高齢者が靴の脱ぎ履きを大変に感じるとき|玄関でできる工夫

歩行・外出
※イメージとして作成した画像です

高齢の親が玄関で靴を履くときに何度もかがんでいたり、片足立ちになってふらついたりする姿を見ると、転倒しないか心配になるものです。

靴の脱ぎ履きは毎日の生活で繰り返す身近な動作ですが、実際には腰を曲げる、片足を持ち上げる、足先を靴へ入れる、かかとを整える、立ち上がるといった複数の動きが必要になるため、年齢とともに負担を感じる場合があります。

特に玄関は、上がりかまちの段差があったり、靴や傘などの物が置かれていたりするため、身体のバランスを崩したときに転倒につながりやすい場所であり、無理な姿勢で靴を履こうとすることには注意が必要です。

一方で、靴の脱ぎ履きが難しくなったからといって、必ずしも家族が毎回手伝わなければならないわけではなく、玄関に安定した椅子を置く、手すりを設置する、長い靴べらを使う、靴の形状を見直すなど、本人が自分で行いやすくする工夫があります。

大切なのは、単に靴を素早く履けるようにすることではなく、本人が安全な姿勢を保ちながら、外出への意欲や自分で身支度をする習慣を維持できる環境を整えることです。

高齢者が靴の脱ぎ履きを大変に感じるときに役立つ玄関の工夫を中心に、椅子や手すりの選び方、履きやすい靴の特徴、身体の状態に合わせた対策、家族が介助するときの注意点、住宅改修を検討する目安まで具体的に紹介します。

高齢者が靴の脱ぎ履きを大変に感じるときの工夫

高齢者が靴の脱ぎ履きを難しく感じる場合には、最初にどの動作が負担になっているのかを確認し、本人が安全にできる部分を残しながら、難しい動作だけを補う方法を考えることが重要です。

例えば、かがむことが難しい人には長い靴べら、片足立ちが不安定な人には椅子、立ち上がるときにふらつく人には適切な手すりというように、困っている場面によって効果的な工夫は異なります。

ここでは玄関の環境を整える方法から靴そのものを使いやすくする方法まで、家庭で取り入れやすい九つの工夫を紹介します。

玄関に椅子を置く

高齢者が靴の脱ぎ履きを大変に感じる場合には、玄関に安定した椅子を置き、座った状態で靴を履いたり脱いだりする方法が基本的な対策となり、片足立ちや深い前かがみを避けやすくなります。

立ったまま靴を履こうとすると、片方の足に体重をかけながらもう片方の足を動かす必要があるため、足腰の筋力やバランス能力が低下している人では、靴へ足を入れる瞬間にふらつくことがあります。

例えば玄関の上がりかまちに腰を下ろして靴を履いている人でも、段差が低すぎると立ち上がる際に大きな力が必要になるため、適切な高さの椅子へ変更することで負担を減らせる場合があります。

椅子を選ぶときには、座面の高さだけでなく、座った際に足裏が安定して床へ接すること、座面が滑りにくいこと、脚がぐらつかないこと、立ち上がるときに身体を支えられる構造であることを確認しましょう。

ただし、軽すぎる椅子やキャスター付きの椅子は、座るときや立ち上がるときに動いてしまう危険があるため、玄関では安定性を優先し、必要に応じて背もたれや肘掛けのある製品を検討することが大切です。

また、椅子を置いたことで玄関の通路が狭くなったり、ドアの開閉を妨げたりしないように、本人が普段どの方向から出入りするかを確認して配置する必要があります。

立ち上がりやすい高さにする

玄関に椅子を置いても高齢者が立ち上がりにくい場合には、座面の高さが身体に合っていない可能性があるため、足裏の接地状態と膝や股関節の曲がり方を確認することが重要です。

低すぎる椅子では立ち上がる際に膝や股関節を大きく伸ばす必要があり、膝に痛みがある人や太ももの筋力が弱くなっている人では、立ち上がる動作が負担になることがあります。

