高齢者が服のボタンを留めにくいときの工夫|着替えを楽にする方法

暮らしの工夫
※イメージとして作成した画像です

高齢者がシャツやパジャマのボタンを留められないようになると、本人は毎朝の着替えに時間がかかり、家族も「全部手伝ったほうがよいのか」「ボタンのない服へ替えるべきなのか」と迷うことがあります。

ボタンを留める動作は、指先で小さなボタンをつまみ、反対の手でボタン穴を支え、位置を合わせながら穴へ通すという細かな操作が必要になるため、握力だけでなく指先の動かしやすさ、感覚、視力、肩や腕の動きなどが変化すると難しくなることがあります。

厚生労働省の資料でも、更衣を助ける自助具の例としてボタン掛けが挙げられており、公益財団法人テクノエイド協会も、手指に障害がある人がボタンを留めるために使う道具としてボタンエイドを紹介しているため、本人だけで通常のボタン操作を続けることにこだわる必要はありません。

対策としては、ボタンエイドを使うだけでなく、大きなボタンの服を選ぶ、前開き部分を面ファスナーやスナップボタンなど扱いやすい仕様へ変える、座って着替える、着る順番を固定するといった方法があり、本人の困り方によって適した工夫は変わります。

ここでは、高齢者がボタンを留められないときに試したい具体的な対策から、ボタンエイドの使い方や選び方、服を選び直すポイント、家族が手伝うときの注意点、急に手が動かしにくくなった場合の対応まで、本人の力を生かしながら着替えを楽にする方法を紹介します。

高齢者がボタンを留められないときの対策

高齢者がボタンを留められない場合には、最初から着替え全体を家族が代わりに行うのではなく、どの工程が難しいのかを確認して負担の大きい部分だけを簡単にすることが大切です。

ボタンをつまめない人と、ボタンは持てるものの穴へ通せない人では必要な対策が異なり、片手が使いにくい人や肩が上がりにくい人では衣服そのものを変更したほうが着替えやすくなる場合もあります。

ボタンエイドなどの自助具、大きなボタン、スナップボタンや面ファスナーを利用した衣服などを候補にしながら、本人が安全に続けられる方法を探しましょう。

着替えは毎日行う動作なので、一回だけできる方法ではなく、朝や入浴後など疲れているときにも無理なく繰り返せるかという視点が重要です。

ボタンエイドを使う

指先で小さなボタンをつまんで穴へ通すことが難しい高齢者には、ボタンエイドと呼ばれる自助具を利用する方法があります。

テクノエイド協会では、ボタンエイドを手指に障害がある人がボタンを留めるための道具として紹介しており、先端をボタン穴へ差し込み、ボタンへ引っ掛けて穴から引き出す仕組みが基本です。

厚生労働省の自助具に関する資料でも、更衣を助ける代表的な自助具としてボタン掛けが挙げられているため、ボタン操作が難しくなったときに検討できる選択肢の一つです。

通常のボタン留めでは親指と人差し指などで小さなボタンをつまむ必要がありますが、ボタンエイドでは柄を握って操作できるため、指先だけで行う細かな操作を補える場合があります。

  • 柄を握りやすいか
  • 先端を扱えるか
  • ボタン穴へ入れられるか
  • 反対の手で服を支えられるか
  • ボタンの大きさに合うか
  • 手順を覚えられるか

ただしボタンエイドを使えば誰でも簡単に留められるわけではなく、道具を持つ力や先端を目的の位置へ動かす操作、手順の理解なども必要になります。

本人が使いにくそうな場合は何度も練習を求めるのではなく、作業療法士などへ相談したり、衣服側を変更したりする方法も検討しましょう。

大きなボタンの服を選ぶ

小さなボタンを指先でつまむことが難しいものの、大きな物なら持てる人では、ボタンそのものが大きい衣服へ変更することで着替えやすくなる場合があります。

小さく薄いボタンでは指先を細かく動かす必要がありますが、直径が大きく厚みのあるボタンなら指の腹でつまみやすくなり、ボタンの位置も目で確認しやすくなります。

ただしボタンを大きくするだけでは、ボタン穴がきつい、布地が硬い、ボタン同士の間隔が狭いといった問題が残ることもあるため、衣服全体の扱いやすさを見ることが重要です。

