が聞こえるように毎回大声で話すようになると、本人には怒られているように感じられることもあるため、声量だけで解決しようとしないことが大切です。
聞き返しが継続的に増えているなら、本人の性格や注意不足と考えず、テレビの大音量と合わせて聞こえの変化として捉えましょう。
電子音への反応を確認する
インターホン、電話の呼び出し音、電子レンジなどの電子音へ以前より気づきにくくなっていないかも、聞こえの変化を知る手掛かりになります。
厚生労働省も加齢性難聴に気づくポイントとして、インターホンやリモコン、電子レンジなどの電子音が聞こえにくいことを紹介しています。
| 生活場面 | 確認する変化 | 対応 |
|---|---|---|
| インターホン | 呼び出しに気づかない | 聞こえを確認 |
| 電話 | 呼び出し音を逃す | 音量だけでなく聴力も確認 |
| 電子レンジ | 終了音に気づかない | 生活上の影響を確認 |
| 会話 | 聞き返しが増える | 耳鼻咽喉科へ相談 |
テレビだけなら番組やスピーカーの問題も考えられますが、複数の生活音にも気づきにくくなっているなら聴力低下の可能性をより意識する必要があります。
本人へ一度に多くの項目を問い詰めるのではなく、日常生活の中で家族が自然に変化を観察し、必要なら受診時に伝えられるようにしておきましょう。
外出先の会話も振り返る
自宅では比較的会話できていても、レストラン、病院の待合室、地域の集まりなど周囲に雑音がある場所では話を聞き取りにくくなる人がいます。
静かな一対一の会話では問題が目立たないため、本人も家族も聞こえの変化に気づきにくい場合があります。
- 飲食店で会話しづらい
- 病院の呼び出しを逃す
- 集まりで会話に入りにくい
- 駅の放送がわかりにくい
- 複数人だと聞き取りにくい
厚生労働省の広報でも、大勢での会話、広い会場での話、駅や電車内の案内などは聞こえにくさへ気づく場面として紹介されています。
テレビの音量だけでは判断しにくいときには、こうした生活全体の様子を振り返り、複数の困りごとがあれば聴力検査につなげることが重要です。
補聴器を考える前に知っておきたいこと
テレビの音が大きくなったことから「補聴器を買えば解決するのでは」と考える家族もいますが、最初に行いたいのは本人の聞こえの状態と原因を確認することです。
補聴器は難聴のある人の聞こえを補う重要な機器ですが、どの程度の難聴なのか、左右差があるのか、耳の病気がないのかなどによって対応が異なります。
自己判断で製品を購入して終わりにするのではなく、耳鼻咽喉科で診察や聴力検査を受け、必要に応じて適切な補聴器相談へ進むことが大切です。
まず耳鼻咽喉科で確認する
厚生労働省は、家族からテレビの音が大きいと指摘されるなど聞こえにくさがある場合には、早めに耳鼻咽喉科を受診することが重要だと案内しています。
受診することで聴力を客観的に調べられるだけでなく、耳垢など処置できる原因がないか、ほかの耳の病気が隠れていないかも確認できます。
- 耳の中の状態を確認する
- 聴力検査を受ける
- 左右差を確認する
- 難聴の種類を確認する
- 補聴器の必要性を相談する
本人が「テレビだけの問題だから病院へ行くほどではない」と考えている場合には、テレビの音量だけで説得するのではなく、聞こえの健康診断という感覚で検査を提案する方法もあります。
特に急に聞こえなくなった場合や片耳だけ明らかに聞こえにくくなった場合には、加齢のせいと考えて様子を見続けず早めに耳鼻咽喉科へ相談してください。
補聴器は調整が重要になる
補聴器は周囲の音を単純にすべて同じ大きさへ増幅するだけの機器ではなく、本人の聴力や使用環境などに合わせた調整が重要になります。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、感音性難聴では大きい音を強く感じたり、十分に大きくしても語音を聞き誤ったりする特徴があることを説明しており、単純に大音量にすればよいわけではありません。
| 確認項目 | 理由 | 相談先 |
|---|---|---|
| 聴力 | 必要な補正を把握する | 耳鼻咽喉科 |
| 耳の病気 | 治療の必要性を確認 | 耳鼻咽喉科 |
| 使用環境 | 生活に合わせて調整 | 補聴器の専門家 |
| 装用後の聞こえ | 継続的に調整する | 専門家へ相談 |
購入して一度設定したら終わりとは考えず、実際の生活でどのように聞こえるかを確認しながら調整していくことが大切です。
「テレビを聞きたい」「家族との会話を聞き取りたい」「外出先で困っている」など具体的な目的を伝えると、生活に合わせた相談を進めやすくなります。
認知機能との関連を正しく理解する
難聴について調べると認知症との関係を目にすることがありますが、「テレビの音が大きいから認知症になる」といった単純な因果関係として理解するのは適切ではありません。
国立長寿医療研究センターは、耳の聞こえにくさは認知機能の低下と関連するとされ、難聴がある人では認知症発症リスクが高くなることを紹介しています。
- 難聴と認知機能には関連が報告されている