反対に高すぎる椅子では足裏が床へ十分に接しない場合があり、靴へ足を入れるときに身体が不安定になるため、単純に座面を高くすればよいわけではありません。

椅子の状態起こりやすい問題確認すること
座面が低い立ち上がりにくい膝への負担
座面が高い足が浮きやすい足裏の接地
座面が柔らかい姿勢が沈み込む立ち上がりやすさ
椅子が軽い本体が動きやすい安定性
肘掛けがある手を使いやすい強度と位置

例えば家の中で使っている食卓用の椅子なら立ち上がりやすい場合には、その座面の高さや形状を参考にすると、玄関用の椅子を選ぶ際の手がかりになります。

ただし、靴を履くためには足元へ手を伸ばす必要もあるため、立ち上がりやすさだけでなく、座った状態で足先へ無理なく届くかも確認しましょう。

本人が立ち上がる際に大きくふらつく場合には、椅子の高さだけで対応しようとせず、手すりの設置や理学療法士などへの相談も検討することが大切です。

玄関に手すりを設置する

高齢者が靴の脱ぎ履きの途中でふらついたり、玄関の段差を上り下りするときに不安を感じたりする場合には、適切な位置へ手すりを設置することで、身体を支えやすくなる可能性があります。

玄関では靴を履くために姿勢を変えるだけでなく、上がりかまちの段差を移動する動作もあるため、手すりを設置する際には靴の脱ぎ履きと段差の昇降の両方を考えることが重要です。

例えば椅子から立ち上がるときに手を伸ばせる位置へ手すりがあると、家具や靴箱へ無理につかまる必要を減らせますが、本人の身長や利き手、動作の方向によって適切な位置は異なります。

  • 座った状態から届く位置
  • 立ち上がる際の握りやすさ
  • 段差を移動するときの連続性
  • 壁や床への確実な固定
  • 玄関の通行を妨げない配置

消費者庁も高齢者の転倒予防策として玄関などの段差への手すりの設置を案内しており、住宅の状況に合わせた環境整備が重要とされています。

ただし、壁へ取り付ける手すりは下地の強度が必要であり、見た目だけで取り付けると身体を支えた際に外れる危険があるため、施工方法を確認し、必要に応じて専門業者へ依頼しましょう。

また、置き型の手すりを利用する場合も、製品が想定する使用方法や設置条件を守り、体重をかけたときに動いたり倒れたりしないかを十分に確認することが大切です。

長い靴べらを使う

高齢者が靴を履くときに腰を深く曲げることを負担に感じている場合には、柄の長い靴べらを使うことで、かがむ動作を減らしながらかかとを靴へ入れやすくなることがあります。

短い靴べらでは靴のかかと付近まで手を伸ばす必要がありますが、長い靴べらなら立った状態や椅子へ座った状態でも使いやすい場合があり、腰や股関節の動きが制限されている人には便利です。

例えば靴のつま先へ足を入れることはできても、最後にかかとが引っかかってしまう人では、靴べらを靴の内側へ差し込み、かかとを滑らせることで無理な力を加えずに履ける可能性があります。

ただし、靴べらを使うことに集中して立ったまま身体を傾けると、かえって転倒の危険が高まる場合があるため、バランスに不安がある人は椅子へ座って使う方法を優先しましょう。

靴べらの先端が厚すぎると靴へ入りにくく、柄が細すぎると握りにくい場合があるため、長さだけでなく、握る部分の太さや滑りにくさ、先端の形状も確認することが大切です。

使用後の靴べらを玄関の床へ置くとつまずく原因になるため、壁面のフックや専用スタンドなど、本人が取り出しやすく安全に戻せる場所を決めておくとよいでしょう。

履き口が広い靴に替える

高齢者が靴へ足を入れること自体を難しく感じている場合には、履き口が大きく開く靴へ変更することで、つま先を入れる角度やかかとを押し込む力を減らせる可能性があります。

履き口が狭い靴では、足先を入れた後にかかとを押し込む必要があり、足首が動かしにくい人や腰を曲げにくい人では、その動作だけで時間がかかることがあります。

例えば面ファスナーで大きく開閉できる靴や、甲の部分を広く開ける構造の靴なら、足を靴へ入れる際の抵抗を減らせる場合があり、足のむくみが気になる人にも選択肢となります。

