高齢の親が料理をしたあとにガスコンロの火を消し忘れていたり、鍋を火にかけたまま別の部屋へ移動していたりすると、家族としては「このまま一人で料理を任せて大丈夫だろうか」「火事になったらどうしよう」と心配になるものです。
高齢者の火の消し忘れは、本人へ何度も注意すれば必ず防げるとは限りません。調理中だったこと自体を忘れる場合もあれば、電話や来客に気を取られる、複数の作業を同時に進める、火を消したと思い込むなど、さまざまな状況で起こる可能性があります。そのため、「忘れないようにする」という本人の注意力だけに頼らず、消し忘れても重大な事故につながりにくい設備や生活環境を整えることが重要です。
NITEが2026年に公表した情報では、2020年から2024年までの5年間に通知されたガスコンロの製品事故152件のうち、誤使用・不注意による事故が約5割を占め、事象別では火の消し忘れによる事故が多いとされています。また、消防庁が高齢者の住宅防火対策として示した資料でも、コンロについては消し忘れを防ぐ習慣に加え、過熱防止装置など安全装置付き製品の利用が具体的な対策として挙げられています。
さらに、火災対策はコンロだけで完結しません。住宅用火災警報器を適切に設置して作動を確認する、コンロやストーブの周囲へ燃えやすい物を置かない、火を使っている間はその場を離れないなど、「火を出さない」「早く気づく」「燃え広がらせない」という複数の対策を組み合わせることが大切です。
ここでは、高齢者の火の消し忘れを防ぐために家族が取り入れたい対策をはじめ、安全装置付きガスコンロやIHへの変更を検討するときの考え方、住宅用火災警報器の確認、一人暮らしの場合の対応、火を使わない生活への切り替えを考えたいタイミングまで詳しく整理します。
高齢者の火の消し忘れを防ぐ対策
高齢者が火を消し忘れるようになった場合、最初に行いたいのは「次から気をつけて」と本人へ注意することではなく、どのような場面で消し忘れが起きているかを確認することです。味噌汁を温めている間に別の部屋へ行く、電話が鳴ると調理を中断する、グリルを使ったことを忘れるなど、状況が分かれば対策を考えやすくなります。
消防庁が示している高齢者の住宅防火対策でも、火災を発生させない対策として、コンロの消し忘れ防止や安全装置付き製品の使用が挙げられています。つまり、本人の注意と設備の安全性を組み合わせることが重要です。
すでに何度も消し忘れが起きているなら、「まだ火を使わせても大丈夫か」という視点まで含めて生活を見直しましょう。
火を使っている間はその場を離れない
最も基本となる対策は、ガスコンロへ火をつけたら調理が終わるまでキッチンを離れないことです。高齢者に限らず、火をつけたまま別の作業を始めると、調理していたことを忘れるきっかけになります。特にテレビを見る、洗濯物を取り込む、電話へ出るといった行動でキッチンから離れると、戻るタイミングを失いやすくなります。
「少しの間なら大丈夫」と考えないことが重要です。お湯を沸かしているだけ、煮物を弱火にしているだけでも、火を使っている状態に変わりはありません。電話や来客などでどうしてもその場を離れる場合には、一度火を消してから対応するというルールにすると分かりやすくなります。
- 電話へ出る前に消す
- 来客対応の前に消す
- 洗濯物を取りに行かない
- テレビを見に移動しない
- 調理中に入浴しない
- 外へ出る前に必ず確認する
家族が「鍋を見ていてね」と言うだけでは、本人にとって何をすればよいのか曖昧な場合があります。「火を使っている間はキッチンから出ない」「離れるときは必ず火を消す」のように、行動を簡単に決めたほうが実践しやすくなります。
それでも何度も火をつけたままその場を離れてしまう場合には、注意やルールだけでは十分な安全性を確保できない可能性があります。安全装置付き機器への変更や、火を使わない調理方法も検討しましょう。
安全装置付きのガスコンロを使う
古いガスコンロを長年使用している家庭では、安全装置の機能を確認しましょう。消防庁は高齢者の住宅防火対策として、コンロの消し忘れへの注意に加えて、過熱防止装置など安全装置付き製品の使用や交換を具体的な対策として挙げています。
