高齢の親が「床に座るのがつらい」「一度座ると立ち上がれない」と話すようになると、家族としては筋力が落ちたのではないか、このまま歩けなくなるのではないかと心配になることがあります。
特に畳の部屋で食事をする習慣がある家庭や、こたつを長年使ってきた家庭では、床に座れなくなることが日常生活へ大きく影響します。
しかし、高齢者が床に座れない場合に、以前と同じ床座生活を無理に続ける必要はありません。
床まで腰を下ろす動作と床から立ち上がる動作は、一般的な椅子からの立ち座りより身体を大きく動かす必要があり、脚力の低下や膝・股関節の動かしにくさがある人には負担になることがあります。
特に「座ることはできるけれど床から立てない」という高齢者では、低い座椅子を購入するだけでは問題が解決しない場合があります。
大切なのは床へ座れるようにすることだけを目標にせず、椅子、ダイニングテーブル、ベッドなどを取り入れて、床まで身体を下ろさなくても生活できる環境へ変えることです。
また、立ち上がる際に家具へ強くつかまる、何度も勢いをつける、家族に腕を引っ張ってもらうといった状態になっている場合には、転倒や介助する家族への負担にも注意が必要です。
急に床へ座れなくなった場合や、強い痛み、腫れ、しびれ、転倒後の症状などがある場合には、年齢による筋力低下と自己判断せず医療機関への相談も検討してください。
ここでは、高齢者が床に座れないときの具体的な対策をはじめ、座椅子より通常の椅子が向いているケース、椅子の高さや肘掛けの選び方、こたつや畳中心の生活を変える方法、床から立てなくなったときの対応まで詳しく整理します。
高齢者が床に座れないときの対策
高齢者が床に座れない場合は、無理に床座を続けるよりも、椅子へ座る生活に切り替えることを最初に検討しましょう。
床へ座るためには身体を低い位置まで下げる必要があり、さらに立ち上がるときには低い位置から身体を持ち上げなければなりません。
厚生労働省の要介護認定に関する資料でも、椅子やベッドなどからの立ち上がりについて、何にもつかまらずできる場合、何かにつかまればできる場合、自分ではできない場合を分けて評価しています。
床座が難しくなったら、本人の能力に生活を無理に合わせるのではなく、生活環境の高さを本人に合わせるという考え方が重要です。
床座から椅子生活へ変える
床に座れない高齢者への対策として取り入れやすいのが、普段過ごす場所を床から椅子へ変更することです。
畳に直接座って食事をしているならテーブルと椅子を使い、テレビを見るときも座布団や低い座椅子ではなく、適切な高さの椅子やソファを利用することで、床まで身体を下ろす動作を減らせます。
「昔から畳で生活しているから」と床座を続けることにこだわると、本人が座ることを避けたり、一度座ったあと立てなくなることを恐れて行動範囲が狭くなったりする場合があります。
生活様式を変えることに抵抗がある高齢者なら、すべての部屋を一度に変更する必要はありません。
- 食事を椅子に変える
- テレビを見る場所に椅子を置く
- 座布団を使わない
- 低い座椅子を避ける
- ベッドを休憩にも使う
- 床へ座る回数を減らす
まず一日の中で最も長く過ごしている場所を確認し、その場所だけ椅子生活へ変えてみると本人も慣れやすくなります。
「床に座れなくなったから不便な生活になる」と考えるのではなく、本人が楽に立ち座りできる高さへ生活環境を変更することがポイントです。
低い座椅子だけで解決しようとしない
床に座るのがつらくなった高齢者に対して、家族が最初に思いつきやすいのが座椅子ですが、一般的な低い座椅子では床からの立ち上がり問題が残ります。
背もたれがあるため床へ直接座るより姿勢を保ちやすくても、座面が床に近ければ、立ち上がる際には身体を低い位置から持ち上げなければなりません。
特に膝を深く曲げにくい人や、太ももの筋力が低下している人では、座椅子から立つためにテーブルや家具へ強くつかまり、家具が動いたり本人がバランスを崩したりする可能性があります。