また、テクノエイド協会が紹介する一般的なボタンエイドについても、ボタンの大きさに合わせて先端を選ぶことが示されており、大型で厚手のボタンなどでは使用が難しい場合があります。

確認点選び方
ボタンつまみやすい大きさ
厚み指を掛けやすい
ボタン穴きつすぎない
布地扱いやすい柔らかさ
間隔指を動かしやすい
色位置を見分けやすい

本人が服を選べる場合には、店頭などで一番上だけ試すのではなく、胸元や腹部など位置の異なるボタンも実際に留めてもらうと使いやすさを判断しやすくなります。

大きいほど必ず使いやすいわけではないため、本人が無理なくつまみ、穴へ通せる大きさを基準にしてください。

スナップボタンの服へ替える

通常のボタンを穴へ通す操作が難しい場合には、前開き部分をスナップボタンで留められる衣服へ変更すると着替えの工程を簡単にできる場合があります。

スナップボタンは位置を合わせて押し込むタイプが一般的なので、小さなボタンを指先でつまみ、穴の向きを確認しながら押し込む操作を減らせます。

特に指先の細かな動作が難しいものの、両手で衣服を押さえたり手のひらで押したりできる人では、通常のボタンより扱いやすいことがあります。

一方でスナップが硬い衣服では留めるために強い力が必要になり、外すときに布地を強く引っ張らなければならない場合もあるため、購入前に本人が操作できるか確認しましょう。

  • 軽い力で留まる
  • 位置を合わせやすい
  • 外しやすい
  • 布をつかみやすい
  • 数が多すぎない
  • 本人が仕組みを理解できる

パジャマや部屋着など毎日頻繁に着替える衣服から変更すると、本人が新しい仕組みに慣れやすく、通常のボタンとの違いも比較できます。

スナップ式でも本人が使いにくい場合は、面ファスナーやかぶり式など別の衣服を検討し、特定の留め具へ無理に合わせないことが大切です。

面ファスナーを利用する

ボタンをつまむこともスナップを押すことも難しい場合には、面ファスナーで前を留められる衣服を選ぶと着替えの負担をさらに減らせることがあります。

面ファスナーは左右の位置をある程度合わせて押さえることで留められるため、ボタン穴へ小さな部品を正確に通すような細かな指先の操作が少なくなります。

介護衣料などには、外から見ると一般的なボタンが付いているように見えて、実際の開閉部分には面ファスナーを使用しているタイプもあり、本人が服装の見た目を気にする場合にも候補になります。

ただし面ファスナーは洗濯時にほかの衣類へ引っ掛かったり、繊維やごみが付着して接着しにくくなったりする場合があるため、本人や家族が手入れできるかも確認します。

特徴確認したいこと
細かな操作少なくできる
位置合わせ比較的簡単
外す操作本人の力で可能か
洗濯閉じて洗えるか
手入れごみを除去できるか
見た目本人が納得できるか