現在の家庭用ガスコンロには、鍋底の温度を検知する機能など、事故を防ぐための安全機能を備えたものがあります。ただし、安全装置の具体的な動作条件や機能は製品によって異なるため、「安全装置があるから火をつけたまま離れても大丈夫」と考えてはいけません。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 使用年数 | 古い製品か確認する |
| 安全装置 | 搭載機能を確認する |
| 自動消火 | 作動条件を確認する |
| 操作方法 | 本人が理解できるか |
| グリル | 安全機能を確認する |
| 取扱説明書 | 正しい使い方を確認する |
NITEも、高齢者ではガスコンロやストーブの消し忘れによる事故があり、燃焼機器については自動消火装置など安全装置のある製品を選択するよう案内しています。買い替える場合は価格や火力だけでなく、安全機能を比較することが大切です。
また、高齢者が使用する製品では操作の分かりやすさも重要です。高機能でも本人が操作方法を理解できなければ使いにくいため、普段使用する機能を迷わず操作できるか確認しましょう。
タイマーを調理の習慣にする
煮物や湯沸かしなど、一定時間火を使う料理ではキッチンタイマーを利用する方法があります。「鍋を火にかけたら必ずタイマーを押す」という行動をセットにすれば、調理していることを思い出すきっかけになります。
ただし、タイマーは火を自動的に消してくれる設備ではありません。音が鳴っても本人が聞こえない、何の音か分からない、タイマーを止めたあとに火を消すことを忘れる可能性もあります。そのため、タイマーだけを火災防止策にするのではなく、安全装置や見守りなどと組み合わせて利用します。
- 火をつけたらタイマーを設定する
- 大きな音の機種を選ぶ
- 操作が簡単なものを使う
- 置き場所を固定する
- タイマー停止後に火を確認する
- 家族も使い方を確認する
スマートフォンのタイマーを使える高齢者もいますが、普段スマートフォンをほとんど操作しない人に新しい方法を覚えてもらうと、かえって混乱することがあります。本人が日常的に使える道具を選びましょう。
タイマーを設定すること自体を何度も忘れる場合には、この方法だけで消し忘れを防ぐことは難しくなります。その段階では、本人の記憶に頼らない設備へ切り替えることを検討してください。
コンロ周辺の燃えやすい物を減らす
火の消し忘れ対策では、「消し忘れをゼロにする」ことだけでなく、万一火を消し忘れたときに周囲へ燃え広がりにくくすることも重要です。消防庁は高齢者の住宅防火対策として、調理器具の周りの整理整頓や防炎品の使用なども挙げています。
キッチンでは、ふきん、キッチンペーパー、食品の包装、ビニール袋、新聞、レシピ用紙などがコンロの近くへ置かれやすくなります。火に直接触れなくても、熱の影響を受ける位置へ燃えやすい物を置かないようにしましょう。
| 置きやすい物 | 対策 |
|---|---|
| ふきん | コンロから離して掛ける |
| キッチンペーパー | 離れた場所へ収納する |
| 食品包装 | 調理後すぐ片付ける |
| ビニール袋 | 火元付近に置かない |
| 新聞・紙類 | キッチンへ放置しない |
| 調味料 | 安全な位置へまとめる |
コンロの奥に調味料などを置いている家庭にも注意が必要です。調理中に奥の物を取ろうとして身体や衣服を炎へ近づけると、着衣着火につながる危険があります。NITEもガスコンロによる着衣着火への注意を呼びかけています。
高齢者が使うキッチンでは、必要な物を取りやすい位置へ置きつつ、火元の周囲には余計な物を置かないという両方の条件を満たすよう整理しましょう。
調理の手順を簡単にする
複数の鍋を同時に火へかけたり、コンロとグリルを同時に使用したりすると、管理しなければならない作業が増えます。以前は問題なくできていた高齢者でも、複数の作業を同時に進めることが負担になる場合があります。