高座椅子のように脚が付いていて座面が高い製品なら立ち座りの負担を軽減できる場合がありますが、名称だけで判断せず、本人が実際に座ったときの高さを確認することが重要です。
| 座る場所 | 特徴 |
|---|---|
| 床 | 立ち座りの高低差が大きい |
| 座布団 | 座面がほぼ床と同じ |
| 低い座椅子 | 背もたれはあるが座面が低い |
| 高座椅子 | 座面の高さを確保しやすい |
| ダイニングチェア | 食事を椅子化しやすい |
| 肘掛け付き椅子 | 立ち上がり時に腕を使いやすい |
座椅子を選ぶ場合も、「座っているときに楽か」だけでなく「そこから安全に立てるか」を必ず確認してください。
本人が一人で立てない高さの座椅子は、日常生活で毎回介助が必要になる可能性があります。
肘掛け付きの椅子を使う
高齢者が椅子から立ち上がるときに支えを必要とするなら、安定した肘掛けが付いた椅子を検討しましょう。
肘掛けへ手を置いて身体を支えられると、脚だけに頼らず上半身も使いながら立ち上がれる場合があります。
厚生労働省の介護現場における資料でも、自力で立ち上がれる人の支援では、安定したアームレスト付きの椅子を使用する方法が示されています。
ただし、肘掛けが付いていればどの椅子でもよいわけではなく、体重をかけたときに椅子が動いたり、後方へ倒れたりしない安定性が重要です。
- 左右に肘掛けがある
- 体重をかけても安定する
- 座面が低すぎない
- 足裏が床につく
- 椅子が滑りにくい
- 本人が深く座れる
キャスター付きの椅子や軽量で動きやすい椅子へつかまって立とうとすると、椅子自体が移動して転倒につながる可能性があります。
高齢者用の椅子では見た目やクッション性だけでなく、立ち上がる際の支えとして安全に使える構造かを確認しましょう。
本人に合う座面の高さを探す
床に座れない高齢者のために椅子を選ぶときは、座面が高いほどよいと単純に考えないことが大切です。
低すぎる椅子では膝や股関節を深く曲げる必要があり、立ち上がりに大きな力が必要になりますが、高すぎる椅子では足裏が床につかず、座っている姿勢が不安定になることがあります。
基本的には、座ったときに足裏を床へ安定して置けて、膝や股関節を極端に深く曲げずに済む高さを探します。
体格、脚の長さ、関節の動かしやすさなどには個人差があるため、「高齢者には座面高○cm」と一律に決めるより、本人が試すことが重要です。
| 状態 | 確認すること |
|---|---|
| 椅子が低い | 立つときに苦しくないか |
| 椅子が高い | 足裏が床につくか |
| 膝が痛い | 深く曲がりすぎないか |
| 身体が傾く | 座面幅や姿勢を確認 |
| 立つとふらつく | 肘掛けや支えを検討 |
| 足が滑る | 床と履物も確認 |
家具店などで試せる場合は、座る動作だけでなく、数回立ち上がってもらうと判断しやすくなります。
本人が何度も勢いをつけなければ立てない、肘掛けへ強く体重をかけても立てないといった場合は、椅子選びだけでなく身体機能について専門職へ相談することも検討してください。
こたつは椅子式へ変更する
冬になると床に座れない問題が大きくなりやすいのが、長年こたつを使っている家庭です。
一般的な床置きのこたつでは座布団や座椅子に座る必要があるため、本人が床まで腰を下ろせても、食事やテレビ視聴を終えたあとに立ち上がれなくなることがあります。
この場合は、ダイニングこたつやハイタイプこたつなど、椅子へ座って使用できるタイプへ変更する方法があります。
椅子生活へ変えてもこたつの暖かさを残せるため、「昔からの生活を全部変えたくない」という高齢者にも受け入れられる場合があります。
- ハイタイプこたつを検討する
- 肘掛け付き椅子を合わせる
- 足元のコードを整理する
- 布団を歩行動線へ出さない