衣服を変更するときには、介護する側の使いやすさだけで決めず、本人が着たいと思える色や形、デザインを選ぶことも大切です。

着替えを簡単にする工夫が本人の好みを奪うことにならないよう、本人と一緒に候補を選びましょう。

かぶる服を取り入れる

前開きのシャツを着る必要がない場面では、ボタン自体がないTシャツやトレーナーなど、頭からかぶって着る衣服を増やすことも分かりやすい対策です。

ボタンを一つずつ留める工程がなくなるため、指先の操作に時間がかかる人では朝の着替え時間を大幅に短くできる可能性があります。

ただし、かぶる服は頭や腕を通すために肩を上げる必要があり、肩関節の動きが悪い人や片側の腕を動かしにくい人にとっては、前開きの服より着にくい場合があります。

そのため「ボタンがない服なら簡単」と一律に判断せず、本人が腕を袖へ通し、頭から衣服をかぶり、裾を下ろす一連の動作を行えるか確認してください。

  • 首回りが広め
  • 伸縮性がある
  • 袖へ腕を通しやすい
  • 裾を下ろしやすい
  • 重すぎない
  • 本人が好むデザイン

頭からかぶる動作が難しい人では、ボタン操作を補助した前開きの衣服のほうが適することがあるため、本人の身体状態に合わせることが重要です。

普段着はかぶり式、外出着はボタンエイドを使える前開きというように、場面ごとに服を使い分ける方法もあります。

座って着替える

ボタンを留めることへ集中すると身体がふらつく高齢者では、立ったまま着替えず、安定した椅子やベッドへ座って操作するだけでも安全性を高められます。

ボタンを留めるには視線を胸元や腹部へ向けるため、立位では身体が前へ傾いたり足元への注意が少なくなったりすることがあり、バランスに不安がある人では転倒にも注意が必要です。

座位なら身体を安定させて手元へ集中しやすく、途中で疲れた場合にもそのまま休めるため、時間をかければ自分でボタンを留められる人にも取り入れやすい方法です。

椅子を使う場合はキャスター付きや軽く動く椅子を避け、本人が座ったときに足裏を床へ安定して置ける物を選びましょう。

着替え環境確認点
椅子動きにくい
座面立ち上がりやすい
足元物を置かない
照明手元が見える
衣服手の届く場所へ置く
鏡必要に応じて利用する

着替える場所を毎日同じにして、衣服やボタンエイドを手の届く範囲へ準備しておくと、立ったり歩いたりする回数も減らせます。

本人がボタン操作だけ苦手なら、その部分へ集中できる環境を作ることで自分で着替えられる範囲を残しやすくなります。

留めるボタンの数を減らす

一つ一つのボタンは留められるものの、すべて留め終わるまでに手が疲れてしまう高齢者では、ボタンの数が少ない衣服を選ぶことも負担軽減につながります。

細かな指先の動作を何度も繰り返すと、最初の数個はできても途中から握りにくくなったり、時間がかかって着替えそのものを嫌になったりすることがあります。

パジャマや部屋着であれば、ボタンの数が少ないデザインや上部だけ留めるタイプなどを選び、毎日の着替えで繰り返す細かな作業を減らす方法があります。

外出着でも、上着の内側へ着る服をかぶり式にするなど、全身で操作するボタンの総数を減らすと本人の疲労を抑えられます。

  • ボタン数が少ない
  • 間隔が広い
  • 大きめでつまみやすい
  • 上部だけで開閉できる
  • 着脱手順が少ない
  • 毎日扱いやすい

本人が長年ワイシャツなどを好んで着ている場合は、すべて別の服へ替えるのではなく、家の中だけ扱いやすい服へ変更する方法もあります。

本人の好みを残しながら負担を減らせる部分を探すことが、衣服の工夫を長く続けるポイントです。

難しい部分だけ手伝う

高齢者がボタンを留められなくなったからといって、家族が最初から最後まで着替えを行う必要があるとは限りません。

厚生労働省の要介護認定に関する資料でも、ズボンへ足を通すことは本人が行い、引き上げやボタンを留める動作のみ介助するといった、一連の更衣動作の一部だけを支援する例が示されています。

例えば本人がシャツへ腕を通して前を合わせるところまでできるなら、家族は小さなボタンだけ留めるというように、できない工程へ支援を限定できます。

反対にボタンエイドを使えば自分で留められる人なら、家族は道具を準備して手の届く場所へ置くだけにし、本人の動作を待つ方法もあります。

本人ができること支援の例
服を選べる選択は本人へ任せる
袖を通せる見守る
前を合わせられるボタンだけ手伝う
大きいボタンは可能小さい部分のみ介助
自助具を使える準備だけ行う
脱衣はできる着衣だけ支援する