靴の特徴期待できる利点注意点
履き口が広い足を入れやすい固定性を確認
面ファスナー式開閉しやすい留め具の操作
大きく開く甲部足を通しやすい足幅との適合
かかとがしっかりした靴歩行時に安定しやすい履く際の操作
軽量タイプ持ち上げる負担を軽減靴底の安定性

ただし、履き口が広いだけで足を十分に固定できない靴では、歩行中にかかとが浮いたり靴が脱げたりする場合があるため、履きやすさと歩きやすさを両立させることが重要です。

購入するときには靴を履く動作だけで判断せず、実際に歩いたときのかかとの収まり、足先の余裕、靴底の滑りにくさまで確認しましょう。

面ファスナー式の靴を選ぶ

高齢者が靴紐を結ぶことや小さな留め具を扱うことを負担に感じている場合には、面ファスナー式の靴を選ぶことで、指先の細かな操作を減らしやすくなります。

靴紐を結ぶには、両手の指を細かく動かしながら身体を前へ傾ける必要があるため、手指の関節に痛みがある人や片手を使いにくい人では、靴を履くこと自体が外出の負担になる場合があります。

例えば大きなベルト状の面ファスナーが付いた靴なら、靴紐を結ぶ代わりにベルトを開閉するだけで足の甲を固定できるため、本人が操作しやすくなる可能性があります。

  • ベルトをつかみやすい
  • 少ない力で開閉できる
  • 足の甲を固定できる
  • 履き口が十分に開く
  • 左右を間違えにくい

ただし、面ファスナーを留める位置が分かりにくかったり、引っ張る力が必要だったりする製品もあるため、本人が実際に操作できるかを確認することが大切です。

また、面ファスナーへ糸くずやほこりが付着すると固定力が弱くなる場合があるため、定期的に状態を確認し、歩行中に外れないようにしましょう。

靴を選ぶ際には、着脱の簡単さだけでなく、歩いているときに足が前後へ動きすぎないことや、かかとが安定していることも重視する必要があります。

靴の置き方を整える

高齢者が玄関で靴を履く際に足を入れにくい場合には、靴を置く位置や向きを整えるだけでも、身体をひねったり深くかがんだりする動作を減らせることがあります。

例えば靴が玄関の端へ寄っていたり、左右が重なっていたりすると、履く前に靴を移動させる必要があり、立ったままその作業を行うことで姿勢が不安定になる場合があります。

椅子の正面に靴をそろえ、座った状態で足先を入れやすい向きへ置いておけば、本人が靴を探したり位置を直したりする負担を減らせます。

ただし、靴を椅子へ近づけすぎると立ち上がる際に足元が狭くなり、つまずく危険があるため、着脱する場所と歩き始める場所の両方に必要な空間を確保することが重要です。

また、複数の靴が玄関に出しっぱなしになっている場合には、普段使う一足だけを取り出しやすい場所へ置き、ほかの靴を靴箱へ収納することで動線を整理しやすくなります。

家族が靴の向きをそろえる場合には、本人が普段どちらの足から履くのか、どこへ座るのかを確認し、実際の動作に合った位置へ置くことが大切です。

玄関の段差を見直す

高齢者が靴の脱ぎ履きを大変に感じる背景には、玄関の上がりかまちが高く、靴を履く動作と段差を下りる動作が連続していることが関係している場合があります。

例えば靴を履いた後に大きな段差を下りなければならない玄関では、片足へ体重をかける時間が長くなり、足腰の筋力が低下している人では身体を支えにくくなることがあります。

段差が大きい場合には、住宅の状況に応じて手すりや適切な踏み台、式台などを検討できますが、踏み台を置くだけでは新たなつまずきの原因になる場合があるため、安全な設置が欠かせません。

玄関の状態考えられる工夫
段差が高い固定式の式台など
昇降時にふらつく手すりの設置
足元が暗い照明の改善
踏み台が動く固定方法の見直し
通路が狭い収納配置の変更

国土交通省の高齢者が居住する住宅の設計に係る指針でも、玄関の段差や手すり、靴の着脱に配慮した住環境の整備が示されており、玄関を安全に使えることは住宅の重要な要素とされています。