- 椅子が滑らないようにする
- 立ち座りできる高さを確認する
こたつ布団や電源コードが椅子の周辺へ広がると、高齢者が立ち上がった直後につまずく原因になる可能性があります。
床座を椅子座へ変えるだけでなく、椅子からトイレや台所へ移動するときの通路まで確認して環境を整えましょう。
畳の部屋にも椅子を置く
和室だから床へ座らなければならないわけではなく、畳の部屋でも高座椅子やダイニングチェアなどを利用できます。
仏壇へ手を合わせる、家族と話す、テレビを見るなど、これまで床へ座って行っていたことを椅子からできる配置へ変えると、本人が和室を使い続けやすくなります。
ただし、椅子の脚によって畳がへこんだり、立ち上がる際に椅子が滑ったりすることがあるため、畳と椅子の組み合わせにも注意が必要です。
椅子の下へ敷物を追加する場合も、敷物の端がめくれて歩行時につまずかないようにしてください。
| 和室での困りごと | 対策 |
|---|---|
| 畳へ座れない | 椅子を置く |
| 座布団から立てない | 高座椅子を検討 |
| 仏壇が低い | 椅子から使える配置を検討 |
| 畳で椅子が不安定 | 脚部と安定性を確認 |
| 敷物につまずく | 不要な敷物を減らす |
| 移動しにくい | 通路を確保する |
本人が和室を気に入っているなら、「危ないから和室を使わないで」と制限するより、和室の中で床座をしなくて済む環境を作るほうが生活を変えすぎずに済みます。
生活習慣を尊重しながら、身体の状態に合わせて家具の高さを変えていくことがポイントです。
ベッド中心の生活も検討する
床へ座るだけでなく、布団から起き上がることも大変になっている高齢者なら、寝具を床の布団からベッドへ変更することも検討しましょう。
床に敷いた布団では、起床するたびに床に近い位置から身体を起こし、膝や手を使って立ち上がらなければならないため、床座と同じような問題が起こります。
ベッドなら端へ腰掛ける姿勢を取りやすく、本人に合った高さであれば足を床へつけて立ち上がる動作へ移りやすくなります。
ただし、ベッドも高すぎると足が床へ届きにくく、低すぎると立ち上がりにくくなるため、本人に合わせた高さが重要です。
- ベッド端へ座れる
- 足裏が床につく
- 立ち上がりやすい高さにする
- 通路を確保する
- 夜間照明を用意する
- 必要に応じて手すりを検討する
介護保険では、身体状況など一定の条件に応じて特殊寝台や付属品が福祉用具貸与の対象になる場合があります。
すでに要介護認定を受けている人なら、自己判断で家具を購入する前にケアマネジャーや福祉用具専門相談員へ相談すると、身体状態に合う環境を検討しやすくなります。
床から立つための支えを自己流で置かない
床から立てない高齢者のために、近くへ軽い椅子や小さなテーブルを置き、「これにつかまって立てばよい」と考えることがありますが、不安定な家具を手すり代わりにするのは避けたい方法です。
立ち上がる際には想像以上に大きな力が家具へかかるため、軽い椅子なら前方へ動き、小さなテーブルなら転倒する可能性があります。
本人が床から立つために家具へつかまっている場合は、何につかまっているのか、どの方向へ体重をかけているのかを確認しましょう。
厚生労働省の資料では、介護保険の福祉用具貸与対象に手すりが含まれており、工事を伴わず床へ置いて使用し、転倒予防や移動・移乗動作に役立てる据え置き型の手すりも対象として示されています。
| 支え | 注意点 |
|---|---|
| 軽い椅子 | 動く可能性がある |
| ローテーブル | 体重を支えられるとは限らない |
| 棚 | 転倒する可能性がある |
| 家族の腕 | 引っ張る介助に注意 |
| 据え置き手すり | 適合と設置位置を確認 |
| 固定手すり | 専門家へ相談する |
手すりは「置けば安全」ではなく、本人の立ち上がり方に合わせて位置や高さを決める必要があります。