着替えに時間がかかるからと家族が急いで全部行うと、本人ができる動作を行う機会まで減ってしまうため、時間に余裕があるときは本人のペースを待つことも大切です。

一方で痛みや強い疲労がある日に無理をしてもらう必要はなく、その日の状態によって支援量を変えましょう。

ボタンを留めにくくなる原因を確認しよう

高齢者がボタンを留められなくなったときには、年齢だけを原因と考えず、どの動作で困っているのかを具体的に確認することが重要です。

ボタンをつまめない、指先の感覚が分かりにくい、肩や腕を動かしにくい、ボタン穴が見えにくいなど、原因によって適する自助具や衣服は異なります。

以前から少しずつ時間がかかるようになった場合と、昨日までできていた操作が急にできなくなった場合でも対応は変わるため、変化の時期にも目を向けましょう。

指先を動かしにくい

ボタン留めには、親指と人差し指などでボタンをつまみ、向きを調整しながら穴へ押し込む細かな動作が必要になります。

指の関節を動かしにくい、指先へ力を入れにくい、細かな物をつまみにくい状態になると、大きな物は持ててもシャツのボタンだけ扱えないことがあります。

テクノエイド協会もボタンエイドを手指の機能を補う用具として紹介しており、選ぶ際には現在の身体機能がどの程度なのか把握することが必要だとしています。

  • ボタンをつまめない
  • 指が曲がりにくい
  • 指先へ力が入らない
  • 物を落としやすい
  • 細かな操作だけ難しい
  • 左右で動きが違う

指先だけが問題ならボタンエイドや大きなボタンで補える場合がありますが、道具の柄そのものを握れない場合には別の工夫が必要です。

急に片手へ力が入りにくくなったなど明らかな変化がある場合には、衣服を変更するだけで様子を見ず、症状に応じて医療機関へ相談してください。

片手を使いにくい

ボタンを留める動作では、一方の手でボタンを操作し、もう一方の手で衣服やボタン穴を支えるため、片手を使いにくくなると難易度が上がります。

テクノエイド協会もボタンエイドについて、反対側の上肢で衣服を押さえることができるとより使いやすいと説明しているため、道具を導入するときにも両腕の状態を確認する必要があります。

片手だけで着替える場合には、通常のボタン操作へこだわるより、面ファスナーやスナップ式など、衣服を固定しながら操作しやすい仕組みへ変更したほうがよい場合があります。

状態検討する工夫
片手は使える自助具を試す
服を押さえにくい留め具を変更する
握る力が弱い太い柄を検討する
肩も動かしにくい前開きを検討する
操作が複雑衣服自体を変更する
介助が必要難しい工程だけ支援する

片手が使いにくい原因や程度によって適した着替え方は大きく異なるため、リハビリテーションを受けている人は作業療法士などへ実際の衣服を見てもらう方法もあります。

本人ができる方法を見つけることを目的にし、一般的な着方と同じ方法で行うことへこだわらないようにしましょう。

ボタンが見えにくい

指は動くのにボタン穴の位置を合わせにくい場合には、視力や照明、ボタンと衣服の色の組み合わせなどが影響していることがあります。

例えば白いシャツに白い小さなボタンが付いていると境界が分かりにくく、暗い寝室で着替える場合にはさらに位置を確認しづらくなります。

ボタンと生地の色に差がある衣服を選ぶ、着替える場所を明るくする、必要に応じて鏡を使うなど、指先以外の環境を変えることで操作しやすくなる可能性があります。

  • 部屋を明るくする
  • 手元へ光を当てる
  • 色の違うボタンを選ぶ
  • 大きいボタンを使う
  • 着替える場所を固定する
  • 必要に応じて眼鏡を使う