ただし、段差の解消方法は玄関の広さやドアの位置、本人の歩行能力によって異なるため、必要に応じて福祉住環境コーディネーターやリハビリテーション専門職などへ相談しましょう。

玄関の照明を明るくする

高齢者が玄関で靴を履く際に足元が見えにくい場合には、照明を見直すことで靴の位置や段差の境目を確認しやすくなり、落ち着いて動作を行える可能性があります。

特に夕方や夜間は玄関の照明が十分でないと、黒い靴と暗い床の境目が分かりにくくなったり、上がりかまちの位置を見誤ったりする場合があります。

例えば玄関の天井照明だけでは靴を履く場所に影ができる場合には、足元を照らす補助照明を設けることで、靴の履き口や床の状態を確認しやすくなることがあります。

  • 靴を履く位置の明るさ
  • 段差の境目の見えやすさ
  • 照明による強いまぶしさ
  • スイッチの操作しやすさ
  • 夜間の足元照明

ただし、明るい照明でも直接目に光が入るとまぶしさを感じ、かえって段差を見分けにくくなる場合があるため、光の向きや設置位置を調整することが重要です。

人感センサー付きの照明はスイッチを探す手間を減らせる場合がありますが、点灯する範囲や時間が本人の動作に合っているかを確認する必要があります。

照明を改善する際には、電源コードを玄関の通路へ出さないようにし、新たなつまずきの原因を作らないことも大切です。

靴の脱ぎ履きが難しくなる原因を知ろう

高齢者が靴の脱ぎ履きを大変に感じる理由は一つではなく、腰や膝の痛み、股関節の動かしにくさ、手指の力の変化、バランス能力の低下などが複合的に関係している場合があります。

同じように靴を履きにくいと訴えていても、足先へ手が届かない人と、片足立ちが難しい人とでは、適切な対策が異なります。

ここでは身体の動き、立位の安定性、足の状態という三つの視点から、困りごとの原因を整理します。

腰や膝の動かしにくさ

高齢者が靴を履く際にかがむことを嫌がったり、何度も姿勢を変えたりする場合には、腰や膝、股関節の痛みや可動域の制限が関係している可能性があります。

例えば膝を深く曲げると痛みが出る人では、玄関の低い段差へ腰を下ろすこと自体が負担になり、座った後に立ち上がることも難しくなる場合があります。

また、股関節が動かしにくい人では、靴を履くために足を持ち上げたり、膝を外側へ開いたりする動作が難しいことがあり、無理に動かそうとすると痛みが強くなる可能性があります。

  • 腰を前へ曲げにくい
  • 膝を深く曲げると痛い
  • 足先へ手が届かない
  • 椅子から立ち上がりにくい
  • 片足を持ち上げにくい

このような場合には、椅子の高さを調整したり、長い靴べらを使ったりすることで動作を簡単にできる場合がありますが、痛みを我慢して同じ姿勢を繰り返すことは避けましょう。

痛みが続く場合や、以前できていた動作が急に難しくなった場合には、整形外科などの医療機関へ相談し、必要に応じて理学療法士や作業療法士へ安全な着脱方法を確認することが大切です。

片足立ちの不安定さ

高齢者が靴を履くときに身体を大きく揺らしたり、壁へ手をついたりする場合には、片足立ちのバランスが不安定になっている可能性があり、立ったままの着脱を続けることには注意が必要です。

靴を履く動作では、片方の足へ体重をかけながら反対側の足を動かす場面があるため、筋力やバランス能力が低下している人では、短い時間でも転倒の危険が高まる場合があります。

例えば靴のかかとを踏まないように足を持ち上げた瞬間にふらつく人では、無理に片足立ちを続けるよりも、椅子へ座って靴を履く方法へ変更するほうが安全につながります。

見られる動作考えられる対応
片足でふらつく座って着脱する
壁へつかまる手すりを検討
靴を履く途中で止まる動作を分ける
立ち上がりに時間がかかる椅子の高さを見直す
段差で不安定になる玄関環境を改善