福祉用具を利用できる状況なら、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員などへ相談して選びましょう。
床に座れない原因を生活動作から確認しよう
高齢者が床に座れなくなった理由は一つとは限りません。
脚力の低下によって身体をゆっくり下ろせない場合もあれば、膝や股関節を深く曲げることが難しくなり、床座の姿勢そのものを取りにくい場合もあります。
また、実際には「座れない」のではなく、「座ったら自力で立てないから怖くて座らない」というケースもあります。
本人がどの動作で困っているのかを分けて確認すると、必要な家具や支援を考えやすくなります。
座る動作と立つ動作を分けて考える
「床に座れない」という言葉だけでは、身体を床まで下ろせないのか、床に座った姿勢を保てないのか、床から立ち上がれないのかが分かりません。
本人の動きを実際に確認すると、座るときには問題がなくても、立つときだけ家具へつかまっていることがあります。
反対に、椅子から立つことはできても、膝を深く曲げる動作がつらいため床へ腰を下ろせない場合もあります。
- 床まで身体を下ろせない
- 膝を深く曲げられない
- 床で姿勢を保ちにくい
- 床から立ち上がれない
- 立った直後にふらつく
- 転倒が怖くて座らない
どこで困っているかによって、椅子へ変えるだけで解決する場合もあれば、手すりや福祉用具、医療・リハビリテーションの専門職への相談が必要になる場合もあります。
「年を取ったから床に座れない」と一括りにせず、具体的な動作を見ることが対策の第一歩です。
膝や股関節の動かしにくさを確認する
床座では、椅子に座るときより膝や股関節を大きく曲げる姿勢になることがあります。
正座、あぐら、横座りなど座り方によって関節の角度は異なりますが、膝や股関節に痛みや動かしにくさがある人にとって床座が負担になることがあります。
本人が「座れない」と言っているときに、家族が無理に膝を曲げたり、「運動になるから」と床座を続けさせたりすることは避けましょう。
| 本人の訴え | 確認すること |
|---|---|
| 膝が痛い | 深く曲げると痛むか |
| 股関節が痛い | 座る姿勢で悪化するか |
| 足がしびれる | 持続時間などを確認 |
| 左右差がある | 片側だけ症状がないか |
| 急に座れない | 受診も検討 |
| 転倒後から痛い | 医療機関へ相談 |
特に転倒後から痛みが続く場合や、突然立てなくなった場合などは、単なる加齢として済ませないことが大切です。
痛みや身体機能について心配がある場合には、医師や理学療法士などの専門職へ相談し、本人に合った動作や環境を検討しましょう。
筋力だけが原因と決めつけない
高齢者が床から立てないと、「足の筋肉が落ちたからスクワットをすればよい」と考えることがありますが、自己判断で運動だけを始めることには注意が必要です。
立ち上がりには脚の力だけでなく、関節の動かしやすさ、バランス、身体を前方へ移動させる動作、痛みの有無など複数の要素が関係します。
運動が適している人もいますが、痛みの原因や身体状態によって適した内容は異なります。
- 脚の筋力
- 膝の動き
- 股関節の動き
- 身体のバランス
- 痛みの有無
- 立ち上がり方
特に持病がある人や転倒歴がある人、最近急に動作が難しくなった人は、家族が動画などを見て自己流の運動をさせるより、必要に応じて医療・介護の専門職へ相談してください。
生活環境を先に安全に整えたうえで、本人の状態に合った運動やリハビリテーションを検討するほうが現実的です。
高齢者が立ち上がりやすい椅子を選ぼう
床座から椅子生活へ変えるときには、家にある適当な椅子を置けばよいとは限りません。
高齢者が毎日使う椅子では、座面の高さ、肘掛け、安定性、座面の硬さなどが立ち座りのしやすさへ影響します。
身体に合わない椅子を選ぶと、床よりは高くなっても、立ち上がるたびに苦労する可能性があります。