- テレビの大音量だけで認知症とは判断できない
- 聞こえにくさを放置しないことが大切
- 必要に応じて補聴器を検討する
- 社会的な会話を保つことも重要
同センターは補聴器の使用によって認知機能低下を遅らせられる可能性にも言及していますが、個人について補聴器を使えば認知症を防げると断定できるものではありません。
認知症への不安を過度にあおるのではなく、聞こえにくさがあるなら日常生活のコミュニケーションを保つという観点からも適切な評価と対応を受けることが大切です。
家族がテレビの大音量に困ったときの接し方
高齢者本人には音が大きいという感覚がない場合、家族が「うるさいから下げて」と言うだけでは本人にとってはテレビが聞こえなくなるため、双方の不満が大きくなりやすくなります。
また、難聴は本人が自覚しにくい場合があり、「耳が遠くなった」と決めつける言い方では受診を拒否されることもあります。
音量の争いとして考えるのではなく、本人がテレビや会話を楽しめる聞こえ方を一緒に探すという姿勢で対応しましょう。
本人を責めない
テレビの音が毎日大きいと家族にとってストレスになりますが、本人は周囲を困らせようとして音量を上げているわけではなく、その音量でなければ内容を理解しにくい可能性があります。
「また大きくしている」「耳が遠いんだから」と責めると、本人が聞こえの変化を認めたくなくなり、受診や補聴器の相談を避けるきっかけになることがあります。
- 大声で責めない
- 年齢だけを理由にしない
- 具体的な変化を伝える
- 本人の困りごとを聞く
- 一緒に対策を考える
「前は音量20くらいで見ていたけれど最近は30くらいになっているね」など、可能であれば具体的な変化を穏やかに共有すると話し合いやすくなります。
本人がテレビ以外では困っていないと言う場合にも、その意見を否定せず、字幕や音声設定など負担の少ない方法から試すとよいでしょう。
家族だけが我慢し続けない
本人に聞こえる音量を優先して家族が大音量を我慢し続ける方法も、長期的には良い解決策とはいえません。
家族が同じ部屋で会話しにくい、別室まで音が響く、夜間に近隣への音漏れが心配といった状況では、テレビ本体の音量を上げる以外の方法を検討する必要があります。
| 困りごと | 試したい方法 | 次の対応 |
|---|---|---|
| セリフが不明瞭 | 音声設定・字幕 | 聞こえを確認 |
| テレビから遠い | 座る位置・手元スピーカー | 環境を調整 |
| 家族との音量差 | 個別に音を届ける | 補助機器を検討 |
| 会話も聞きにくい | 聴力検査 | 耳鼻咽喉科へ相談 |
家族と本人のどちらか一方が我慢するのではなく、聞き取りやすさを維持しながら部屋全体の音量を抑えられる方法を探すことがポイントです。
家庭内で解決策が見つからず、テレビ以外にも聞こえの問題があるなら、専門家へ相談することで本人に合った方法を検討しやすくなります。
受診につながる伝え方を考える
高齢者本人が聞こえに困っていない場合には、「難聴だから病院へ行こう」と言われても受診する必要性を感じられないことがあります。
そのような場合は、テレビの音量だけでなく、最近聞き返すことが増えた、インターホンに気づかないことがあったなど具体的な出来事を伝える方法があります。
- 聞こえを一度測ってみよう
- 耳の状態も見てもらおう
- テレビを楽に見られる方法を相談しよう
- 耳垢などがないか確認しよう
- 家族も一緒に説明を聞こう
「年だから仕方ない」と本人も家族も考えてしまうと、治療できる原因や補聴によって改善できる困りごとを見逃す可能性があります。
厚生労働省も聞こえにくさを感じたり家族からテレビの音が大きいと指摘されたりした場合の早めの耳鼻咽喉科受診を勧めているため、気になる変化が続くなら相談してみましょう。
テレビの音量の変化を聞こえを見直すきっかけにしよう
高齢者のテレビの音が以前より大きくなった場合には、本人の好みや癖だけで片付けず、加齢に伴う聴力低下を含めた聞こえの変化がないか確認することが大切です。
加齢性難聴は徐々に進行して本人が自覚しにくいことがあり、テレビの音量が上がった、聞き返しが増えた、インターホンなどの電子音に気づきにくくなった、大勢の会話を避けるようになったといった日常生活の変化が発見のきっかけになります。
家庭では字幕やテレビの音声設定を活用し、周囲の雑音を減らしたり、必要に応じて手元スピーカーを使ったりすると、テレビ本体の音を大幅に上げずに本人の聞き取りやすさを改善できる場合があります。
ただし、テレビだけでなく家族との会話や電話、電子音なども聞き取りにくくなっている場合や、片耳だけ聞こえにくい、急に聞こえ方が変わったといった場合には、自己判断で音量を上げ続けず耳鼻咽喉科で耳の状態と聴力を確認することが重要です。
家族も大音量を我慢し続けたり本人を責めたりするのではなく、「テレビをもっと楽に楽しむために聞こえを確認しよう」という視点で話し合い、必要に応じて聴力検査や補聴器などの専門的な相談につなげていきましょう。


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