ただし、椅子へ座れば必ず安全というわけではなく、座るときや立ち上がるときに椅子が動いたり、身体を支える場所がなかったりすると、別の危険が生じる可能性があります。

ふらつきが続く場合には、玄関の工夫だけでなく、服薬状況や体調、歩行能力なども含めて医療や介護の専門職へ相談することが大切です。

足のむくみや変形

高齢者が以前と同じ靴を履きにくくなった場合には、足のむくみや変形、足幅の変化などが関係している可能性があり、靴のサイズが合っていないことが負担を増やしている場合があります。

例えば夕方になると足がむくみやすい人では、朝は履けていた靴が夕方にはきつく感じられ、履き口へ足を入れるときに強い力が必要になることがあります。

また、外反母趾や足指の変形がある人では、靴の先端や甲の部分が当たりやすく、靴を履く動作だけでなく歩行中にも痛みが生じる場合があります。

  • 足の甲がきつい
  • 夕方に靴が入りにくい
  • 足指が靴へ当たる
  • かかとが浮きやすい
  • 左右で履き心地が違う

このような場合には、履き口が広く足幅を調整しやすい靴を検討できますが、単純に大きなサイズへ変更すると靴の中で足が動き、歩行時の不安定さにつながる可能性があります。

むくみが急に強くなった場合や、片足だけ腫れる、痛みや赤みを伴うなどの変化がある場合には、靴の問題として放置せず医療機関へ相談しましょう。

靴の形状を見直す際には、足の状態を確認したうえで、必要に応じて医療職や靴の専門家へ相談することが大切です。

履きやすい靴を選ぶためのポイント

高齢者が靴の脱ぎ履きを楽にするためには、玄関の設備だけでなく、普段履いている靴が本人の足と動作に合っているかを確認することも重要です。

履きやすい靴を選ぶ際には、足を入れやすいことだけでなく、歩いているときに脱げにくいこと、足を十分に支えられること、靴底が滑りにくいことなども考える必要があります。

ここではかかとの構造、靴底の特徴、購入時の試し履きという三つの視点から、選び方を紹介します。

かかとを安定させる

高齢者が靴を選ぶ際には、脱ぎ履きのしやすさを重視する一方で、歩行中にかかとが安定していることも重要であり、簡単に脱げる靴が必ずしも安全とは限りません。

例えばかかとのないサンダルや大きすぎる靴は、足を入れる動作が簡単に感じられる場合がありますが、歩行中に足が靴から離れたり、つま先を引っかけたりする可能性があります。

そのため、履き口が広くても、履いた後に足の甲やかかとを適切に固定できる構造の靴を選ぶことが大切です。

確認項目見るポイント
かかとの収まり歩行中に浮きにくい
足の甲適度に固定できる
履き口無理なく足を入れられる
つま先指を圧迫しにくい
靴の重さ持ち上げやすい

東京都の消費生活情報でも、高齢者の転倒予防に関して、外出時にはかかとのある靴を履くことが案内されており、脱ぎ履きの簡単さだけで選ばないことが重要です。

ただし、足の形状や歩行の状態によって適した靴は異なるため、一般的に履きやすいとされる製品でも、本人が実際に歩いて確認することが欠かせません。

家族が靴を購入する場合には、本人の足の状態や普段の歩き方を確認し、できるだけ試し履きをしたうえで選ぶようにしましょう。

靴底の滑りにくさ

高齢者が靴を選ぶときには、履きやすさだけでなく、靴底の滑りにくさや歩行時の安定性を確認することが重要であり、特に玄関のタイルや雨の日の路面では注意が必要です。

例えば靴底が摩耗している靴では、床面との摩擦が十分に得られず、玄関で方向を変えるときや段差を下りるときに滑る危険が高まる場合があります。

また、靴底が厚すぎたり硬すぎたりすると、足裏で床の状態を感じにくくなる人もいるため、単に滑り止めの模様が大きいことだけで判断せず、実際の歩きやすさを確認することが大切です。