本人が実際に座り、立つところまで確認して選ぶことが大切です。
低すぎる椅子を避ける
柔らかいソファや低い椅子はくつろぎやすく見えますが、高齢者にとっては立ち上がりにくいことがあります。
座面が低いほど身体を大きく持ち上げる必要があり、深く沈み込むクッションではさらに立ち上がり動作が難しくなります。
本人が立つときに何度も前後へ身体を揺らしたり、テーブルを引っ張ったりしているなら、座面の高さが合っていない可能性も考えましょう。
- 座面が低すぎない
- 深く沈み込まない
- 足裏が床につく
- 前へ身体を動かしやすい
- 肘掛けを使える
- 椅子自体が安定している
座面へ厚いクッションを置いて高さを上げる方法もありますが、クッションがずれると座る際や立つ際に不安定になることがあります。
単純にクッションを重ねるより、本人に合った高さの安定した椅子を選ぶほうが安全に使いやすいでしょう。
肘掛けの形を確認する
肘掛けは、座っているときに腕を休ませるだけでなく、立ち上がる際の支えとして使われることがあります。
そのため、高齢者用の椅子では手のひらを置きやすく、身体を前へ移動させながら力を加えやすい形状か確認します。
短すぎる肘掛けや柔らかすぎる肘掛けでは、本人が期待した位置で身体を支えられない場合があります。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 長さ | 手を置きやすい |
| 高さ | 肩が上がりすぎない |
| 硬さ | 体重を支えやすい |
| 左右 | 両側を使える |
| 安定性 | 押しても椅子が動かない |
| 握りやすさ | 手を滑らせにくい |
片側の腕に痛みや麻痺などがある場合には、一般的な選び方が合わないこともあります。
身体状態に特徴がある人は、理学療法士や作業療法士、福祉用具専門相談員などへ相談して選ぶとよいでしょう。
キャスター付き椅子は慎重に使う
ダイニングや机で使う椅子の中にはキャスター付きのものがありますが、立ち上がりの際に肘掛けへ力をかける高齢者には注意が必要です。
身体を前へ動かそうとした瞬間に椅子が後方へ移動すると、本人がバランスを崩す可能性があります。
回転式の椅子も、立つときに座面の向きが変わることで不安定になる人がいるため、本人の身体状態を見て選びましょう。
- キャスターが動かないか
- 回転座面が不安定でないか
- 床で滑らないか
- 立つ方向を確保できるか
- 肘掛けへ力をかけられるか
- 本人が一人で操作できるか
便利な機能が多い椅子でも、本人が使いこなせなければ安全性が高いとはいえません。
高齢者の椅子では、動かしやすさより「立ち上がる瞬間に動かないこと」を優先したほうがよい場合があります。
床中心の暮らしを無理なく椅子中心へ変えよう
長年、畳、座布団、こたつ、布団で生活してきた高齢者にとって、急にすべてを洋式の生活へ変えることは心理的な負担になる場合があります。
家族が安全のために家具を入れ替えても、本人が「使いにくい」と感じれば、結局以前の座布団へ戻ってしまうこともあります。
そこで、本人が特に困っている動作から順番に変え、慣れた生活をできるだけ残すことが大切です。
食事、休憩、睡眠など、一日の動作を分けて考えてみましょう。
食事から椅子生活へ変える
床座生活を変える場合、最初に見直しやすいのが食事場所です。
一日三回、座卓の前へ座っている人なら、そのたびに床への立ち座りが発生するため、食事を椅子へ変更するだけでも床座の回数を大きく減らせます。
ダイニングテーブルを用意する場合は、本人が椅子を後ろへ大きく引かなくても出入りできる配置にすると使いやすくなります。
- 食事用の椅子を決める
- 肘掛け付きを検討する
- 椅子を引くスペースを作る
- 通路を広くする
- 足元の敷物を見直す
- 配膳しやすい配置にする