消し忘れが増えてきたら、一度に使う火口を一つにする、グリルとコンロを同時に使わないなど、調理工程を単純にする方法があります。料理の品数を減らすという意味ではなく、電子レンジや電気調理器などを組み合わせ、同時に火を管理する場面を減らします。
- 一度に一つの火口を使う
- グリルとの同時使用を避ける
- 下ごしらえを先に済ませる
- 火を使う料理をまとめる
- 電子レンジを併用する
- 複雑な手順を減らす
例えば味噌汁を煮ながら魚を焼き、別の鍋で煮物を温める方法より、一品ずつ仕上げるほうが火を消したか確認しやすくなります。本人の得意な料理を残しながら、管理する火の数を減らすことがポイントです。
調理手順を簡単にしても消し忘れが続く場合は、「料理が複雑だから」という問題だけではない可能性があります。火を使わない調理方法への変更も含めて安全性を考えましょう。
消火確認の場所を決める
料理が終わったあとに「火を消したかな」と不安になりやすい人には、調理終了時の確認手順を固定する方法があります。料理を皿へ移したらコンロの火を確認し、グリルも確認してから食卓へ移動するなど、一連の動作を毎回同じ順番で行います。
視覚的な表示を理解できる人なら、キッチンの見やすい位置へ短いメモを貼る方法もあります。ただし、注意書きを大量に貼ると見慣れてしまい、かえって確認しなくなることがあります。
| 場面 | 確認すること |
|---|---|
| 調理開始 | 周囲の可燃物を確認 |
| 調理中 | その場を離れない |
| 調理終了 | コンロの火を確認 |
| グリル使用後 | 停止を確認 |
| 食卓へ移動前 | もう一度火元を見る |
| 外出前 | 火元を確認する |
指差ししながら「コンロよし」と確認するなど、本人が取り入れやすい方法を決めてもよいでしょう。大切なのは、毎回同じ行動を習慣にすることです。
ただし、確認した直後に火を消したかどうか分からなくなる場合や、メモの意味を理解しにくくなっている場合は、確認習慣だけで安全を確保しようとしないことが重要です。
ストーブの消し忘れにも注意する
火の消し忘れというとガスコンロを思い浮かべやすいですが、石油ストーブなどの暖房器具も確認が必要です。消防庁が示す高齢者の住宅防火対策では、ストーブの周囲に可燃物を置かないことや、就寝時に使用しないこと、安全装置付き製品を利用することなどが具体例として挙げられています。
ストーブの近くへ洗濯物を干す、布団や衣類を置くといった使い方は避けましょう。また、暖房をつけたまま眠ってしまう習慣がある場合には、機器の取扱説明書に従って安全な使用方法を確認する必要があります。
- 周囲へ衣類を置かない
- 洗濯物を近くで乾かさない
- カーテンとの距離を取る
- 給油方法を守る
- 就寝時の使用に注意する
- 安全装置を確認する
高齢者が暖房器具を消したつもりで外出してしまう場合には、家族による確認だけでなく、より安全性の高い暖房方法へ変更できないか検討しましょう。
コンロだけ安全にしても、ストーブやろうそくなど別の火元が残っていれば住宅全体の火災リスクは十分に下がりません。家庭内で火を使う場所を一度すべて洗い出すことが大切です。
繰り返す場合は火を使わない方法へ変える
火の消し忘れが一度だけではなく繰り返し起きている場合は、本人へ注意を続けるよりも、火を直接使わない生活へ切り替えることを検討する段階です。鍋を焦がした、空焚きをした、火をつけたまま外出したといった出来事があるなら、事故が起きなかったから大丈夫と考えないようにしましょう。
電子レンジで温められる食品を利用する、電気ケトルや安全機能のある電気調理器を活用する、家族が調理した食事を用意する、配食サービスを利用するなど、本人が火を扱わなくても食生活を維持する方法は複数あります。
| 困りごと | 代替方法の例 |
|---|---|
| 湯沸かしを忘れる | 電気ケトルを検討 |
| 鍋を焦がす | 電子レンジ調理を活用 |
| コンロを消し忘れる | 火を使わない方法へ変更 |
| 調理工程を忘れる | 調理済み食品を活用 |
| 一人の調理が不安 | 家族が準備する |