視力の変化が大きい場合には、ボタンだけでなく薬の表示や家電の操作など日常生活の別の場面にも困りごとが出ていないか確認しましょう。

急激な見え方の変化がある場合には、単なる加齢として済ませず医療機関へ相談することも重要です。

ボタンエイドは本人に合う物を選ぼう

ボタンエイドは通常のボタン操作を補う便利な自助具ですが、購入すれば誰でもすぐに使えるわけではなく、本人の手の動きや衣服との相性を確認する必要があります。

テクノエイド協会では、身体機能の把握だけでなく、細かな道具操作や手順の理解、状況判断なども必要であり、ボタンの大きさによって先端を選ぶことが示されています。

道具を導入する目的は通常の着替え方へ無理に近づけることではなく、本人ができるだけ少ない負担で衣服を着られるようにすることです。

握りやすさを確認する

ボタンエイドは先端部分だけでなく、本人が持つ柄の太さや形状が使いやすさを大きく左右します。

細い柄を指先だけで握ることが難しい人では、ある程度太さがあり手のひらで支えやすい形状のほうが扱いやすい場合があります。

テクノエイド協会では、持つ力が弱い場合にベルトなどで手のひらへ固定する使い方も紹介しており、握力に合わせた工夫が必要です。

  • 柄を握れる
  • 滑りにくい
  • 重すぎない
  • 向きを変えやすい
  • 先端を狙った場所へ動かせる
  • 手から落ちにくい

市販品が本人の手に合わない場合は、柄を太くする工夫などについて作業療法士へ相談できる場合もあります。

本人が何度試しても道具そのものを扱いにくいなら、ボタンエイドにこだわらず衣服側を変更しましょう。

ボタンとの相性を見る

ボタンエイドを選ぶときには、普段着ている衣服のボタンへ先端を掛けられるかを確認することが重要です。

テクノエイド協会はボタンの大きさによってエイドの先端を選ぶことを案内しており、大型で厚手のボタンや球状のボタンなどでは使用が難しいとしています。

一つの道具ですべての衣服へ対応できるとは限らないため、本人が日常的に着るパジャマやシャツなどで使えるかを基準に選びましょう。

確認項目見るポイント
ボタンサイズ先端を掛けられる
ボタン穴道具を通せる
布の厚さ引き出しやすい
ボタン形状フックが掛かる
配置道具を動かせる
衣服の固定反対側を支えられる

ボタンエイドへ衣服を合わせるために普段着をすべて買い替えるより、本人が好きな衣服で使える方法を探すほうが生活へ取り入れやすい場合があります。

反対に何枚もの服で使いにくいなら、留め具そのものを変更するほうが負担を減らせる可能性があります。

実際の着替えで試す

ボタンエイドの操作を机の上で練習できても、実際に衣服を着た状態ではボタンの位置や見え方が変わるため、本番の着替え動作で使えるかを確認する必要があります。

胸元は操作できても腹部のボタンへ手が届きにくいことがあり、ズボンでは衣服を身体へ引き寄せながら操作する必要があるため、上着と同じように使えるとは限りません。

また、朝は使えても入浴後や疲れている時間帯には操作しづらくなる人もいるため、普段の生活で繰り返し使えるかを見ることが大切です。

  • 上のボタンを試す
  • 中央部分を試す
  • 下のボタンを試す
  • 座った姿勢で試す
  • 普段の服で試す
  • 疲れ方も確認する

最初は家族が衣服を押さえるなど一部を手伝い、本人が道具の操作に慣れてから支援を減らす方法もあります。

何度練習しても強いストレスになる場合には、自助具を使いこなすこと自体を目標にせず、より簡単な衣服へ変更してください。

着替え全体を楽にする工夫も取り入れよう

ボタンが留められないことだけに注目すると、ボタンエイドや衣服の留め具だけを変更しがちですが、高齢者の更衣では服を選び、取り出し、袖へ腕を通し、裾を整えるまで多くの工程があります。

ボタン操作以外にも負担がある場合は、衣服の収納方法や着替える場所、服の種類をまとめて見直したほうが本人の生活は楽になります。

本人が安全にできる動作を残しつつ、難しい工程を道具や環境、家族の支援で補うことを考えましょう。

着る服を選びやすくする

衣類が多すぎると、着替えを始める前にタンスから服を探し、重なった衣類を取り出す作業が必要になるため、高齢者にとって別の負担になる場合があります。

普段よく着る服を手の届きやすい引き出しやハンガーへまとめ、ボタンを留めやすい服と難しい服を整理しておくと毎朝の準備を簡単にできます。

季節外の衣類や特別な外出時だけ使う服は別の場所へ移し、日常着を本人が一目で選べる量にすると迷いも減らせます。

  • 普段着をまとめる
  • 取りやすい高さへ置く
  • 季節外の服を分ける
  • 着やすい服を手前へ置く
  • 上下を組み合わせておく
  • 本人の好みを残す