椅子生活へ変更するときは、本人だけ別の場所で食事をする形にすると孤立感につながる場合があります。
可能であれば家族も同じテーブルを使うなど、本人だけが「介護用の席」へ移されたと感じにくい環境を考えましょう。
くつろぐ場所も高さを上げる
食事だけ椅子へ変更しても、食後にテレビを見るため床へ座ってしまえば、再び立ち上がりの問題が起こります。
本人が一日の中でどこに座っている時間が長いのかを確認し、その場所にも適切な高さの椅子を用意しましょう。
ソファを選ぶ場合は、柔らかく沈み込みすぎないことや、立つときにつかめる肘掛けがあることを確認します。
| 過ごす場面 | 見直し例 |
|---|---|
| 食事 | ダイニングチェア |
| テレビ | 肘掛け付き椅子 |
| 読書 | 高座椅子 |
| 昼寝 | ベッドを活用 |
| 来客時 | 本人用の椅子を確保 |
| 和室 | 畳でも椅子を使用 |
家の中に一脚だけ使いやすい椅子があっても、本人が部屋を移動するたびに床へ座る状況では十分とはいえません。
よく過ごす場所ごとに安全に座れる場所を用意すると、床へ座らず生活しやすくなります。
布団からベッドへの変更も考える
床座が難しくなっている高齢者が布団で寝ている場合は、朝晩に床から起き上がる動作も負担になっていないか確認しましょう。
「布団ではまだ寝られる」と本人が話していても、起床時に家具へつかまっている、四つ這いで移動してから立っている、家族が毎朝引き上げている場合には環境を見直す余地があります。
ベッドを導入すると床から身体を持ち上げる動作を減らせますが、本人の身体状態に合う高さや手すりの位置を考えることが重要です。
- 起床動作を確認する
- ベッドの高さを合わせる
- 足元の通路を確保する
- 夜間照明を用意する
- 必要なら手すりを検討する
- 福祉用具の相談も利用する
介護保険の福祉用具貸与では、要介護度や身体状況など一定の条件のもとで特殊寝台や手すりなどが対象になる場合があります。
すでに介護サービスを利用しているなら、家具を購入する前にケアマネジャーへ相談すると、利用できる制度も含めて検討しやすくなります。
床から立てなくなったときは無理に引き上げないようにしよう
高齢者が床に座ったあと「立てない」と言うと、家族は両腕を持って力いっぱい引き上げたくなるかもしれません。
しかし、介助者が無理な姿勢で抱え上げる方法は、本人だけでなく介助する家族の腰や身体にも負担をかけます。
厚生労働省の介護作業に関する資料でも、転倒した利用者を一人で起こそうとして一緒に転倒する事例があることや、抱え上げる介助を避けて福祉用具を活用する考え方が示されています。
本人が床から立てなくなることが繰り返されるなら、その都度家族が持ち上げるのではなく、床へ座らなくて済む生活環境へ変えることを優先しましょう。
転倒後ならけがを先に確認する
自分で床へ座ったのではなく、転倒して床にいる場合は、すぐに立たせることだけを優先しないようにします。
厚生労働省の資料でも、転倒した人をすぐに起こすのではなく、まず打撲や骨折などが生じていないか確認することが示されています。
強い痛みがある、身体を動かせない、頭を打った可能性があるなど、けがが疑われる場合には無理に立たせず、状態に応じて医療機関や救急へ相談してください。
- 強い痛みがないか
- 頭を打っていないか
- 出血していないか
- 手足を動かせるか
- 意識状態に変化がないか
- 無理に起こさない
本人が「大丈夫」と話していても、転倒後に痛みが強くなったり、歩き方が変わったりする場合があります。
転倒をきっかけに床から立てなくなった場合は、普段の筋力低下と同じものとして扱わないことが大切です。
家族一人で抱え上げない
床にいる高齢者を家族が腕だけで引っ張り上げようとすると、本人の肩や腕に負担がかかるだけでなく、介助者が腰を痛める可能性があります。
さらに、本人が途中でバランスを崩した場合、支えている家族も一緒に転倒することがあります。