| 毎日の食事準備が難しい | 配食などを検討 |
ただし、電気製品なら絶対に事故が起きないという意味ではありません。電子レンジや電気調理器にも誤使用による事故の可能性があるため、本人が安全に操作できる機器を選び、取扱説明書に従って使用することが必要です。
「料理を取り上げる」という考え方ではなく、本人ができる作業は残しつつ、危険性が高くなった火の管理だけ別の方法へ置き換えると考えると、生活を変更しやすくなります。
住宅用火災警報器も必ず確認しよう
どれだけ消し忘れ対策をしても、火災の可能性を完全になくすことはできません。そのため、万一火災が発生したときに早く気づくための住宅用火災警報器も重要です。消防庁は住宅防火対策として、火災を早期に知るための住宅用火災警報器の適切な維持管理を案内しています。
特に高齢者の一人暮らしでは、火災に気づいてから避難するまでに時間がかかる可能性も考え、警報器が正常に作動する状態を保つ必要があります。
設置しただけで安心せず、設置時期、作動状態、本人が警報へ気づけるかまで確認しましょう。
定期的に作動を確認する
住宅用火災警報器は、設置されていても正常に作動しなければ火災時の早期発見につながりません。消防庁は、ボタンを押す、または本体から下がっているひもを引くなどして定期的に作動確認するよう案内しています。
高齢者宅を訪問した家族は、コンロの状態を見るだけでなく、警報器の作動確認も定期的に行うとよいでしょう。
- 設置されているか確認する
- 作動確認を行う
- 警報音を家族で聞く
- 電池切れを確認する
- 設置年月を確認する
- 異常があれば交換する
高所に設置された警報器を高齢者本人が椅子へ乗って確認するのは、転倒の危険があります。消防庁の資料でも、作動確認や手入れは高所作業になるため安定した足場を確保するよう注意されています。
本人が安全に点検できない場合は、家族などが訪問した際に確認しましょう。
設置から10年を目安に交換を考える
住宅用火災警報器は一度設置すれば永久に使用できるわけではありません。消防庁は、古くなると電子部品の寿命や電池切れなどによって火災を感知しなくなる可能性があるとして、10年を目安に本体を交換することを推奨しています。
いつ設置したか分からない場合には、本体に記載されている製造年や設置年月などを確認します。
| 確認内容 | 対応 |
|---|---|
| 設置年月 | 本体表示を確認する |
| 製造年 | 本体を確認する |
| 10年以上経過 | 本体交換を検討する |
| 音が鳴らない | 説明書を確認する |
| 故障表示がある | 適切に交換する |
| 交換後 | 設置年月を記録する |
親が長年同じ住宅に住んでいる場合、住宅用火災警報器も設置からかなりの年数が経過している可能性があります。家族が帰省したときなどに一度確認しておくと安心です。
具体的な交換方法や設置場所は製品や自治体の条例などによって確認が必要なため、消防庁の案内や製品の取扱説明書を参考にしましょう。
警報音へ気づけるかも確認する
住宅用火災警報器が正常に作動しても、高齢者本人が警報音を聞き取れなければ早期避難につながらない可能性があります。特にテレビの音量が大きい人や、家族との会話を聞き返すことが増えている人では、警報への気づき方も確認したいところです。
消防庁は、住宅用火災警報器を交換する際の選択肢として、連動型や音・光を発する補助警報装置など、付加機能を持つ機器も挙げています。
- 警報音を聞き取れるか
- 寝室でも気づけるか
- テレビ使用中でも分かるか
- 別室の火災に気づけるか
- 光などの補助が必要か
- 連動型が適するか
聴力が低下している場合は、単純に警報音を大きくするだけで十分とは限りません。本人の生活状況や住宅の間取りに合わせて、どのような警報方法が適しているか専門事業者などへ相談するとよいでしょう。
火災警報器は「設置してあるか」だけではなく、「本人へ危険を伝えられる状態か」という視点で確認することが重要です。
消し忘れが増えた原因を確認しよう