  • 靴底の摩耗状態
  • 濡れた場所での滑りにくさ
  • 足裏の安定感
  • つま先の引っかかりにくさ
  • 靴全体の重さ

例えば室内では問題なく歩けても、屋外の坂道や濡れた歩道では不安定になる場合があるため、普段の外出先や歩く路面を想定して靴を選ぶことが重要です。

ただし、滑りにくい靴底でもすべての路面で滑らないわけではなく、床面の水分や砂、段差などの影響を受けるため、靴だけに頼らず歩行環境も整えましょう。

靴底がすり減った場合には、本人が履き慣れていても交換を検討し、安全に歩ける状態を維持することが大切です。

試し履きで動作を確認する

高齢者が靴を購入する際には、座った状態で履けるかどうかだけでなく、立ち上がって歩いたときの安定性や、脱ぐときの負担まで確認することが重要です。

例えば店頭で足を入れやすいと感じた靴でも、実際に歩くとかかとが浮いたり、甲の部分が当たったりする場合があるため、履いた瞬間の印象だけで決めないことが大切です。

また、靴の脱ぎ履きが難しい人では、試し履きの際に椅子を使わせてもらい、普段の玄関で行う動作に近い方法で試すと、購入後の使いやすさを判断しやすくなります。

試す動作確認すること
靴へ足を入れる履き口の広さ
かかとを収める無理な力が不要か
留め具を操作する手指の負担
立ち上がる足元の安定性
少し歩く脱げにくさと痛み
靴を脱ぐ操作の簡単さ

足がむくみやすい人では時間帯によって履き心地が変わる場合があるため、普段困りやすい時間帯の状態も考慮するとよいでしょう。

ただし、試し履きの際に痛みやふらつきがある場合には無理に歩き続けず、店員へ相談したり、必要に応じて足や歩行の状態を専門職へ確認してもらったりすることが大切です。

本人が気に入っているデザインや色も外出への意欲に関わるため、安全性を確保したうえで、本人の好みを尊重して選びましょう。

玄関で転ばないための環境づくり

高齢者が靴の脱ぎ履きを楽にする工夫を取り入れる際には、玄関全体の安全性を確認することも欠かせません。

椅子や靴べらを用意しても、床に靴が散らばっていたり、玄関マットが滑ったり、立ち上がるときにつかまる場所がなかったりすると、別の転倒リスクが残る可能性があります。

ここでは床の整理、玄関マットの扱い、手すりや椅子の配置について、具体的な注意点を紹介します。

足元の物を減らす

高齢者が玄関で安全に靴を脱ぎ履きするためには、足元に置く物を必要最小限にし、椅子から立ち上がった後に無理なく歩ける空間を確保することが重要です。

例えば複数の靴や傘、買い物袋などが玄関へ置かれていると、靴を履くために足を動かした際に物へぶつかったり、段差を下りるときにつまずいたりする可能性があります。

特に足を高く持ち上げにくい人では、わずかな障害物でも歩行を妨げる場合があるため、普段使わない靴を収納し、玄関の通路をできるだけ広く保つことが大切です。

  • 普段使わない靴を収納する
  • 傘を通路から離す
  • 買い物袋を床へ置かない
  • 靴べらの置き場所を固定する
  • 椅子の周囲を整理する

ただし、すべての物を靴箱の高い位置へ収納すると、取り出す際に無理な姿勢が必要になる場合があるため、本人が使う物は手の届きやすい位置へ置くことが重要です。

また、家族が整理した後に靴の位置を大きく変えると本人が探しにくくなることもあるため、使いやすい配置を本人と一緒に決めましょう。

玄関の整理は一度行って終わりにせず、外出から帰ったときに靴を定位置へ戻すなど、無理なく続けられる習慣を作ることが大切です。

玄関マットを見直す

高齢者が玄関で靴を脱ぎ履きする際には、玄関マットが滑ったり、端がめくれたりしていないかを確認することが重要であり、マットの状態によっては転倒の原因になる場合があります。