認知機能の変化などで服選び自体に時間がかかる場合は、家族が二つ程度の候補を示して本人に選んでもらう方法もあります。

着替えを簡単にするためであっても、本人の衣服を家族だけで大量に処分せず、本人の希望を確認しながら整理しましょう。

着替える場所を整える

ボタンを留める作業には時間がかかることがあるため、立ったまま急いで行うより、明るく安定した場所へ座って着替えられる環境を作ることが大切です。

ベッドや椅子の近くへ衣服を準備し、ボタンエイドなどの自助具も同じ場所へ置けば、着替えの途中で道具を探して歩く必要がありません。

視力が低下している人では手元を明るくし、ボタンとボタン穴を見分けやすい環境へ変えることも操作の助けになります。

場所整え方
椅子安定した物を使う
足元物を置かない
照明手元を明るくする
衣服手の届く場所へ置く
自助具定位置へ置く
室温急がなくてよい環境にする

冬の寒い部屋では早く服を着ようとして焦ることがあるため、着替える場所の温度にも配慮すると本人のペースで操作しやすくなります。

道具だけで解決しようとせず、着替えに集中できる環境を整えることも重要な支援です。

本人ができる工程を残す

ボタン操作が難しくなった高齢者を手伝うときは、家族が着替え全体を代わりに行うのではなく、本人ができる工程を確認することが大切です。

服を選ぶ、袖へ腕を通す、前身頃を合わせる、裾を整えるといった動作ができるなら、ボタンだけ家族が留めることで本人が行う部分を残せます。

反対に一番上の小さなボタンだけ難しく、ほかは自分でできる場合には、その一個だけを手伝えば十分なこともあります。

  • 服選びは本人に任せる
  • できる動作を待つ
  • 難しい部分だけ補助する
  • 急がせない
  • 疲れた日は支援を増やす
  • 本人の希望を確認する

時間がかかることを失敗と捉えず、本人が安全に自分でできているなら必要な時間を確保することも支援になります。

一方で痛みを我慢したり極端に疲れたりしてまで自分で行う必要はないため、その日の状態に合わせて柔軟に手伝いましょう。

急にボタンを留められなくなったら変化にも注意しよう

以前から少しずつ指先の操作に時間がかかるようになった場合には、衣服や自助具の工夫で対応できることがありますが、急にボタンを留められなくなった場合には身体状態の変化にも注意が必要です。

ボタン留めは細かな手指操作を必要とするため、本人や家族が日常生活の変化に気づくきっかけになることがあります。

特に片側の手足の動かしにくさなど突然の症状がある場合は、単なる加齢や不器用さとして扱わず、必要な対応を優先してください。

ほかの細かな動作も確認する

ボタンだけ扱いにくいのか、それとも箸、硬貨、鍵、ファスナーなどほかの細かな物も扱いにくくなっているのかを確認すると、困りごとの範囲を把握しやすくなります。

例えばボタンだけ小さすぎて難しいのであれば衣服側の変更で対応しやすい一方、食事や整容など複数の日常動作へ影響が出ている場合には支援方法を広く考える必要があります。

厚生労働省の資料でも、自助具について使いづらくなったことや使えなくなったことによって日常生活動作に変化が起きていないか確認する視点が示されています。

  • 箸を使えるか
  • 硬貨をつまめるか
  • 鍵を回せるか
  • ファスナーを扱えるか
  • ペンを持てるか
  • 薬を取り出せるか

複数の生活動作が難しくなっている場合には、それぞれを個別の道具だけで補うのではなく、本人の身体状態や生活全体を確認することが大切です。

リハビリテーションを受けている人なら、実際に困っている衣服や道具を専門職へ伝えると具体的な方法を検討しやすくなります。

突然の変化を見逃さない

昨日まで問題なくボタンを留めていた人が突然片手をうまく動かせなくなった場合には、「高齢になったから」と考えてボタンの大きな服へ替えるだけで済ませないことが重要です。