高齢者が火を消し忘れたとき、すぐに「認知症だから」と決めつけることは避けましょう。誰でも電話や来客などへ注意が向けば消し忘れる可能性がありますし、複雑な操作のコンロへ買い替えたことで使い方を間違えることもあります。
一方で、以前にはなかった消し忘れが繰り返され、服薬や予定、食事など生活のほかの場面でも物忘れが増えている場合には、生活全体の変化として確認することが重要です。
どのような状況で、どのくらいの頻度で起きているのかを家族で整理しましょう。
どの場面で忘れるか記録する
消し忘れが起きたときは、本人を責める前に状況を記録しておくと原因を探しやすくなります。何を調理していたか、電話や来客があったか、どの火口を使用していたかなどを簡単に残します。
複数回の状況を比べると、特定の場面で忘れやすいことが分かる場合があります。
- 湯沸かし中
- 煮込み料理中
- グリル使用中
- 電話対応のあと
- 来客対応のあと
- 複数の料理を同時調理中
例えば電話のたびに消し忘れるなら、電話へ出る前に必ず火を消すルールを作れます。複数の火口を使ったときだけ起きるなら、一度に使う火口を一つへ限定する方法があります。
原因が分からないまま「もう忘れないで」と繰り返すより、消し忘れが起きる場面そのものを減らすことが効果的です。
ほかの物忘れも増えていないか確認する
火の消し忘れだけでなく、同じ話を何度もする、薬を飲んだか分からない、食事をしたことを忘れる、予定を頻繁に間違えるなどの変化がある場合には、日常生活全体を確認しましょう。
認知機能に関する心配がある場合でも、家族だけで原因を判断する必要はありません。かかりつけ医や地域包括支援センターなどへ相談できます。
| 変化 | 確認したいこと |
|---|---|
| 火を何度も消し忘れる | 頻度と状況 |
| 薬を忘れる | 服薬状況 |
| 予定を忘れる | 生活への影響 |
| 同じ質問を繰り返す | 以前との違い |
| 料理の手順を間違える | 調理全体の変化 |
| 外出先から戻れない | 安全面への影響 |
「年を取れば忘れるのは当然」と考えて放置することも、「一度消し忘れたから認知症だ」と決めつけることも適切ではありません。以前と比べた変化や生活への影響を見ることが大切です。
火を扱う行動は事故につながる可能性があるため、原因の診断を待つ間も安全対策は先に進めましょう。
新しい機器の操作ミスも確認する
高齢者が火を消し忘れているように見えても、実際には新しいコンロの操作方法が分からず、停止操作を正しくできていない場合があります。製品を買い替えた直後にトラブルが増えたなら、操作方法を確認しましょう。
NITEも、高齢者の製品選びでは操作が単純で使いやすい製品を選び、使用方法に慣れるまで周囲が支援することを案内しています。
- 点火ボタンが分かる
- 消火操作が分かる
- 火力調整ができる
- 表示の意味が分かる
- 警告音を理解できる
- グリルを停止できる
家族が一度説明して終わりにするのではなく、本人に実際に操作してもらい、点火から消火まで一人でできるか確認することが重要です。
多機能な製品を選ぶより、本人が日常的に使う機能を迷わず操作できることを優先しましょう。
一人暮らしなら火を使わない生活も検討しよう
一人暮らしの高齢者が火を消し忘れる場合は、家族が同居している家庭よりも慎重な対策が必要です。同居家族がいれば焦げたにおいや警報音に気づける場合がありますが、一人暮らしでは本人が気づかなければ発見が遅れる可能性があります。
消防庁が示す高齢者の住宅防火対策でも、出火防止だけでなく、早期覚知、初期消火、早期避難、隣近所との協力体制まで段階的な対策が整理されています。
本人の自立を尊重しながらも、火災につながる行動については「本人が希望しているから」という理由だけで継続せず、安全に代替できる方法を考えましょう。
IHへの変更は操作できるか確認する
ガスコンロの炎が心配な場合、IHクッキングヒーターへの変更を考える家庭があります。IHはガスの炎を直接使わないため、着衣へ炎が燃え移るといったガスコンロ特有の危険を減らせる面があります。