自力での立ち上がりが難しい状態が繰り返されるなら、適切な介助方法や福祉用具について専門職へ相談しましょう。
| 状況 | 対応の考え方 |
|---|---|
| 自分で立てる | 本人のペースを優先 |
| 支えが必要 | 適切な手すりを検討 |
| 毎回介助が必要 | 専門職へ相談 |
| 転倒している | けがを先に確認 |
| 強い痛みがある | 無理に動かさない |
| 介助者一人では難しい | 無理に抱え上げない |
「家族だから自分が持ち上げなければ」と考えず、介護サービスを利用している場合にはケアマネジャーなどへ状況を伝えてください。
立ち上がり方法だけでなく、そもそも床へ座る必要がない家具配置へ変更することも重要な対策です。
福祉用具の利用を相談する
椅子からの立ち上がりにも支えが必要になっている場合は、手すりなどの福祉用具を利用できないか相談する方法があります。
厚生労働省によると、介護保険の福祉用具貸与には手すり、歩行器、歩行補助つえなどが含まれ、住宅改修では手すりの取り付けや段差解消なども対象とされています。
工事を伴わず床へ置いて使用する手すりも福祉用具貸与の対象となるものがあるため、壁へ穴を開けられない住宅でも選択肢が見つかる場合があります。
- 据え置き型手すり
- 固定式手すり
- 歩行器
- 特殊寝台
- 住宅改修
- 身体状況に合う福祉用具
ただし、介護保険で利用できる用具や条件は、要介護度や身体状態、用具の種類などによって異なります。
要介護認定を受けている場合は担当ケアマネジャーや福祉用具貸与事業者へ相談し、本人の立ち上がり方を確認してもらったうえで選びましょう。
床に座ることへこだわらず楽に立てる生活へ変えよう
高齢者が床に座れなくなったときは、「また床に座れるようにしなければ」と考えるより、床へ座らなくても今までの生活を続けられる環境を作ることが大切です。
畳で食事をしていたならダイニングテーブルと椅子へ変更し、こたつが好きならハイタイプこたつを検討し、テレビを見るときは低い座椅子ではなく肘掛け付きの高座椅子などを利用することで、本人の好みを残しながら床座の回数を減らせます。
椅子を選ぶ際は、単純に座面が高いものを選ぶのではなく、足裏が床につくこと、立ち上がる際に膝を極端に深く曲げなくて済むこと、肘掛けへ力をかけても安定していることなどを確認しましょう。
柔らかく沈み込むソファや低すぎる椅子、立つと動いてしまうキャスター付き椅子などは、本人の身体状態によって立ち上がりにくくなる場合があります。
また、床から立つために軽いテーブルや椅子へつかまる方法は、家具が動いたり倒れたりする可能性があります。
立ち上がりに支えが必要なら、自己流で家具を手すり代わりにするのではなく、据え置き型手すりなど本人の身体状況に合った福祉用具を検討してください。
床から立てなくなった高齢者を家族が毎回力いっぱい引き上げる方法も、本人と介助者双方への負担になります。
介助が日常的に必要になっているなら、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員、理学療法士などへ相談し、立ち上がり方法と生活環境の両方を見直すことが重要です。
特に、急に床へ座れなくなった、転倒後から立ち上がれない、強い膝や股関節の痛みがあるといった場合には、単なる加齢や筋力低下と自己判断せず医療機関への相談を検討しましょう。
高齢者の暮らしを楽にするために必要なのは、昔と同じ動作を無理に続けてもらうことではありません。
床に座れないという身体の変化に合わせて、食事、休憩、睡眠を少しずつ椅子やベッド中心へ変更し、本人が自分の力で座れて、自分の力で立ちやすい環境を作ることが、毎日の負担と転倒への不安を減らすことにつながります。


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