例えば薄いマットが床の上で動きやすい場合には、椅子から立ち上がった際に足元がずれたり、歩き始めたときにマットを踏んで滑ったりする可能性があります。

また、厚みのあるマットや端が浮いているマットでは、つま先を引っかけることがあるため、本人がすり足気味に歩く場合には特に注意が必要です。

マットの状態考えられる危険対応の例
床の上で動く滑る撤去や固定を検討
端がめくれるつまずく状態を改善
厚みが大きい足が引っかかる薄い製品を検討
濡れている滑りやすい乾燥や交換
汚れがたまる足元が不安定清掃を行う

消費者庁や国民生活センターの転倒予防に関する案内でも、床の整理や滑りやすい敷物への注意が示されており、玄関マットを使用する場合には固定状態を確認することが大切です。

ただし、マットを撤去することで床面が滑りやすくなる場合もあるため、床材や靴下の状態を確認し、本人が安全に歩ける環境を優先しましょう。

家族がマットを交換する際には、本人が実際に玄関を歩いてみて、引っかかりや滑りがないかを確認することが重要です。

椅子の配置を工夫する

高齢者が玄関で靴を脱ぎ履きするための椅子を置く場合には、椅子そのものの安定性だけでなく、座る位置と靴を履く位置、立ち上がった後の動線を考えて配置することが重要です。

例えば玄関のドアのすぐ近くへ椅子を置くと、ドアを開けた際に椅子へぶつかったり、外出時に通路が狭くなったりする場合があるため、開閉範囲を確認する必要があります。

また、椅子を壁へ寄せすぎると靴を履くために身体をひねる必要が生じることがあり、本人の座る向きや足を動かす範囲を確認することが大切です。

  • 玄関ドアの開閉範囲
  • 座るときの身体の向き
  • 靴を置く位置
  • 立ち上がる方向
  • 手すりまでの距離

椅子の位置を決める際には、実際に本人へ座ってもらい、靴を履く動作から立ち上がって玄関を出るところまで確認すると、使いにくい部分を見つけやすくなります。

ただし、椅子の背もたれや肘掛けを強く引っ張って立ち上がろうとすると、椅子の構造によっては倒れる危険があるため、製品の使用方法や安定性を確認しましょう。

玄関が狭い場合には、無理に大きな椅子を置くのではなく、固定式の腰掛けや収納を兼ねたベンチなど、住宅の広さに合う方法を検討することも大切です。

家族が靴の脱ぎ履きを支える方法

高齢者が靴の脱ぎ履きを難しく感じる場合には、家族が必要な部分を手伝うことで負担を減らせますが、本人ができる動作まで代わりに行わないようにすることも重要です。

例えば靴を足元へそろえるだけで自分で履ける人もいれば、靴べらの操作や立ち上がりの際に支援が必要な人もいるため、本人の状態に合わせて介助の範囲を考える必要があります。

ここでは声かけの方法、無理のない介助、専門職へ相談する目安について紹介します。

本人のペースを尊重する

高齢者が靴の脱ぎ履きに時間をかけている場合には、家族が急かさず、本人が落ち着いて動作を進められるようにすることが大切です。

例えば外出の予定があるときに家族が急いで靴を履かせようとすると、本人が身体を動かすタイミングを合わせにくくなり、姿勢が不安定になる場合があります。

また、本人が自分で履きたいと考えている場合には、すべてを代わりに行うことで達成感や自立した生活への意欲を損なう可能性があるため、どの部分を手伝ってほしいのかを確認しましょう。

  • 外出前に時間の余裕を作る
  • 椅子へ座ってもらう
  • 靴を履きやすい位置へ置く
  • 必要な場面だけ声をかける
  • できる動作は本人に任せる

例えば靴をそろえることや面ファスナーを開くことだけを家族が担当し、足を靴へ入れる動作は本人が行うという方法なら、負担を減らしながら自立した動作を続けやすくなります。