一方で、IHにも高温になった調理器具によるやけどや、誤った使い方による事故の可能性があります。また、ガスコンロと操作方法が大きく異なるため、長年ガスを使ってきた高齢者が迷うこともあります。
- 電源操作を理解できる
- 加熱開始が分かる
- 停止操作が分かる
- 火力表示を理解できる
- 対応する鍋を使える
- 警告表示を理解できる
炎が見えないことで、本人が加熱中であることを認識しにくい可能性も考える必要があります。「IHなら絶対安全」と考えて変更するのではなく、本人が実際に操作できることを確認してください。
本人の理解や操作が難しい場合には、コンロの種類を変更するより、電子レンジなど用途が限定された機器だけで食事を準備できる環境のほうが適することもあります。
電子レンジ中心の食事へ切り替える
火の管理が難しくなっても、自分で食事を準備する能力まで失われたとは限りません。冷蔵庫から調理済みの食事を出して電子レンジで温めることができるなら、本人が行える部分を残しながら火を使う場面を減らせます。
ただし、電子レンジにも加熱しすぎや容器の誤使用などの危険があるため、本人が操作できるか確認します。
| 方法 | 確認ポイント |
|---|---|
| 冷凍食品 | 加熱方法を理解できるか |
| 作り置き | 保存期限を管理できるか |
| 配食 | 受け取りができるか |
| 電子レンジ | 操作を理解できるか |
| 電気ケトル | 安全機能を確認する |
| 家族の準備 | 継続できる方法か |
ボタンが多い電子レンジを使いにくい人なら、操作が単純な機種を検討する方法もあります。本人が普段使う操作だけを分かりやすくしておくことも有効です。
重要なのは、ガスコンロを禁止したあとに本人が食事を取れなくなる状態を作らないことです。安全性と食生活の維持を同時に考えましょう。
家族だけで抱えず相談先を利用する
一人暮らしの親が何度も火を消し忘れていると、離れて暮らす家族は「毎日確認に行かなければ」と大きな負担を感じることがあります。しかし、家族だけで24時間見守ることは現実的ではありません。
本人が要支援・要介護認定を受けている場合は担当のケアマネジャーへ相談できます。まだ介護サービスを利用していない場合には、地域包括支援センターへ生活上の心配について相談する方法があります。
- かかりつけ医
- 地域包括支援センター
- ケアマネジャー
- 訪問介護などの介護サービス
- 自治体の高齢者相談窓口
- 地域の見守り体制
消防庁の高齢者住宅防火対策でも、ケアマネジャーなど普段から高齢者宅へ出入りする人との連携や、地域のネットワークを活用した対策が挙げられています。
「火の消し忘れだけで相談してよいのだろうか」と迷う必要はありません。安全に一人暮らしを続けられる環境を考えるための具体的な相談事項として伝えましょう。
火事になった場合に備えて避難方法も決めておこう
火の消し忘れを防ぐ対策と同時に、万一火災が起きたときの行動も考えておく必要があります。高齢者では歩行速度が低下していたり、夜間にすぐ起き上がれなかったりする場合があり、火災を知ってから避難するまでに時間を要する可能性があります。
消防庁は高齢者の住宅防火対策を、出火防止だけではなく、早く知る、燃え広がらせない、初期段階で消火する、危ないと判断したら素早く避難するという複数の段階で整理しています。
火を出さない工夫だけで安心せず、本人が安全に逃げられる環境も確認しましょう。
避難経路へ物を置かない
火災警報器が鳴っても、玄関までの廊下に荷物が積まれていれば素早く避難できません。特に杖や歩行器を使用している高齢者では、狭い通路や床の障害物が移動を妨げる可能性があります。
寝室から玄関までを実際に歩いてもらい、途中に危険な場所がないか確認しましょう。
- 廊下へ荷物を置かない
- 玄関を塞がない
- 床にコードを這わせない
- 夜間照明を確保する
- 杖を取りやすくする
- 避難する出口を確認する
普段は問題なく避けられる小さな荷物でも、煙や警報音で慌てている状況では障害物になる可能性があります。避難経路は日常的に整理しておくことが重要です。