特に片側の手足へ急に力が入りにくい、顔の片側が動きにくい、言葉が出にくいなど突然の症状がある場合には、脳卒中など緊急性のある状態も考えられます。

そのような急な変化が見られる場合には、衣服や自助具を選ぶことより医療につなげることを優先してください。

変化対応の考え方
徐々に細かな操作が難しい生活全体を確認する
指に痛みがある医療機関へ相談する
急に片手が動かない緊急性を考える
言葉も出にくい速やかに対応する
転倒後から動かしにくい受診を検討する
複数の家事も難しい生活支援も検討する

本人が痛みを訴えている場合や、手指の腫れ、しびれなどが続いている場合にも、自己判断で長期間様子を見るより医療機関へ相談しましょう。

衣服の工夫は生活を楽にする方法ですが、身体の変化そのものを診断するものではないことを意識してください。

更衣全体が難しければ相談する

ボタンだけでなく、袖へ腕を通す、ズボンを引き上げる、靴下を履くなど更衣全体が難しくなっている場合には、自助具一つで解決しようとせず専門職へ相談する方法があります。

厚生労働省の資料でも更衣用の自助具としてボタン掛けだけでなく改良衣服やソックスエイドなどが挙げられており、困っている動作に合わせて異なる用具を検討できます。

すでに介護サービスやリハビリテーションを利用している場合は、ケアマネジャー、作業療法士などへ普段の着替えで困っている場面を具体的に伝えましょう。

  • ボタンを留められない
  • 袖へ腕を通せない
  • ズボンを上げにくい
  • 靴下を履けない
  • 着替えでふらつく
  • 毎回介助が必要になった

介護保険の福祉用具給付には対象となる種目が定められており、一般的なボタンエイドがそのまま介護保険の福祉用具貸与や特定福祉用具販売の対象になるとは限らないため、制度利用を考える場合は自治体やケアマネジャーなどへ確認してください。

本人が自分で着替えたいという希望を持っているなら、その希望を相談時に伝え、道具、衣服、介助方法を組み合わせて続けられる方法を考えることが大切です。

ボタンにこだわらず自分で着替えやすい方法を選ぼう

高齢者がボタンを留められないときには、できなくなったことだけを見るのではなく、ボタンをつまめないのか、穴へ通せないのか、片手を使いにくいのか、手元が見えにくいのかなど、どの工程で困っているかを確認すると適した対策を選びやすくなります。

指先の細かな操作が難しい場合にはボタンエイドが役立つ可能性があり、厚生労働省の資料でも更衣用の自助具としてボタン掛けが示されていますが、道具の操作には一定の手の機能や手順の理解も必要なので、本人に合わなければ大きなボタンやスナップ、面ファスナーなど衣服側を変更する方法も検討しましょう。

また、ボタンを留めることだけが難しい人に対して家族が着替えをすべて行う必要はなく、本人が服を選ぶ、袖へ腕を通す、前を合わせるところまでは自分で行い、最後のボタンだけ手伝うというように、できる工程を残しながら必要な部分だけ支援することもできます。

着替えの負担を減らすには、安定した椅子へ座る、手元を明るくする、着やすい衣服を取り出しやすい場所へ置く、自助具を決まった場所へ準備するといった環境の工夫も有効であり、本人が急がず毎日繰り返せる仕組みを作ることが重要です。

一方で、これまで普通にできていたボタン操作が突然できなくなった場合や、片側の手足の動かしにくさ、言葉の出にくさなど急な変化が見られる場合には、衣服の問題だけとして扱わず速やかな対応を優先し、徐々に更衣全体が難しくなっている場合も医療や介護、リハビリテーションの専門職へ相談しながら本人が自分らしく着替えられる方法を整えていきましょう。

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