ただし、本人が痛みや疲れを訴えている場合には無理に自分で行ってもらう必要はなく、その日の体調に合わせて支援の量を調整することが重要です。

外出準備に時間がかかることを前提に予定を組むと、親子ともに焦りを感じにくくなり、落ち着いた玄関での動作につながります。

安全な介助方法を考える

高齢者の靴の脱ぎ履きを家族が手伝う場合には、本人の身体を無理に引っ張ったり、足を強く持ち上げたりせず、安全な姿勢で介助することが重要です。

例えば靴のかかとが入りにくいときに足を強く押し込むと、足指やかかとへ痛みが生じる場合があるため、靴の履き口を十分に開き、必要に応じて靴べらを使う方法を検討しましょう。

また、本人が立った状態で家族が靴を履かせようとすると、本人と介助者の両方が不安定になる場合があるため、できるだけ安定した椅子へ座ってもらい、足元を確認しながら進めることが大切です。

介助する場面注意すること
靴を履かせる足を無理に押し込まない
靴を脱がせる急に引っ張らない
椅子へ座る椅子の安定性
立ち上がるふらつきの有無
段差を移動する足元と手すりの位置

ただし、本人の身体をどのように支えるかは筋力や麻痺の有無、関節の状態などによって異なるため、一般的な方法をそのまま当てはめず、必要に応じて介護職やリハビリテーション専門職へ確認することが重要です。

介助する家族自身が腰を痛めないように、深くかがんだ姿勢を長く続けず、必要な道具や椅子を活用することも大切です。

本人が強い痛みを訴える場合や、介助中にふらつきが見られる場合には動作を中断し、安全を確保してから対応を考えましょう。

専門職へ相談する目安

高齢者が靴の脱ぎ履きを大変に感じる状態が続き、玄関の椅子や靴べらなどを使っても改善しない場合には、身体の状態や住環境について専門職へ相談することが役立ちます。

例えば腰や膝の痛みが強くなっている場合には医療機関で原因を確認することが重要であり、立ち上がりや歩行の不安定さが目立つ場合には、理学療法士などによる動作の評価が参考になることがあります。

また、片手を使いにくい人や手指の細かな操作が難しい人では、作業療法士へ靴の種類や補助具の使い方を相談することで、本人に合った方法を検討しやすくなります。

  • かかりつけ医
  • 整形外科
  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • ケアマネジャー
  • 地域包括支援センター

介護保険の対象となる人では、身体の状態や住宅の条件に応じて玄関の手すり設置や段差の解消などが住宅改修費の支給対象になる場合がありますが、対象となる工事や申請手続きには条件があるため、工事を始める前に自治体やケアマネジャーへ確認することが重要です。

また、急に歩きにくくなった場合や、片側の手足へ力が入らない、言葉が出にくいなどの症状がある場合には、脳卒中などの可能性があるため、靴の問題として様子を見ずに緊急の医療対応を検討してください。

専門職へ相談する際には、どの動作が難しいのか、いつから困っているのか、転びそうになったことがあるかを具体的に伝えると、必要な対策を考えやすくなります。

靴を安全に脱ぎ履きできる玄関を整えよう

高齢者が靴の脱ぎ履きを大変に感じる場合には、腰や膝の痛み、足首の動かしにくさ、片足立ちの不安定さなど、本人がどの動作で困っているのかを確認することが大切であり、無理に立ったまま靴を履こうとする必要はありません。

玄関に安定した椅子を置いて座って着脱する方法や、適切な位置へ手すりを設置する方法、長い靴べらを使う方法などを組み合わせることで、深くかがんだり片足へ体重をかけたりする負担を減らせる可能性があります。

また、履き口が広い靴や面ファスナー式の靴を選ぶ際には、簡単に履けることだけでなく、かかとが安定していること、歩行中に脱げにくいこと、靴底が滑りにくいことも確認し、本人の足と歩き方に合った製品を選ぶことが重要です。

玄関では靴や傘などの物を整理し、滑りやすいマットを見直し、足元を十分に明るくすることで、靴の脱ぎ履きだけでなく、外出時や帰宅時の転倒を防ぎやすい環境を整えられます。

家族が手伝う場合には、本人ができる動作を尊重しながら必要な部分だけを支援し、痛みやふらつきが続く場合には医療機関や介護の専門職へ相談することで、本人が安心して外出を続けられる玄関づくりにつなげましょう。

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