二階で寝ている高齢者が階段を安全に下りられない場合などは、寝室の場所そのものを見直すことも検討しましょう。
無理な初期消火を前提にしない
住宅用消火器などを備えることは火災対策の一つですが、すべての高齢者が安全に初期消火できるとは限りません。重い消火器を扱えない、炎へ近づくことが怖い、操作方法を思い出せないといった可能性があります。
火が大きくなっているのに「自分で消さなければ」と考えて避難が遅れることは避けなければなりません。
| 備え | 確認ポイント |
|---|---|
| 消火器 | 本人が扱えるか |
| 設置場所 | 取り出しやすいか |
| 避難経路 | 確保されているか |
| 玄関 | すぐに出られるか |
| 連絡手段 | 電話を使えるか |
| 近隣支援 | 協力を頼めるか |
火災が拡大している場合には消火へこだわらず、身の安全を優先して避難し、119番通報につなげることが重要です。本人と家族で「危険なら逃げる」という考えを共有しておきましょう。
消火器などを用意する場合は、本人が安全に使用できるか、使用期限や状態に問題がないかも定期的に確認してください。
近所や支援者との連携を考える
一人暮らしの高齢者では、家族が遠方にいるため火災発生時にすぐ駆けつけられないことがあります。そのような場合には、本人の希望やプライバシーにも配慮しながら、地域とのつながりを持っておくことが役立ちます。
消防庁も、高齢者の住宅防火対策として地域の実情に応じた防火防災訓練や、隣近所との協力体制の構築を挙げています。
- 緊急連絡先を整理する
- 家族の連絡先を共有する
- 地域の防災訓練へ参加する
- 支援者へ火の心配を伝える
- 見守り方法を相談する
- 緊急時の対応を決める
ただし、近所の人へ常時監視をお願いするような関係ではなく、緊急時に助けを求められるつながりとして考えることが大切です。
ケアマネジャーや訪問介護などの支援者がいる場合には、火の消し忘れがあった事実を共有しておくと、生活全体の安全対策を検討しやすくなります。
本人の注意だけに頼らず火を使う環境そのものを見直そう
高齢者の火の消し忘れが起きたときは、「今度から気をつけて」と本人へ注意するだけで終わらせず、消し忘れが起きた状況と住宅設備を確認することが重要です。特に火をつけたまま別室へ行く、鍋を何度も焦がす、グリルを停止したことを忘れるといった行動が繰り返されるなら、本人の記憶だけに安全を任せる状態を見直す必要があります。
まずは、火を使っている間はキッチンから離れない、電話や来客へ対応するときはいったん火を消す、複数の火口を同時に使わない、コンロ周辺へ燃えやすい物を置かないといった対策から始めましょう。古いガスコンロを使用している場合には、安全装置の内容を確認し、安全機能を備えた製品への交換を検討する方法もあります。
さらに、住宅用火災警報器が正常に作動するか確認することも欠かせません。消防庁は住宅用火災警報器について定期的な作動確認を案内しており、設置から10年以上経過している場合には本体交換が望ましいとしています。高齢者本人が高所で点検すると転倒する危険があるため、家族など安全に作業できる人が確認しましょう。
何度も消し忘れが続く場合には、ガスコンロを使い続けることを前提にしないことも大切です。IH、電子レンジ、電気調理器、調理済み食品、配食などを組み合わせれば、火を直接扱う場面を減らしながら自分で食事を準備できる可能性があります。ただし、電気製品にも事故の可能性はあるため、本人が理解して安全に操作できる機器を選んでください。
火の消し忘れだけでなく、服薬や予定を忘れる、料理の手順が分からなくなるなど日常生活全体にも変化が見られる場合は、家族だけで対応を抱え込まず、かかりつけ医や地域包括支援センター、ケアマネジャーなどへ相談する方法があります。本人ができることをできるだけ残しながら、重大な事故につながる部分には安全装置や周囲の支援を取り入れ、「忘れても火事になりにくい生活環境」へ少しずつ変えていきましょう。


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